募金券でつくれる未来

社員との対談

第17回 ケア・インターナショナル ジャパン×良品計画 途上国の女性の力は、
貧困解消のためのカギになる。
第17回 ケア・インターナショナル ジャパン×良品計画 途上国の女性の力は、 貧困解消のためのカギになる。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第17回は、途上国貧困の解消のため、特に女性の自立支援に力を入れて活動を展開するケア・インターナショナル ジャパンさんにお話をおききしました。

世界の貧困と女性

1日1ドル以下の生活を余儀なくされ、極度の貧困の中に暮らす人々は、世界に10億人以上といわれ、その75%を女性が占めています。また、読み書きのできない7億8千万人の3分の2は女性です。さらに、毎年、約50万人の女性が、出産や妊娠合併症が原因で命を落としています。多くの女性が、教育、医療、情報などへのアクセスなどについて、男性と同等の機会を与えられていないことで、持てる能力を発揮できずにいます。

プロフィール

ケア・インターナショナル ジャパン

ケア・インターナショナル ジャパンは、世界70カ国以上の途上国や紛争地域に現地事務所を持つ世界有数の国際NGO、CAREの日本事務局です。CAREのミッションである貧困の根源の解決に向け、途上国で災害時の人道支援を行うとともに、「HIV⁄エイズ」「女性や子ども」に焦点をあてた活動を通して、最も困難な状況にある人々の自立を支援しています。日本においては、東日本大震災の被災地で、中長期の支援活動を続けています。

ケア・インターナショナル ジャパン

  • 高木 美代子さん

    ケア・インターナショナル ジャパン
    マーケティング部長

    企業や業界団体等の社会貢献プログラム等に対するコンサルティングや企画運営を経て、2005年よりCAREに入局。法人専門のファンドレーザーとして、寄付をはじめ、プロボノやBOPビジネス等、戦略的な企業パートナーシップを推進。

  • 増田 明子

    良品計画
    生活雑貨部 海外商品担当

    2004年MUJIイタリア1号店(ミラノ)の開店プロジェクトへの参画がきっかけで、2005年良品計画に入社。帰国後、Found MUJI、ハウスウエアMD(マーチャンダイジング)開発を経て、2009年より現職。クリスマスプロモーションでのギフト商品を開発する一環で、2011年よりJICA(キルギス、ケニア)と協業した商品開発プロジェクトを担当。

  • 西薗 宏美

    良品計画
    海外事業部 事業推進担当

    2004年9月、良品計画に入社。広島アルパークに配属後、天神ソラリアでの勤務を経て、下北沢の店長に着任。2008年海外事業部 アジア・業務担当へ配属後、2012年2月より現職。主に、海外の新店準備や新規進出国での出店業務のサポートを担当。

義務ばかりで権利がないという現実

日々の生活に必要な水を手に入れるため歩く距離は、毎日約8,000歩とも言われています。
そして多くの場合、それは女性や子どもの仕事とされています。

増田:ケアさんは、国際NGOとして、長く女性の支援に力を入れていらしたんですね。

高木さん:はい。ケアはもともと、第二次世界大戦後のヨーロッパを支援するため、アメリカで複数の団体の協力により設立された組織です。1948年からは日本も支援対象国になり、戦後、物資が不足していた時代に食料や衣類など、多くの支援が行われました。その後世界中に活動を広げてきましたが、社会的により弱く、より困難な状況にある、子どもと、それに女性への支援を、ずっと中心に据えてきました。

西薗:長く活動されていますが、女性の置かれている状況の厳しさは変わっていないのでしょうか。

高木さん:もちろん、国や地域によっては大きく改善されました。途上国でも、まったく良くなっていないわけではありません。けれど、1日1ドル未満で生活する10億人のうち、今も75%が女性です。女の子は学校よりも家事労働を優先させられるので、読み書きもできないまま大人になる。母親になっても、自分に教育がないので、子どもを学校に通わせる必要性が感じられない、という貧困の悪循環が続いています。

増田:女性の社会的地位の低さが、大きなハンデとなっているのですね。

高木さん:多くの社会で見られることとして、女性には義務ばかりで権利がないんですね。世界の食糧の半分は女性の労働により生産されています。にもかかわらず、女性たちは農地のたった1%しか所有していないんです。家計を管理するのは男性で、女性は意見も言えないということも珍しくありません。

西薗:そうなんですか・・・。 現在の日本とはずいぶん異なりますね。

高木さん:日本と異なると言えば、母親が妊娠した場合、日本ではおめでたいことですが、医療や衛生環境の整わない途上国では一大リスクです。現在も60秒に1人の女性が妊娠か出産に伴う問題で命を落としています。妊娠中に何かあっても、経済的な理由や、立場の低さから、医療を受けさせてもらえないことも多いですし、多産で次々と妊娠を繰り返すなど、女性自らが選択する権利を持っていないことで、命の危険にすらさらされています。

「女性のための女性支援」を超えて

増田:ケアさんでは、そうした女性の状況を改善することを、女性だけという視点ではなく、より広く家族やコミュニティのために必要だと訴えているのですね。

高木さん:そうです。第一、貧困層の大部分は女性が占めているんです。彼女たちが教育を受け、経済的に自立したらどうなるでしょう。教育や知識があれば、家庭においては、ほかの家族の栄養、健康状態にもっと気を配ることができますし、計画的に家計をやり繰りできるようになります。それは子どもを守ることにつながります。また、経済力が高まれば、地域を活気づかせ、うるおすことにつながります。

西薗:そうですよね。確かに、大きな可能性ですよね。

増田:私も仕事でJICA(国際協力機構)さんと協働する機会があり、そのプロジェクトを通じて途上国の事情を見聞きするのですが、貧困家庭に収入があったとき、女性だと、子どもを学校に行かせるためとか、家計の足しになるように家畜を飼うとか、家庭のためにお金を使う傾向がより高いようです。

高木さん:そうした傾向は確かにありますね。

西薗:女性が家庭や社会でもっと認められれば、全体がよくなる理由はわかってきましたが、さまざまな物事の決定に女性が関わることを良しとしない文化もあるのではないでしょうか。理解を得るのは一筋縄ではいかない気がします。

高木さん:おっしゃる通りです。その部分の理解の促進をはかるのは、私たちが最も心を砕くことのひとつです。いろいろと間を取り持つ調整役として奔走します。そもそも、貧しい人が地域の決定権を持つ人と接点を持つ機会は通常ありません。ですので、私たちがつなぎ役になる必要があります。特定の女性や、貧困家庭を支援しても、彼らが地域の中で孤立しては本末転倒ですし、大切なのは、地域に入って、地域の人たちといっしょに、課題について話し合う環境をつくることです。

西薗:なるほど。そうですね。