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社員との対談

第58回 green bird×良品計画 人の心に、「きれいな街」づくりを根付かせる。 第58回 green bird×良品計画 人の心に、「きれいな街」づくりを根付かせる。

「社会の役に立ちたい」という想いを行動に移すきっかけに

横尾さん:活動をしながら学生と話すことが多いのですが、最近の学生は「社会のために役に立ちたい」という意識がとても高いですよね。一言目にはその言葉が出てくるような印象さえあります。

小川:ありますね。新卒採用の面接などでも、本当にここ数年でその言葉をよく聞くようになりました。若者全体でそういった気運が高まっているのでしょうね。

横尾さん:内閣府の若者の意識調査などもよく見るのですが、東日本大震災以降、特に社会貢献意識が高まっているように感じています。就職先を選ぶ際にも、その仕事が社会の役に立っているかどうかということを気にしているようです。

田中:green birdさんのご活動はそういう意味では、社会貢献活動に参加する入り口としてとても良いですよね。私の息子が大学生なのですが、大学の面接の際に地域でゴミ拾いに参加した経験を話して、とても評価されたらしいんです。学生側もそうですし、評価をする社会の側の意識も社会貢献に向いてきているのかもしれません。

横尾さん:逆に、就活のネタづくりでゴミ拾いに来てくれる若者が年々増えてきているんです。ある意味それは純粋ではないかもしれないんですけど、実際に参加すると視野が広がって地域に貢献することについて考え始めたりするようになるんです。そういう意味では何がきっかけでも良いから、一度参加することが大切だと感じています。その場所として私たちの活動を利用していただければうれしい限りです。

小川:社会の役に立ちたい、社会とつながっていたいというのは、人の根本的な願望としてありますよね。ゴミ拾いってそういう想いを抱えたときに、単純に参加できると同時に、地域貢献や環境問題、日本の社会の今の在り方など、深い部分に触れることができるような部分があるのだと、お話しして強く感じました。知らない人とコミュニケーションを取りながら、普段関わりのないゴミ拾い活動に参加することで、新しい価値観に触れることができるというか。そういった側面もあるのですね。

横尾さん:おっしゃる通り、ゴミ拾いに参加することは、実は普段住む世界がまったく違う人と偶然出会う可能性というのも秘めているんです。近年、SNSの普及などで自分と趣味の合う人や友達とつながりやすくなりましたよね。その反面として、偶然他人に出会うことがすごく減っています。参加してくれた方々に、色々な人と出会い、話し、さまざまな考え方に出会うような体験ができる機会として、ゴミ拾いという場があるという状況が大切だと最近特に感じています。

人と人とをゴミ拾いでつなげる

田中:green birdさんはゴミ拾いだけではなく、それをきっかけとした偶発的な出会いにフォーカスをあてている部分もあるのですね。それは、活動当初から考えていたことなのでしょうか。

横尾さん:いえ、むしろ活動を始めてある程度経ったときに、これまでやってきたことを振り返って気付いた点でした。もちろんゴミ拾い活動はとても大切なのですが、私たちの活動が動き始めたきっかけも企業の方が私たちの活動を見かけてご支援いただいたことですとか、商店街の方々とのつながりですとか、さまざまな出会いから広がったんですね。各地のチームリーダーとの出会いもありました。ゴミ拾いって参加すると、不思議なぐらいにコミュニケーションが生まれるんです。そこに気付いたとき、そのメリットは大切にしていきたいと思ったんです。

小川:ゴミ拾いからコミュニケーションが生まれるというのは体験したことがあります。良品計画でも定期的にオフィス周辺のゴミ拾い活動を行っているのですが、それに参加していると、たとえば通行人の方が会釈してくださったり、軽く「どうも」とあいさつをしてくださることがあります。これは普通に歩いていたらなかなか起きない現象ですよね。

横尾さん:そうなんです。あと、コミュニケーションを重視する理由として参加者の楽しさがありますね。無言でゴミ拾いをしてもあまり楽しくないですし、ゴミ拾い活動自体がそもそもつまらないと、せっかく参加したのに得るものがなかったような心持ちになってしまうこともあると思うんです。コミュニケーションを活発に行い、いい刺激をもらえるようなメンバーに出会うことができる場を維持することは、楽しく参加できることにもつながります。楽しく参加できる場をつくっていくことが、活動の広がりにもつながっていきます。

田中:参加者の内訳としては、繰り返し参加されている方と初めて参加される方、どちらの方が多いのでしょうか。

横尾さん:だいたい半々ぐらいの割合になるように注意しています。そもそも私たちの活動目的としてゴミ拾いに参加したことのある人口を増やしたいというのがあるので、参加したことない方への積極的な呼びかけは継続的に行っています。また、新規の参加者が気楽に参加できる場に大切なのが、固定メンバーだけのチームによる「内輪ノリ」のようなものがないことだとも思っているんです。そのため、メンバーがあまり固定的になりすぎないように気を使っています。

小川:なるほど。ゴミ拾いはあくまで出会うきっかけの場であって、ゴミ拾い活動に必ず長期間参加してほしいということではないんですね。

横尾さん:そうですね。私たちのゴミ拾いは街を綺麗にするという目的は大前提としてありますが、それ以外に「何かしたい」という想いを行動に移すことや、人と人とが出会いつながるきっかけなどのツール的側面も持っています。だから、偶発的な出会いを求めて都度参加していただいたり、あるいは逆に別の場所で出会った仲間を私たちの活動に引っ張ることでまた新たな出会いを生み出すなど、ゴミ拾い活動にさまざまな活用法を見出していただけると嬉しいです。

社会にとって必要とされるアクションを生み出していく

田中:ゴミ拾い活動の成功を測るのって難しいですよね。たとえば「地域に根付いた」と認識する、一定のラインのようなものはあるのでしょうか。

横尾さん:おっしゃる通り、その線引きはとても難しいです。ただ、そもそも私たちは街がゴミで汚れてしまっていなければ、存在しなくてもいい団体です。そのため、私たちの最終的な目標は私たち自体がなくなることなんです。活動から10年以上が経って、たとえば表参道では活動当初と比べてゴミの量がかなり減ってきています。近い将来、ゴミ拾いは地域の人たちだけで賄うことが可能になるかもしれません。もしそうなったときには、あえて表参道で組織的なゴミ拾いをする必要性はなくなります。これは、ひとつのゴールです。

小川:街がクリーンになるのは素敵なことですが、そのまま解散してしまうのものなんだかもったいない気がしますね。せっかく地域とつながる仲間が集まっているのに。

横尾さん:ええ。ゴミ拾い活動を続けて感じているのが、ゴミ拾いって簡単に集まれて、そのうえ、一度参加することで街とのつながりもできますから、「何かしたい」という気持ちの人が社会とつながる入り口としてとても良いツールなんです。もし私たちの活動に発展的な意味合いで解消するというビジョンが見えたとしても、そういった入り口としての役割は持ち続けていたいですし、または集まった人々でより何か社会課題を解決するための広がりが持てたらより発展的で良いと感じています。

田中:なるほど。そういった意味で、今後のご活動の広がりや展望というのは、ゴミ拾い以外にもつながっていくのでしょうか。

横尾さん:そうですね。目標として2020年までに100チームを結成するというものがあるので、まずはそれを達成していき、さらには海外に向けたゴミ拾い文化の発信もしていきます。その後の広がりについては模索中ですが、これまでの実績で多くの若者が集まり、地域とつながっていくという流れができているので、そこを生かして新たな形で地域に貢献できるというのもビジョンとして描いています。

小川:green birdさんが積み重ねてきた、ゴミ拾いをきっかけとして人と人とが出会う場づくりが、また新たな課題解決につながっていくのですね。

横尾さん:はい。活動をしていて一番得をしているのは、実は私だと思うことがあるんです。私は立場的に、たくさんの人と偶発的に出会い、対話をする機会をいただけます。そしてそれは多くのかけがえのない学びにつながっています。green birdの活動に参加してくれた方々にはそういった貴重な体験をしてほしいです。今後も、街をきれいにしながらさまざまな人と人が出会える場を提供し、その結果として社会にとって必要なアクションを生み出していけるような活動を続けていきたいです。

対談を終えて

田中:社会貢献に参画しながら人との出会いも享受できるような場づくりというのが、今の世の中には求められていると日々感じています。green birdさんはゴミ拾い活動だけではなく、それを通じた「出会い」にも重点を置かれていて、それはただ社会課題を解決するということではなく、偶然の出会いや、そこから生まれる人のつながりなど、さまざまなメリットを参加する方に与えることにつながっているのだと思います。社会課題をきっかけに人生が広がっていくような奥深い活動を、とても素敵に感じました。

小川:ゴミ拾い活動だけに留まらず、地域や人とのつながりを深めるということや、偶発的な出会いの提供など、活動の意義がどんどん拡大していることが非常に興味深かったです。私たちも商売を通して地域とつながっていきたいと常日頃考えています。green birdさんのお話は、地域とどのようにつながっていくべきなのかということを考えるためのヒントになるように感じました。とても有意義なお時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。

※役職等は対談当時のものです

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