募金券でつくれる未来
社員との対談
第11回
ピースウィンズ・ジャパン×良品計画
~1月17日は「防災とボランティアの日」~
「役に立ちたい」を形に。ボランティアを考える。
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第11回は、海外での緊急支援活動を活かし、東日本大震災の被災地でも活躍中の国際NGO、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)さんにお話をおききしました。PWJさんは、2010年より、殺処分対象の犬を引き取り災害救助犬に育てる事業も開始しています。
- 防災とボランティアの日について
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1月17日は「防災とボランティアの日」、前後の15日~21日が「防災とボランティア週間」です。1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災を機に、災害への備えを強化するとともに、ボランティア活動への認識を深めようと制定されました。欧米に比べてボランティアへの意識が低いと言われることが多かった日本。阪神・淡路大震災では、学生を中心とした多数のボランティアが活躍して、「日本のボランティア元年」とも言われました。
プロフィール
ピースウィンズ・ジャパン
ピースウィンズ ・ジャパン(PWJ)は、紛争や災害、貧困などの脅威にさらされている人びとに対して支援活動を行うNGOで、1996年に日本で設立されて以来、世界中で活動しています。東日本大震災においては、緊急支援活動を行ったほか、現在では経済復興や子ども支援など、中長期的な支援活動を継続中です。
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齋藤 雅治さん
ピースウィンズ・ジャパン
海外事業部2002年からPWJにてアフガニスタンなどの事業を担当。07年7月新潟中越沖地震で出動。08年5月サイクロンが襲ったミャンマー、09年5月からは東ティモールに赴任。現在は、南スーダンなどの海外事業の他、東北支援を東京本部からサポートしている。
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鈴木 英行
良品計画
宣伝販促室 キャンプ担当1995年から2005年まで、無印良品キャンプ場での「アウトドア教室」常駐インストラクターとして勤務。その間、津南・南乗鞍・カンパーニャ嬬恋計3つのキャンプ場の「アウトドア教室」を立ち上げ、2006年から現職。主に、本部にて運営サポートを担当。
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戸星 洋子
良品計画
業務改革部 VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)課子供服アパレルメーカーを経て、1999年嘱託社員として、店舗改善や売場作りをサポートする販売部VMD担当で入社。2001年に本社員となり、無印品有楽町へ異動。店舗専属のVMD担当として、広い店内での売場作りに奮闘。2002年から現職。
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災害救助犬を育成する
鈴木:ピースウィンズ・ジャパン(以下PWJ)さんは、東日本大震災の被災地で活動を続けられていますが、もともと、紛争地を含め、海外を中心に緊急支援にも対応してきた団体さんですよね。
齋藤さん:はい。1996年の設立以来、イラク、モンゴル、コソボ、スマトラなど、さまざまな地域で活動を展開してきました。私の場合、現在、東日本大震災の支援活動のほか、南スーダンと東ティモールでの活動も担当しています。
戸星:頭の中でぐるっと地球儀が回りました。すごいですね・・・。
鈴木:災害救助犬の育成には、3.11より以前、昨年から着手されていたんですよね?
齋藤さん:そうなんです。PWJと犬というのが、すぐには結びつかなかった方もいるかもしれませんが、災害救助犬自体は、皆さんもテレビなどでご覧になったことがあるのではないでしょうか。東日本大震災においても、アメリカなどの救助隊が連れて来ました。
戸星:私は犬を飼っているので、PWJさんの災害救助犬育成プロジェクトが、殺処分対象の犬を引き取って訓練すると知り、強い興味がわきました。でもなぜ、このプロジェクトを始められたのでしょう。
齋藤さん:これまで、PWJが行ってきた支援の対象は、ひとまず難を逃れて避難場所にいらっしゃるような被災者の方々です。私たちは、震災後できるだけ速やかに現地に駆けつけますが、がれきの中にいるかもしれない人たちを探す作業は、警察や消防、自衛隊など、他の団体にお任せしていました。各団体の得意分野が活かせるように、役割分担があるのは当然ですが、要救護者を捜索するこの分野の活動を視野に入れ、まずは災害救助犬育成という新たな試みを始めてみようと考えたのです。とはいえ、これは大きなチャレンジですし、まだまだ試行錯誤のはじめの段階ですね。
戸星:うちの犬は3.11の後しばらく様子がおかしかったんです。東京も余震が続きましたから、ずっと怯えて食欲がなかったりして、心配しました。災害救助犬は、被災地に入って冷静にお仕事をするんですからすごいです。うちのは絶対に無理です・・・。
齋藤さん:災害救助犬に育てるには、2歳までの訓練が肝心だと言われています。もちろん、性格的な適性もあります。犬種はそれほど問いませんが、一般に、狩猟犬などが向いているそうです。ただ、適性があるであろう犬を選定しても、一人前のプロに育つのは5%に満たないという難関なんです。PWJが育てているのは雑種ですし、殺処分対象だった境遇からして、最初は人への警戒心が強くなっていることもあり、かなりの難易度です。種をまかないことには芽は出ませんから、がんばってまいて、育てていますが、正直言って、どうなるか未知数ですね。
鈴木:そうですか。それは根気も必要ですね。ペットの殺処分そのものが日本における社会問題になっていることですし、ご活動としては非常に共感できますが、そのように時間がかかり、根気よく取り組まなくてはならないことを、よくご決断されましたね。
災害に「備える」ということ
齋藤さん:私たちは災害が発生するとすぐに動き始めますが、言うまでもなく、準備が必要です。準備と言っても、災害が起きてから「さあ準備!」では話にならないわけで、プロとして、どのような段取りで現地に入り、現地での活動は、どこから着手してどう展開するか、どんな情報収集をするか、日ごろからシミュレーションし、備えておきます。災害は何年か起きないかもしれませんが、次の瞬間起こるかもしれない。だからこそ、日々準備をして、できるだけ万全に近づけておくんです。災害救助犬も、その「備え」のひとつという位置づけです。
鈴木:「備え」ですね。納得です。
齋藤さん:もう少しその点について述べますと、私たちは医療の専門家ではないので、実際の被災地では、そうした専門性のある人たちとの連携が必要です。自治体との連携もしかりです。その意味では、ネットワークづくりも「備え」ですね。支援の現場では、たくさんの人が協力し合って一人の命を救うんです。連携がスムーズに行われるか否かが生死を分けることだってあります。
戸星:PWJさんのような団体さんたちが、震災直後の緊迫した中で活動を始められていたとき、私たちはテレビで被災地の様子を見て、茫然としたり、混乱したり、自分も何かしなくては、と、気持ちが焦ったりしていました。
齋藤さん:東日本大震災はあれだけの規模の災害ですから、発生直後は特に、それは大変な状態でした。現地の映像が配信され出すと、目にする側の人たちの気持ちも高ぶりますよね。いてもたってもいられなくなる方も多かったと思います。私たちにも、「自分にも何かできることはないだろうか」と、ボランティアのお申し出を数多くいただきました。
誰かのために役に立ちたい!
戸星:私が住んでいる新宿区では、3.11の少し後、都庁で被災地向けの支援物資の収集を行っていました。私もトイレットペーパーを持参しました。行列でしたよ。本当にたくさんの人が、人によっては両手で持ちきれないほどの物資を持ってきていました。みんな何かしたかったんですよね。無印良品の店舗でも、「この棚のもの、全部ください」とおっしゃるお客様がいました。被災地に送るためです。じきに在庫切れになる商品も出て、被災地以外の、ご自身のためにお使いになりたいお客様にはご迷惑をおかけしましたが、事情をご説明すると一様に納得してくださいました。
齋藤さん:そうでしたか。
鈴木:私が担当している無印良品のキャンプ場のチームは、毎週持ち回りで石巻に行っていました。会社が認めて派遣しているため、何か危険があるとわかれば止めるわけですが、スタッフからすると歯がゆいこともあったようです。被災地に入って被災者に接するほどに、「もっと役に立ちたい」との思いが強くなりますからね。
齋藤さん:本当にそうだと思います。私たちは、支援活動をミッションとして行っている、つまりは仕事として行っている組織なので、ボランティアの方々のほうが気持ちが強いと感じることもあるくらいです。自ら仕事を休んで、交通費をかけていらしている方もいて、頭が下がる思いがします。一方で、あまり意気込みすぎると、被災地の途方もない被害状況を前に混乱したり、気持ちが塞いでしまったりすることもあるので、難しい面があることも否めません。
戸星:私がそうだったのですが、ボランティアに対しては、ある一定のイメージを持っている人が多いと思います。今、齋藤さんがおっしゃったように、並々ならぬ決意と意気込みを持って現場に行っている・・・といったような。ですから、「自分も何かしたいけれど、中途半端な気持ちでは参加できない、足手まといになる」という風に思っていました。でも、被災した無印良品の店舗へのヘルプで、宮城に赴いた際に感じたんです。もしかしたら、被災者の方のお話し相手になるだけでも、ほんのわずかですが、安心してもらったり、気持ちを和らげてもらえることも、時にはあるのではないかって。
齋藤さん:そうなんですよ。特に、数カ月の時間が経過して、一応の物資やインフラが行き渡った後は、ボランティアさんも少なくなりがちなのですが、是非、気構え過ぎず参加してもらいたいです。