募金券でつくれる未来
社員との対談
第7回
ジャパン・プラットフォーム×良品計画
~9月1日は防災の日~
3.11を受けて、災害と、その備えについて考える。
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第7回は、ネットワークの力で、緊急時に必要な援助を届ける、ジャパン・プラットフォームさんにお話をおききしました。
- 防災の日について
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9月1日は「防災の日」。そこからの一週間は「防災週間」とされています。1923年の9月1日に関東大震災が起きたことから、また、この時期に台風被害が多いため、災害への日ごろの備えを怠らないように制定されました。昔から「天災は、忘れた頃にやってくる」と言われてきましたが、東日本大震災の記憶は、私たちにとってまだまだ過去のものではありません。災害大国とも呼ばれる日本。どう備え、いざという時どう行動するべきか、繰り返し考えておくのも大切です。
プロフィール
ジャパン・プラットフォーム
ジャパン・プラットフォームは、NGOと経済界、政府が連携し、迅速に効率的な国際緊急支援が行えるよう後方サポートする非営利の中間支援団体。多発する地域紛争や、大規模な自然災害にいち早く対応するNGOに対し、政府からの資金や、企業、個人から募った寄付を初動活動資金に提供することで、円滑な緊急支援を可能にする。ジャパン・プラットフォームに加盟している35のNGOのうち、28団体は、東日本大震災の被災地でも活動を展開している。
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椎名 則之さん
ジャパン・プラットフォーム
事務局長 代行2001年より緊急人道支援NGOにて、インドやアフガニスタン事業を担当。国連での勤務を経て、現在、JPF事務局長代行。スリランカ、スーダン南部、ハイチ、アフガニスタンなどのJPFプログラムや東日本大震災被災者支援などに係っている。
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清水 智
良品計画
有楽町 店長食品メーカーを経て1996年に良品計画に入社。店長、商品開発担当を経験後、2011年に無印良品有楽町店長就任。生活雑貨部ファニチャー担当時代に大ヒット商品「壁に付けられる家具」、「防災セット」を開発。
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高橋 孝治
良品計画
生活雑貨部 企画デザイン室1980年大分県生まれ。2004年多摩美術大学生産デザイン学科 プロダクトデザインコース卒業。2005年より良品計画生活雑貨部企画デザイン室に勤務し、主に生活雑貨の企画デザインを行う。
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中間支援団体としての役割
清水: ジャパン・プラットフォームさんや、加盟しているNGOさんは、これまでも多くの国で、災害時の緊急、復興支援で活躍されていると思いますが、今回ほど大きな規模で、国内での活動を展開するのは初めてではないですか。
椎名さん: はい。私たちは、2000年に、国際協力の一翼を担うために設立されました。海外での経験は豊富ですが、日本での対応にあたるのは、2007年の中越沖地震以来、東日本大震災が2回目です。
清水: 国際協力のNGOが日本の被災地で活動するというと、ピンとことない人もいるのではないですか?
椎名さん: ご存知のように国際NGOは、通常、途上国の状況を改善するための活動をしています。ですので、日本国内での活動は今回が初めて、という団体も少なくありません。しかし彼らは、海外の過酷な現場での対応能力を磨かれているため、電気も水道もない場所で、テントを張っての活動が必要な大規模災害時にも、的確に動くことができるんです。
清水: 被災地に入って支援する側として、自分たち自身の、その間の生活や心身を管理する必要もある中で、海外で場数を踏んでいるNGOの皆さんは、確かに頼りになりますよね。まず、組織として動けますし、おっしゃるように、電気がない、水道もない、トイレはどうする?みたいな状況で、どうすべきかのノウハウを持っているわけですもんね。
椎名さん: 緊急支援において、現場での経験があることはとても重要です。私たちは、中間支援団体の立場なので、直接現場で活動する役回りではないですが、私たちもまた、現場を知らないとできないこともあるため、状況に応じて現地入りします。3.11の際にもそうでした。地震の発生直後、3日後、1週間後、1ヵ月後と、被災地の状況も支援ニーズも、当然変わっていきます。フェーズに応じて、何を持って、どのような手段でどこに行くか、次にどんなアクションが必要かの判断をしなくてはいけません。その判断に基づいて、各NGOの役割を調整したり、支援を行う地域に偏りが出ないようコーディネートするのも私たちの仕事です。
高橋: 良品計画も支援物資として商品を被災地に届けましたが、その際にジャパン・プラットフォームさんに相談して、最も必要とされている物のリストアップをしてもらったことがとても助かったと聞いています。現地入りしているNGOには、震災直後なかなか連絡がつかない場合もありますし、状況を大きく見渡して、企業として何をすべきかのアドバイスをしている余裕はなかったと思います。
椎名さん: まさに、私たちの存在意義のひとつでもあるのが、そうした部分ですね。政府や企業からの支援金や物資がNGOにうまく流れて、できるだけ早く、ひとりでも多くの被災者に、必要な支援を届けることができるよう、上流でコーディネーションをはかります。
災害大国とも呼ばれる日本での備え
清水: 私も高橋も、防災関連用品などの開発に携わってきたので、人一倍、災害と防災のことを繰り返し考えてきました。ところが、3.11を目の当たりにして、果たして完璧な防災などというものはあり得るのか、正直言って自分でも混乱してしまいました。みんなそうだったと思いますが、ショックでしたから。
高橋: 無印良品では、東日本大震災より以前から、防災について考えてきました。 神戸の震災を経験した方が立ち上げて、まちづくりや防災に取り組んでいるNPO法人プラス・アーツさんとコラボレーションした企画なども行ってきました。彼らがプロデュースした「地震イツモノート」という本があり、阪神淡路大震災の被災者に被災体験をインタビューしてまとめてあるのですが、その中で多くの方が、震災が起こった時の事を、「宇宙船が落ちてきたと思った」ですとか「六甲山が噴火したと思った」など、とにかく何が起こったかわからないと答えています。自分も実際にあのクラスの震災に遭遇したら、何がなんだかわからなくなってしまうのかもしれません。
椎名さん: そうですよね。起きたそのときに、冷静沈着でいるというのは、相当難しいことですよね。誰でもそうだと思います。それでもなお、というか、だからこそ、備えが必要なのではないでしょうか。日ごろからシミュレーションしておくことは非常に重要です。
清水: それは間違いないでしょうね。NGOさんのように、現場で場数を踏むのは誰にでもできることではないですからね。備えにはいろいろありますが、シミュレーションも大事な備えのひとつですね。
高橋: 防災に役立つモノでの備えも、やっぱり重要だと思います。ただし、自分がモノづくりに携わってきて思うのは、役立つ機能を持ったモノを、本当に機能させるための仕組みとか、仕掛けとか、これも必要だということです。便利なモノを開発して、どんどん売れば解決するというものではないと考えています。
椎名さん: モノを機能させるための仕組みや仕掛け、ですか。
清水: ご存知のように、防災のアイテムは、3.11の後、あちこちで売り切れるほどでした。反面、平時には、「防災」と言われてもなかなかピンとこないものなんですよね。でも、高橋が言うように、モノの備えも必要なんです。では、どうしたら、平時にそこに目を向けてもらえるか、とか、災害時に、支障なく役立たせるためにはどんな工夫やフォローが必要なのか、考えなくてはいけない、と。
普段使っているモノが、災害時にも使いやすいはずです
高橋: その答えのひとつが「防災の日常化」です。普段の生活で慣れ親しんでいる日用品が、災害時にも役立つ、寄り添うという考えです。災害のためにすべて特別なものを用意しておかなくても、普段使っているものがそのままなのか、形を変えてなのか、とにかく役立てば良いわけで。
清水: 広く市販されている防災セットって、ほら、あの銀色の耐火仕様のリュックに入ったのとか。普段使わないし、リビングに置いておきたいようなものでもないし、結局しまいこんでしまうのではないかと思うんですよね。いくら機能が優れていても、いざという時どこにいったかわからないのでは防災にならないわけで。
椎名さん: まさしくそうですよね。備えは、確実に必要だけど、既存の防災グッズには、インテリアとしてとか、ファッションとして、取り入れられそうなものは思いつきません。結局のところ、防災グッズは、使わない時間のほうがはるかに長いですし、幸運であれば、使わずに終わる可能性もありますから、しまい込んでわからなくなる人が多いのも無理もありませんよね。
高橋: そうですよね。無印良品は日用品を作っていますので、ベースは私たちの普通の生活にあります。あくまで日用品としての物が、非常時にも役立つアイデアを考えています。例えば、「持ち運びができるあかり」をコンセプトにしたライト。コードが無いので本当に色んな使い方が出来ます。でもここで注目してほしいのは、充電台から持ち上げた時に自動点灯する事です。本体に入っている基盤が、通電が停止した事を察知し明かりが点くようにしたことで、停電の時も自動で明かりが点くようになっているのです。これは日常で起こりうる停電という小さなアクシデントを配慮した事で、災害時の停電という大きなアクシデントにも対応しています。ありますよね、ブレーカーが落ちて家の中が真っ暗になった経験。そのときこれは点灯しますから。そして災害時の停電にも点灯し、室内を明るく照らしてくれると思います。
椎名さん: お世辞ではなく素晴らしいです。今まで何気に見てましたが、そこまで配慮してデザインされていたとは。
高橋: 物質的に豊かでなかった時代に、デザインを考案していた人たちは、その物を作る事で世の人の生活をより良くしていくために貢献したいという気概を持っていたはずです。では、物が溢れ環境の問題が叫ばれる今のこの時代にデザイナーとして社会のために一体何ができるんでしょうか。自分としても同じ志を持ちたい。その一つとして、「伝える」をしっかりやっていきたいと思っています。物を作るだけではなく、ソフト面でのフォローこそ重要ではないかと思っています。商品の特長を無印良品では「理由(わけ)」と呼んでいますが、長く大事に商品を使って頂けるよう、ちゃんとお客様に「わけ」を伝えていく。日用品に込められた防災性能もしかりです。無印良品における新しい物作りは、伝える事をやり抜いた上での行為だと思っています。