募金券でつくれる未来

社員との対談

第42回 プラン・ジャパン×良品計画 途上国の女の子たちに、生き抜く力を。 第42回 プラン・ジャパン×良品計画 途上国の女の子たちに、生き抜く力を。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第42回は、世界の女の子たちが、「女の子だから」というだけで虐げられることのない社会を目指し、Because I am a Girlキャンペーンを展開するプラン・ジャパンさんにお話をお聞きしました。

女の子であるだけで、生きることが難しい

貧困という問題を抱えながら、さらに「女の子だから」という理由で、途上国の女の子や女性は、普通の生活を送ることがより困難な状況にあります。学校へ通わずに家事労働をさせられる、幼いうちに結婚や出産を強いられる、十分な食事が与えられず、病気になっても治療を受けられない。10月11日は国連の定める「国際ガールズ・デー」。どうしたら社会の中で弱い立場にいる女の子たちが可能性を十分に発揮し、生き抜く力を身につけることができるのか、世界各国のコミュニティとともに活動するNGOといっしょに考えてみましょう。

プロフィール

プラン・ジャパン

プラン・ジャパンは、すべての子どもたちの権利が守られ、本来の能力を発揮できる世界を実現するため、途上国の子どもたちとともに地域開発を進める国際NGO、プランの一員です。Because I am a Girlキャンペーンでは、途上国の女の子・女性に焦点をあて、社会の中で虐げられている女の子たちが自立して生き抜く力を身につけることで、地域全体の貧困が軽減されることをめざしています。

プラン・ジャパン

  • 佐藤 活朗さん

    プラン・ジャパン
    事務局長

    神奈川県出身。一橋大学社会学部卒業後、海外経済協力基金(OECF)次いで国際協力銀行(JBIC)において30年余にわたり政府開発援助(ODA)業務に従事し、その間米国、パキスタン、インドネシアに駐在。JBIC退職後民間企業勤務を経て2010年に日本フォスター・プラン協会(その後公益財団法人プラン・ジャパンに改称)に転職、現在事務局長。

  • 高木 美穂

    良品計画
    海外事業部 事業推進担当
    管理担当課長

    2001年入社。国内の旗艦店勤務を経て、2004年に海外事業部へ配属。中国を含むアジア事業を4年間担当後、2008年よりMUJI ITALIAの責任者として現地へ赴任。MUJIのイタリア市場拡大に取り組み、14年2月より現職。MUJIは世界に通用するJapanese Retail Companyであるという喜びが、毎日の頑張りの原動力。

  • 土井 加奈子

    良品計画
    総務人事担当 人事課長

    2000年入社。無印良品町田に配属後、神戸、大阪の店舗勤務を経て、2003年に倉敷で店長に着任。その後、5店舗の店長と販売部スタッフを経験し、2011年にエリアマネージャーに着任。近畿から北陸地方の26店舗を担当。2013年2月より現職。現在は、採用、教育から労務管理、人事制度設計までを担当。

「Because she is a Girl」の言葉から始まった活動

Because I am a Girlキャンペーンは、途上国の女の子たちが
「生きていく力」を身につけることを目指しています。

高木:「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」というコピーがついたBecause I am a Girlキャンペーンのポスターは、よく電車の車内広告などで目にします。女の子にフォーカスした活動ですが、プランさんは世界の子どもたちの支援に特化した団体なのですよね。

佐藤さん:もともとは、戦争孤児の保護という目的で、スペインの内戦時代に始まった団体です。現在は子どもたちとともに地域開発を進める国際NGOとして、特に状況の厳しい50の開発途上国で、子どもたちが本来持つ可能性を発揮させるべく活動しています。

土井:子どもたちの中でも、女の子たちはより困難な問題に直面しているのでしょうか。

佐藤さん:子どもの就学率や幼児死亡率などは長い目でみると改善していますが、男の子と女の子の扱いには歴然とした格差があります。私たちが女の子に対する支援を強化している理由は2つあるのですが、1つは人権に関わる問題で、女の子たちの置かれている状況自体に是正が必要だから。もう1つは、その状況を改善することで途上国での貧困の解消につながるからです。これらの理由から、女の子の支援に特に力を入れてBecause I am a Girlというキャンペーンをすでに6年間行っています。

高木:女の子を対象とした活動はめずらしいように感じますが、このキャンペーンへの反応はどうですか。

佐藤さん:おかげさまで、想像以上に共感していただいています。人はどこで生まれても、みな同じ可能性を持っています。ただ、周囲の環境や習慣によっては、可能性の発揮が阻まれてしまうんです。途上国の女の子の場合はより一層厳しい状況にあるということを、多くの方に知っていただきたいと思っています。

土井:Because I am a Girl(わたしは女の子だから)。ドキっとする、インパクトのあるキャンペーン名ですよね。

佐藤さん:由来があるんですよ。ネパールの支援先の村で、プランのメンバーがある女の子の家を訪問しました。彼女は貧しいと一目で分かる格好をして、学校にも行かず、家の手伝いを一生懸命していたそうです。ところが、その子のお兄さんはきちんとしたかっこうをして、学校にも通っていました。「なぜ?」とたずねると、お母さんが「Because she is a girl(だってこの子は女の子だから)」と答えたんです。

高木:お母さんも、女の子とはそういうものだと思い込んでいたんですね。

佐藤さん:お母さんも周囲からそういう扱いを受け、そう思い込まされてきた背景があります。これは問題だということで、この言葉をキャンペーン名に生かしました。「女の子だから」こそ学校で勉強をしたり、元気に働いたりするような社会をつくりたいと、ポジティブな意味合いで使っています。

早すぎる結婚の予防にもつながる「教育」という出発点

土井:途上国の女の子の状況で、一番大きな問題はなんでしょうか。

佐藤さん:最も影響が大きくて深刻な問題は、教育の機会を奪われることですね。たとえば男の子に比べて、女の子の識字率が歴然と低い国があります。そういった国では、男の子には将来的に家の稼ぎ手になることへの期待から教育を受けさせていますが、女の子は成長しても子どもを産み家事をするだけと思われていて「わざわざお金をかけて教育を受けさせる必要がない」という認識が根付いているんです。

高木:女の子が学校に通うこと自体が、難しいことなんですね。

佐藤さん:就学率自体は、男の子に追いついてきていますが、もし仮に入学しても、家の手伝いのために通い続けられなかったり、あるいは途中で結婚させられて学校をやめてしまったりという女の子が多いです。

土井:女の子だけが、「女の子だから」という理由で教育を受けずに育っていく・・・想像を絶します。

佐藤さん:教育を受けないと、その子の一生に影響をおよぼします。読み書きもできず、職業訓練も受けられないため、収入を得る機会も減ることになるんです。それだけではなく、自分に子どもができても薬やミルクの説明書が読めず、死なせてしまうこともあります。

高木:次の世代の命にも関わってくるなんて・・・。苦しみが連鎖してしまうんですね。

佐藤さん:女の子が小学校の5年間だけでも学校へ行くと将来産む子どもが5歳まで生き延びる確率が40%以上も上がるという調査結果もあるくらい、女の子への教育は家族の収入や健康に直接影響します。また、性教育を受ければエイズなどにも罹病しにくい。全ての出発点は教育なんです。

土井:学校に通うメリットとして、他にどんなことがありますか。

佐藤さん:学校にきちんと通うことは、早すぎる結婚の防止にもつながります。中学校へ通えば、卒業する頃には15歳くらいですよね。「学校」という場所で子どもを守ることは、貧困の悪循環を断ち切る有力な手段でもあるんです。

高木:まだ幼い年での結婚。ニュースで耳にすることはあっても、なかなか身近に捉えるのが難しい習慣です。この問題にはどういった背景があるのでしょうか。

佐藤さん:一番の背景は貧困です。女の子も資産と捉えられているので、価値の高い内に手放してしまいたい。いずれ結婚して家から出ていくのなら、できるだけ早い方がいいという感覚です。国によっては12歳、あるいは8歳で結婚という早すぎる結婚の例もあります。また、結婚前に妊娠すると家の恥にもなるからという感覚もありますね。

土井:8歳で結婚なんて・・・。日本にいると考えられないような状況なので、とてもショックです・・・。

佐藤さん:倫理的な問題のほかにも、早すぎる結婚には弊害がたくさんあります。体がまた未熟なうちに出産すると、母体に危険があったり、子どもがしっかり育たなかったりということがよく起こります。また、夫はかなり年上の場合が多く、幼い妻は家庭内での発言権がなくなってしまう。それは、健全な家族とは言えないのではないでしょうか。