募金券でつくれる未来
社員との対談
第49回 日本ナショナル・トラスト協会×良品計画 「美しい自然を守りたい」という想いを実現する。
社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第49回は、自然が残っている土地を所有していくことにより、あるがままの自然や生態系を守る「トラスト活動」を行っている、日本ナショナル・トラスト協会さんにお話をお聞きしました。
- 時とともに減少していく、あるがままの自然。
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希少な生き物が息づく自然の多くは、失われてしまう危険性を常に孕んでいます。日本にはたくさんの自然が残っているように思われがちですが、植林地を含まない自然の森や草原は国土の約2割程度。そしてその多くが私有地であり、いつ土地開発によってなくなってしまうかはわかりません。かけがえのない自然を守っていくために、土地を所有して守っていく「トラスト活動」。未来に自然を残していくために、私たちにできることとはなんなのでしょうか?
プロフィール
日本ナショナル・トラスト協会
日本ナショナル・トラスト協会は、土地を所有することによって自然を守る「トラスト活動」に取り組んでいる団体です。各地でトラスト活動を行っている団体が集まって、日本全体でトラスト活動を推進していくための全国組織として結成されました。2007年からは、絶滅しそうな生き物のすむ森や美しい風景など、各地域に残る豊かな自然を守るため、自ら土地取得も行っています。
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中安 直子さん
日本ナショナル・トラスト協会
トラスト推進部長山口県出身。大学で地理学を学んだ後、1998年より(公財)日本生態系協会で自然を活かした地域づくりの企画や調査に携わる。2007年より現職。この7年間で全国35カ所のトラスト地取得に関わるほか、トラスト活動をもっと知ってもらうための普及啓発や、企業との連携にも力を入れている。
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樋熊 朋史
良品計画
業務改革部 海外VMD課長1999年入社。無印良品名古屋パルコ店に配属後、数店舗を経て2002年より名古屋で店長に着任。その後、岐阜、横浜で販売業務を経験し、2007年より本部業務改革部に配属。国内VMD担当、海外VMD担当を経て2014年より現職。主に海外店舗の出店業務、売場作りの基準作成や教育を担当。年間約100日は各国で海外スタッフと共に汗を流す。週末に1歳の娘と遊ぶのが現在の楽しみ。
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荒川 亮
良品計画
生活雑貨部 プロダクトディベロップメント担当課長 兼務生産部2000年入社。店舗経験を経て、2004年に生活雑貨部へ異動し、それから10年間ハウスウェア担当に所属。10年の中で、在庫管理として3年間、海外(シンガポール)に2年間出向、商品開発として2年間勤務したのち、2011年にカテゴリーマネージャーに着任。その後、2014年9月より現職。現在は、商品企画から、その商品企画を支える品質や調達方法など、部門全体にかかわる業務を行う。4歳の息子が一人いて、土日はべったりと子供と過ごすようにしています。
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失われていく、あるがままの自然
樋熊:「ナショナル・トラスト」は、イギリスでは広く知られている言葉だと聞きました。どういった意味なのでしょうか。
中安さん:「ナショナル」という言葉を直訳すると「国民の」という意味になります。国民から託されたお金で、トラスト団体が豊かな自然や歴史的な建造物を買い取ったり寄贈を受けたりして入手し、維持管理していく民間の活動を指します。その中で私たち日本ナショナル・トラスト協会が活動しているのが、自然環境の領域です。
荒川:日本は「森の国」とも言われますし、割と自然豊かな国というイメージがあります。
中安さん:確かに、日本は国土のうち約7割が森林で、世界有数の森林国と言われています。けれどもその森林のうち、昔のまま残っている状態の自然の森となると国土の2割ほど。つまり、多くが植林地などの人工的な林なんです。
樋熊:あるがままの自然というものは、そんなにも残っていないのですね・・・。行政による保護などはされていないのでしょうか。
中安さん:国立公園などの保護区や公有地として守られているところもありますが、十分ではありません。絶滅危惧種が生息しているにも関わらず、特に保護区の指定を受けていない私有地もたくさんあります。
荒川:そういった土地を買い取って保護をしていくというのは、やはり開発などによっていつ失われてしまうかわからないという点からですよね。
中安さん:はい。日本では「所有権」がとても強い力を持っているため、リゾート開発や建設が行われてしまう可能性は十分にあります。自然というものは、一度壊れてしまうと回復するのに何百年もかかる、不可逆的な存在です。だからこそ、今残っている豊かな自然を、トラスト活動で確実に守っておく必要があると考えています。
全国の活動をまとめ、横のネットワークをつくる
荒川:日本ナショナル・トラスト協会さんは、各地の団体の取りまとめを行われているのですよね。どういった活動をしているのでしょうか。
中安さん:代表的なものとしては、全国大会というイベントを年に一回ほど開催しています。トラスト活動を行っている団体同士の交流や、関心を持って参加してくださった方に活動への理解を深めていただくことが主な目的ですね。全国組織として、横のネットワークが活発になるよう促す役割を果たしています。
樋熊:取りまとめる存在が必要になったということは、全国的な活動ということですよね。そもそも日本においてトラスト活動が広まったのは、いつ頃からだったのですか。
中安さん:さかのぼって50年ほど前、鎌倉の鶴岡八幡宮の裏山を宅地開発から守るために活動が起こりました。これが、日本における最初のトラスト活動と言われています。大佛次郎さんや川端康成さんなどの著名な方々や鎌倉市の協力もあり、資金を集めて土地の買い取りが成功しました。市民や企業からの寄付金は、2年間で900万円ほどになったんですよ。
荒川:2年間でそれだけの寄付金が集まるというのはすごいことですね。当時の900万円というと、今よりも価値が高いわけですし。それぐらい「鎌倉の自然を守りたい」という地域住民は多かったのですね。
樋熊:「自然を守りたい」という気持ちの起こりって、自分にとって身近な地域であればあるほど強いと思うんですよね。だからこそ、各地域に根付いた強い想いを持って活動をしている団体さんが結束して動いていくのは、とても大事なことだと感じます。
中安さん:まとまって大きな塊として動くことで、例えばたくさんの人々に向けた啓発活動なども可能になりますからね。全国組織としての役割は、トラスト活動全体において非常に重要なものであるという自覚があります。
土地取得により維持されていく自然
荒川:日本ナショナル・トラスト協会さん自体が土地の取得を始められたのは、意外と最近なんですね。
中安さん:はい。元々は全国の活動をまとめることに専念していたのですが、トラスト活動を行っている団体が存在していない地域も、少なからずあります。そういった地域の土地取得は、全国組織として私たちが解決していくべき問題だと捉え、2007年から取り組むようになりました。
樋熊:土地を買い取るという活動だと、なかなか難航しそうなイメージがありますが・・・どういった手段で交渉が始まるのでしょうか。
中安さん:時と場合によりますが、守りたいと思った土地の持ち主を調べて、直接電話で交渉を始めることもあります。そういう時は、最初は不審者扱いされますね(笑)。
荒川:いきなり「土地売ってください!」と言うのですものね(笑)。
中安さん:やはり土地というものを扱う活動の性質上、スムーズに話が進まないこともあります。その地域の不動産屋さんなど、地元の人々との繋がりを持っている人が仲立ちしてくださる場合は、上手くいくことが多いです。あと大きいのが、土地そのものの寄付ですね。
樋熊:土地の寄付。その場合は、向こうから申し出があってお話が進んでいくのですか。
中安さん:ほとんどがそうですね。手放すという選択をしたからといって、自然が破壊されてしまうのは避けたいという考えを持っている方々からご相談をいただきます。だから感覚的には「寄付をする」というよりも、私たちに「託す」といった感じかもしれません。
荒川:確かにさまざまな事情があって手放すとしても、「自分のものじゃないから好き勝手開発されていい」とはならないと思います。自然のままの状態を維持してくれる団体があるなら、そこに任せたいという気持ちが少なからずありますよね。
中安さん:土地を寄付するという行為はやはり大きな決断だと思いますし、何より私たちの活動に共感し、賛同していただけたからこそ寄付していただけるわけですよね。そういったお気持ちに応えられる活動を続けていきたいですし、土地を受け取る体制を整え続けていくこと自体が、そこにも繋がってくるのかなとも思います。