募金券でつくれる未来

社員との対談

第34回 エイブル・アート・ジャパン×良品計画 アートがとりもつ、こころのバリアフリー。 第34回 エイブル・アート・ジャパン×良品計画 アートがとりもつ、こころのバリアフリー。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第34回は、アートを通して障がい者の活躍を後押しし、その先に、モノの豊かさのみにとらわれない社会の実現をめざすエイブル・アート・ジャパンさんにお話をお聞きしました。

いろんな人が、いろんな可能性を伸ばせる社会って?

障がい者の手がけたアート作品に、思わず魅了された経験がある人もいると思います。欧米では高く評価されることも多い障がい者によるアート。日本では、その芸術的価値に目を向けるよりも、障がい者福祉の一環で行われる活動ととらえられることが多い実情があります。けれど、純粋にアート作品と向き合えば、その感性と表現力に驚くはず。そしてその先に、社会が多様な人たちで構成されていることの豊かさに気づけるかもしれません。12月3日は国連の「国際障害者デー」、以降12月9日までは日本の「障害者週間」です。障がい者アートから、共生について考えてみましょう。

プロフィール

エイブル・アート・ジャパン

エイブル・アート・ジャパンは、「社会の芸術化、芸術の社会化」をキーワードに活動するNPOです。障がいのある人たちの表現活動を後押しし、障がい者のアーティストたちに収入をもたらす機会や仕組みを考案するなどして、社会参画を推進しています。また、すべての人とアートの距離を縮め、アートの力を通じて豊かな社会の実現につなげていくことをめざして、障がい者のための美術鑑賞支援や、ギャラリー等の運営、ワークショップの企画など、さまざまな事業を行っています。

エイブル・アート・ジャパン

  • 柴崎 由美子

    エイブル・アート・ジャパン
    事務局長

    「たんぽぽの家アートセンターHANA」(奈良)のディレクターを経て、障害のある人のアートを社会に発信し仕事につなげる「エイブルアート・カンパニー」本部事務局。障害のある人とともに、社会に対して新しい価値を提案するプログラムや仕組みは何か、絶えず探求し実践していくことがライフワーク。

  • 大栗 麻理子

    良品計画
    宣伝販促室 販促課長

    1998年入社。心斎橋など関西の店舗での勤務後、名古屋の四ツ谷通りで店長を経験。販売部スタッフを経てエリアマネージャーに着任し、7年間で神奈川、北日本、東京西の3エリアを担当。2012年9月より現職。店頭プロモーションの立案、カタログ等の販促ツール制作、新店・改装店の開店販促等を担当。

  • 風間 公太

    良品計画
    WEB事業部 コミュニティ担当

    音楽学校や劇団での広報・宣伝業務を経て、2007年に入社。WEB事業部でネットストアのディレクターを担当し、2011年から現職。店舗とWEBの連動型キャンペーン、Twitter・Facebook・LINEなどのソーシャルメディア、MUJI passportアプリなどの企画・運用に携わる。3児の父。

障がい者アートの世界に、はっとする

ミュージアムショップ主催の
ワークショップで描く作家

大栗:障がいを持つ人の才能について見聞きしたことはありましたが、そちらのサイトで作品を見て、質の高さにびっくりしました。エイブル・アート・ジャパンさんは、こうしたアート作品の著作権を管理するなどして、適正な収入をもたらすサポートを行っていらっしゃるのですね。

柴崎さん:そうなんです。おっしゃるように、非常に素晴らしい作品がたくさんあるので、企業さんとコラボして、Tシャツやバッグ、靴下など、さまざまな商品に使ってもらうなどしています。作家側に収入が入るように管理をするのは、私たちの重要な活動のひとつです。

風間:発想が自由で、見ているほうも元気にさせるようなパワーを感じますね。障がいのある人が手がけたことは、お聞きしなければわからないです。

柴崎さん:はい。日本の障がい者アートは、多くの場合、福祉の観点で「彼らの自立のために買ってください」のような呼びかけで販売されてきました。けれど、私たちが関わる商品の中には、障がい者の手によるものだということに触れずに販売しているものもあります。もともと作品そのものの魅力で勝負できるはずなんです。

風間:本当に。よく見ると、盛り込まれているモチーフなんかがユニークで、驚きもあります。

柴崎さん:プロのデザイナーさんにもない発想だったりして、すごい感性ですよね。ねらってだとできない(笑)。

大栗:ねらっては無理ですよね。見るほどに、こちらも引き込まれてしまって、いろんな想像をかきたてられます。まさにアートの力。

障がい者に厳しい社会

柴崎さん:そう、アートの力は大きいんです。私たちがめざすのは、障がい者アートの普及というより、もっと先の"共生"の社会です。多様な人たちがお互いを活かし合える豊かな社会。だけど、共生と言っても、一般の人が、障がいとか、何か社会的な課題を持つようなところに入っていくのにはハードルがあります。入っていく側に「ちゃんとしないと」と構える意識が働きがちですよね。

大栗:そうか、そこに、アートが介在すると入っていきやすい。というか、いつの間にか触れるきっかけになっている。

柴崎さん:そうなんです。芸術文化には、遠く感じがちな、障がい者の世界観を伝えたり、距離を縮めたりする力があると思うんです。

大栗:確かに距離がありますよね。同じ社会の中で生きているのに。考えてみればいつも「福祉」の枠で語られているのも、本当はちょっと違うのかな、って今思いました。

風間:仕事も、訓練のような考え方で、あまり賃金をもらえないと聞きます。

柴崎さん:厚生労働省によると、障がいのある人たちは約740万人で、そのうち18歳から64歳の障がいのある人は約330万人です。そのうち一般的な職場での就労は約25%で、それ以外の人たちというのは、作業所と呼ばれる障がい福祉施設で仕事をしているんです。箱の組み立てとか、食品の加工とか。この話をすると皆さん驚かれるのですが、1日4~6時間、月に20日働いて、いくらもらっていると思いますか?

大栗:少ない・・・んですよね・・・?

柴崎さん:はい。企業が運営する特例子会社や福祉工場だと10万円くらいもらえることもあります。でも、小さい作業所で下請け作業をしていたり、パンやクッキーのようなものをつくっている場合だと、1万円台とか、それ以下であることも珍しくありません。お金だけでははかれない部分はもちろんありますが、経済的に自立できるような状況でないのはおわかりいただけると思います。

大栗:ちょっとショックです・・・。

つながり合い、役割分担ができれば

柴崎さん:私も経験がありますが、福祉施設では、一般の職員も大変なんです。障がいに対する理解があり、ケアをすることのプロでなくてはならないことにプラスして、そこでパンをつくるのであればパン屋さんのような知識や、マネジメントのスキルも求められる。普通の職場ではまずないことですよね。

風間:そうか、そこで無理に完結させている状態なんですね。職員の方だって、そんな専門性を持っていたとしても、それほど厚遇なわけではないんですよね・・・。

柴崎さん:そうなんです。ですから本当は、企業と協働して役割分担ができるといいんですよ。パンやクッキーを焼いてバザーでだけ売るのではなく、一般的な商品と同じようにマーケティングもおこなって。

風間:エイブル・アート・ジャパンさんは、障がい者アートでまさにそういったことを仕掛けているんですね。

柴崎さん:はい。ですから、コラボしているのもアパレル企業などですし、一般の商品と同じ流通に乗ります。商品に、そのアートの背景についてどこまで説明をつけるかも、先方と状況ごとに話し合い、ときにお任せしています。