募金券でつくれる未来

社員との対談

第22回 全国女性シェルターネット×良品計画 3人に1人が経験!? DVは他人事じゃない。 第22回 全国女性シェルターネット×良品計画 3人に1人が経験!? DVは他人事じゃない。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第22回は、暴力に悩む女性と子どものために活動する全国女性シェルターネットさんにお話をおききしました。

DVは、ふつうの男女間で起きている

内閣府の調査結果では、「女性の約3人に1人は配偶者から被害を受けたことがあり、約10人に1人は何度も受けている」と報告されています。20人に1人は命の危険を感じたことがあると答えているにも関わらず、被害を受けた女性全体のうち、約4割はどこにも相談していません。遠い国でも、特殊なコミュニティでもなく、日本で、ふつうの男女の間でDVは起こっています。11月25日は国連の定める「女性に対する暴力撤廃の国際デー」。DVを知ることで、被害者にも加害者にも、傍観者にもならない、決意の第一歩を。

プロフィール

全国女性シェルターネット

全国女性シェルターネットは、国内で活動する民間DVシェルターのうち、60数ヶ所がメンバーとなっているネットワーク団体。当事者からの相談受付のほか、DVに関する啓発、女性の暴力根絶にかかわるさまざまな法システムの運用改善に取り組んでいます。

全国女性シェルターネット

  • 近藤 恵子さん

    全国女性シェルターネット
    共同代表

    1998年、全国女性シェルターネット設立にかかわり、2002年から共同代表をつとめる。毎年一回、全国シェルターシンポジウムを開催し、2001年のDV防止法制定および二度の改正作業に貢献。女性に対する暴力の根絶を活動の柱として、直接支援から政策提言まで幅広い活動をネットワークしている。

  • 鈴木 孝枝

    良品計画
    生活雑貨部 海外商品担当

    1994年、良品計画へ入社。店長経験後 販売部にてエリアマネージャー勤務を経て、2011年2月より現職。海外各国への生活雑貨の商品供給、中国グローバルソーシングの推進が主な業務。海外出店が拡大する中、規制品の申請対応、仕組みづくりを遂行中。

  • 藤田 初芽

    良品計画
    研究技術部 研究技術課

    1998年、良品計画へ入社。 店舗スタッフや店長を経験後、2001年より本部勤務。ISO事務局や品質管理担当業務を経て、品質保証部の立上げに参画。2010年9月より現職。現在は、大学や研究機関の研究者と共に商品の開発や改良を科学的な立場からサポートする業務を担当。

「3人に1人」の衝撃

全国女性シェルターネットは、暴力の根絶をめざして活動しています

鈴木:まず、「女性の約3人に1人は配偶者から被害を受けたことがある」という報告に衝撃を受けました。

近藤さん:皆さんそうおっしゃるのですが、DVは身近で起きています。300世帯のマンションの100世帯で起きていると想像すると凄まじいものがありますよね。

藤田:DVと一括りにしていますが、殴る蹴るといった身体的な暴力に限らないと聞きました。

近藤さん:DVというのは、さまざまな形で暴力的な支配をすることです。大声で罵ったり、脅すといった精神的な虐待や、経済的な自由を奪ったり、行動を制限して外の社会との接触を断たせたりということもあります。また、性的な暴力も深刻で、シェルターに逃れてくる女性は多産の傾向も見られます。

鈴木:ちょっと言葉を失います・・・。

藤田:被害を受けた女性のうち4割の方がどこにも相談をしていないという、この数字だけみても、この問題の深刻さを表しているように思います。

近藤さん:そうなんです。親しい人にほど言えないんですよね。多くの場合被害者は、病院や、いよいよどうすることもできないと思ったときに駆け込む交番にしても、できるだけ家から遠い所を選びたがります。

藤田:起きていることの性質上、親しい人にはかえって言えないというのは、少しだけわかる気がします。

近藤さん:DV被害を受けてきた女性を対象にしたアンケートで、どれだけの期間耐えてきたかと聞くと、1番多い回答が「16年以上」だったんです。周囲に相談できず、ひたすら耐えるにしては、あまりに長い年数です。

鈴木:そんなに長い間、なんらかの暴力にさらされているなんて、精神的に通常の判断ができなくなってしまうのではないでしょうか。

誰でも被害者になりうるのが現実

近藤さん:そうですね。こうしたお話になると、「どうして逃げてこないのだろう」「なぜそこまで我慢していたのか」と、たいていの人が疑問に思うんです。いくら腕力に劣るとはいえ、大人なわけですし、24時間柱に縛りつけられていたわけでもないだろうにと。ところが、恐怖に支配されていると、できないんですよ。DVの傾向として、最初の暴力が非常に苛烈なんです。たとえその後の暴力がそこまででなくても、強烈な記憶が刻み込まれてしまうと、恐怖に支配されて動けなくなってしまうんです。

鈴木:どんな女性でも・・・。

近藤さん:はい、気が弱いからとか、社会性に欠けるのではないかとか、そんなことはありません。被害者女性の中には、世間でいうバリバリのキャリアウーマンという方もいますし、社会の中で普通に活躍してきた人が非常に多く含まれています。

藤田:加害者側の男性はどうなのでしょうか。暴力を振るったりする男性をイメージすると、ちょっと普通じゃないというか・・・でも、「3人に1人」のケースなのであれば、普通の男性・・・つまり、少なくとも普通に見える男性が実は加害者としてたくさん存在しているかもしれないということになりますよね?

近藤さん:この活動を始めた当初は、私たちも同じように思ったんです。アルコール依存症や暴力団の構成員とか、特定の特徴があることを想像していました。しかしそれは違っていて、むしろ社会的な信用がある人が多いんです。加害者の属性を調査すると、1番多いのが自営業、2番目に公務員、次に会社員です。周囲の人が口を揃えて「人格者だ」と評価している人だったり、地位も名誉もある、立派な肩書の人も大勢見てきました。

鈴木:だんだん暗い気持ちになってきました・・・。