募金券でつくれる未来
社員との対談
第26回 シャンティ国際ボランティア会×良品計画 1冊の絵本が、希望になる、学びになる。
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第26回は、アジアの、教育を受ける機会に恵まれない子どもたちを対象に、絵本を通じた教育支援を行うシャンティ国際ボランティア会さんに、お話しをお聞きしました。
- 絵本を通じて言葉を学び、成長する子どもたち
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世界には、子どもが絵本を読んだり、読み聞かせをしてもらうこともままならない場所が多くあります。紛争や貧困に苦しむ地域で、絵本を手にすることはとても難しいことです。けれど、何度でも別の世界に連れて行ってくれる絵本は、子どもたちにとっての希望になります。小学校に通うことのできない子どもには、読み書き習得のためのテキストにもなります。4月23日は「子ども読書の日」。子どもの読書ばなれが指摘されている日本。1冊の絵本を、何度も夢中で読み返す途上国の子どもたちは、読書本来の楽しさを、思い出させてくれるかもしれません。
プロフィール
シャンティ国際ボランティア会
シャンティ国際ボランティア会は、1980年に、カンボジア難民キャンプで、子どもたちに絵本を届けることから活動を始めた日本の国際協力NGOです。アジアの国々で、貧困や紛争、災害などに苦しむ子どもたちに対し、未来への希望につながる教育、文化への支援活動を、絵本を届けることを軸に行っています。
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関 尚士さん
シャンティ国際ボランティア会
事務局長1990年入職。フィリピンにて地域開発、プログラム・デベロプメント&マネージメントを学ぶ。1998年にラオスへ赴任し、基礎教育教材の開発や統合的な地域教育環境の改善活動に携わる。2003年に帰国し、緊急救援室室長に着任し、国内外の災害救援活動に従事する。2008年4月より現職。
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松橋 衆
良品計画
業務改革部VMD課長1998年、入社。丸井吉祥寺店を始め、3店舗での勤務を経て、2000年に現部署へ配属となり、2012年より、現職。主に新規・改装店舗における売場設計及び国内外ともに新店オープン時の売場作りと既存店舗向けの売場展開指示書の作成や運用等を担当。休日は、3人の子供達との山登りを楽しんでいます。
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佐藤 剛
良品計画
生活雑貨部ファブリック担当マネージャー1998年、入社。キャナルシティ博多など複数の店舗で店長を経験後、販売部エリアマネージャーに着任。2008年9月より生活雑貨部のMD(マーチャンダイジング)計画担当課を経て、2010年2月より現職。これまでに13カ国(2012年)もの原料の産地や生産現場に足を運び、それぞれが持つ特長とその背景が伝わるような商品開発を推進中。
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「お菓子より絵本がいい」と言った難民キャンプの少女
佐藤:シャンティ国際ボランティア会(以下シャンティ)さんは、立ち上げ当初から、絵本を届けることを活動の中心に据えて取り組んでいらしたんですね。
関さん:そうですね。読書推進は30年以上前の設立時から変わっていません。といいましても、最初は仏教関係者を中心とした有志による、ボランティアの素人集団だったんです。日本にはまだ民間の国際協力が根づく前の時代でした。気持ちだけはあるけれど、ノウハウはゼロに等しく、何もかも手さぐりで始めた難民キャンプでの活動の中で、絵本の持つ力を知ったのです。
松橋:難民キャンプであれば、もっと別の必要なものもありそうに思えて、正直、「どうして絵本なんだろう」という素朴な疑問を抱いてしまわなくもないですが・・・。
関さん:さまざまなものが足りていないような環境で、なぜ絵本なんだろうと思いますよね。でも、大好きなはずのお菓子より絵本がいいといった少女もいました。私たちが支援を行ってきた地域では、ほとんどの場合、子どもたちは絵本を手にしたことがありません。1冊の絵本に群がって順番待ちし、くり返しむさぼるかのように読むんですよ。指で追いながら、もう夢中で。私たちも次第に、教育支援の入り口として非常に適していると考えるようになりました。
佐藤:そうなんですか。その感覚は、日本人の私たちにはなかなか分からなくなっていますね。
関さん:はい。目の当たりにすると、「飢える」のは、食べ物にだけではないんだな、と思います。絵本を通して、違う世界を旅することのできる楽しさや、知らないことを学べる喜び、子どもたちは、そういうものに飢えていたんだと思わされます。
佐藤:確かに日本では、子どものころ、学ぶことって義務というか、大人に言われてしぶしぶ頑張ることだったりしますけど、人間には、もともと知識欲が備わっているはずなんですよね。
松橋:先ほど、難民キャンプだったら、もっと別の必要なものがありそうだと発言しましたが、考えてみれば、生きるために必要なものが揃うことが、人間らしい暮らしになるとは限らないですよね。物質的なことばかりでなく、知識欲もそうですし、何か文化的なものが充たされることも重要なはずですよね。
関さん:まさにそうなんです。難民キャンプは一時しのぎの場所に思われがちですが、実際には、10年、20年とそこで暮らす人も少なくありません。彼らは、襲撃や地雷を逃れたり、最低限の食料や飲み水に困らなくなったり、密告や弾圧を恐れてビクビクしたりという日常から離れられて、一応の安心は手に入れたかもしれません。けれど、人間らしい暮らしには、おっしゃるように、文化的な側面もあります。コミュニティでの信頼関係の構築をはじめ、共有できる何かを楽しんだり、育てていくことも大切です。
松橋:本当に、そうですね。ましてや、難民キャンプは、着の身着のままたどり着いた「外国」ですもんね。子どもたちは本来、自分の属する地域やそこにある学校で、読み書きとか、文化や歴史を学べるはずなのに。
絵本だからできること
佐藤:シャンティさんでは、図書館の建設といった支援も行っていますよね。難民キャンプに限らないと思いますが、図書館ができると、そこに集うようになって、コミュニティが形成されるということもあるのでしょうか。
関さん:はい。図書館は文化の発信基地のような存在になって、そこに子どもたちを引きつけます。私たちはカンボジアの難民キャンプから活動をスタートさせて、現在はラオスやアフガニスタンなどの国でも絵本を通じた支援を行っていますが、どこもそうですね。学校や図書館をつくって、絵本を通じた教育支援を行っているというと、それが最も効率の良い識字率向上のための取り組みなのか?と疑問を持つ人もいると思いますが、板書によるつめこみ型で覚えさせるのとは別のものが育まれる側面があるんです。絵本を読み、ストーリーに凝縮された文化や風土、込められた思いやりの心、といった大切なものに触れることができるからです。
佐藤:絵本を読んだ子ども同士で、ストーリーについて盛り上がったりして、コミュニケーションも生まれますね。
関さん:それもありますね。絵本をノートに書き写して、家で弟や妹に読み聞かせる子に出会ったこともあります。
松橋:うわぁ・・・。うちにも3人の子どもがいるのですが、確かに、思い起こせば、お気に入りの絵本とは、いっしょに寝るほどの執心ぶりでしたね。何冊も欲しがったりはしませんでしたが、お気に入りは何度も何度も読むようせがまれた覚えがあります。子どもなりに、・・・子どもだからこそかもしれませんが、すごく感じるものがあったんでしょうね。
関さん:読み聞かせがまたいいんですよ!肉声で接するということには、知識うんぬんではない価値があります。大人になっても記憶している子が多いですよ。
松橋:そうなんですかね。うちの子も、すごい集中力で食いついてくるので、こちらも高ぶってきちゃって(笑)、感情込めて抑揚つけて読んだりしましたね。自分の子どもにウケが良かったことに味をしめて、幼稚園に読み聞かせに出向いたりもしましたよ。
関さん:素晴らしいじゃないですか!