募金券でつくれる未来

社員との対談

第16回 ビッグイシュー基金×良品計画 やり直しのきく社会をめざして、
ホームレスの人たちの自立を応援。
第16回 ビッグイシュー基金×良品計画 やり直しのきく社会をめざして、ホームレスの人たちの自立を応援。

行き場の数を増やし、つながり、認められることが必要

佐野さん:先ほども居場所の話が出ましたが、人って、居場所・・・言い換えると、行き場の数が多いほどに強くなれるものなんだと思います。家庭、職場、友人関係、趣味の集い・・・。私たちはビッグイシュー基金の活動の中で、行き場づくりも強く意識しています。

川名:おっしゃっていること、仕事でソーシャルメディアを担当している関係上、思い当るところがあります。ネット上では、いろんなつながりの輪ができますよね。ネットの世界って、良い面ばかりではないにしても、自分を表現して、他人に認められたり、居場所、行き場をたくさんつくることを容易にしています。知らず知らずに支えられていることが、自分にもあるかもしれないなって、今思いました。

佐野さん:ビッグイシュー基金の支援プログラムの中に、ホームレスワールドカップを目指して活動するフットサルチーム「野武士ジャパン」というのがあります。どうしてスポーツなんだ?という不思議に思う方もいると思いますが、川名さんがおっしゃったように、自分を表現したり、他人に認められるという経験を通して、自尊心や自己肯定感を持つことがとても大切だと考えています。自分を肯定的に認め、自信を持つことができなければ、厳しい状況の中、頑張りつづけることは難しいと実感しています。スポーツってすごくて、フィールドの上では、ホームレスとかは関係ない。大企業のエリートの皆さんとも対等です。チームスポーツで協力し合ったりすることも、必要とされているという実感を持つ上で、大きくプラスに働きます。

川名:だんだんわかってきた気がします。そうですよね。自立だ、仕事だ、の前に、人間を成すものというか、人間として生きるために欠かせないマインドってあるはずですもんね。取り戻さないと。

山下:その通りだと思います。けれど、マインドを変えるのって、自分に置き換えてみても、すごく難しいことですよね。絶望した人たちに、やる気になってもらうのって、簡単なわけがない。

佐野さん:はい。子どもではなく、大人をやる気にさせることの大変さって、おふたりもお仕事をされていて、上司の立場からも部下の立場からも、お分かりになると思いますけれど・・・(笑)。

川名:あはは。

山下:はい、わかります(笑)。

佐野さん:ホームレス状態にまで陥った人たちが「自信を取り戻し、社会との繋がりを感じられるようになること」や「明日への希望を持てるようになること」は、容易なことではありませんが、その点において、ホームレスワールドカップを目指すこのフットサルの活動には、大きな可能性を感じています。この活動をきっかけにして、変わる人も多いです。

若年化するホームレス。見えてきた、本当の問題

山下:ホームレスの若年化が進んでいるんですよね?人生、これから先の方が長い人たちなのに・・・。

佐野さん:そうです。20代、30代のホームレスが増えているということは、もはや彼ら自身の人生のみの問題ではないとも言えます。ホームレス化する若い人たちが増える社会そのものを考える必要がありますよね。

川名:労働力とか、納税者という意味でも、社会的損失ですしね。ただですら少子化なのに。それに、若いホームレスが生まれ、増えていく土壌のある社会が、ハッピーで活力のある場だとは思えないですよね。

佐野さん:はい。本質はそこにあると思っています。ですから、「(ホームレスである)彼らをどうするのか」ではなく、「私たちは、どうしていくか」なんだと思うんです。ビッグイシューとしても、いまホームレス状態の方々だけでなく、それを取り巻く「社会」に向けてのコミュニケーションにより力を入れていかなくてはならないと思っています。ホームレスが生まれないような社会づくりが最も重要ですから。

山下:ホームレスの問題というと、当事者意識を持ちづらいと思っていましたが、確かに、これは自分たちの問題ですね。

佐野さん:日本は長い間、家族が社会的なセーフティネットとなってきました。今はそこが機能しなくなってきています。また、ホームレスになった人たちには、日雇いや派遣など不安定な立場での仕事を続けていた人のほか、貧困家庭や、児童養護施設出身の人、障がいを持つ人も少なくありません。私たちは今、それを、個人や家族の問題として放置してよいのか、と問われているのだと思います。家族を失ったり、障がいを持ったり、失業をして収入がなくなる、というのは誰にでも起こりうることですから、そうなったときに家族の支えがない人でも安心して生きられるような社会だといいと思います。世の中のほとんどの人は、チャンスのある社会のほうが良いと考えると思いますし、失敗しても、再チャレンジができる、やり直しのきく社会が良いですよね。有限会社ビッグイシュー日本は、ホームレス状態の人にしかできない仕事を創ることで何度でも再チャレンジできるチャンスを提供していますが、ビッグイシュー基金は、ホームレス状態の人たちを含めた誰もが、安心してやり直しができる社会をつくることを目標に活動をしています。

山下:自分たちがどういう社会に暮らしたいか、ということでしょうか。少なくとも私は、やり直しのきく社会がいいです。

対談を終えて

川名:短時間で気づきが多く、とても勉強になりました。個人の問題だと思っていましたが、社会的な問題だということがわかったのが大きいです。ビッグイシューも、ひとつのセーフティネットだと思いますが、セーフティネットは、多い方がいいです。少ないほどに、危うい社会に生きているということですもんね。あと、個人的には、ビッグイシューのフットサルチームと、今度ごいっしょしたいです。無印チームとの交流戦とか、どうですかね。

山下:最後のほうは、ホームレスが生まれないような社会づくりが必要だというお話でしたが、本当にその通りだと思いました。だって、考えてみたら、誰がなってもおかしくないです。お話ししていて、他人事ではないという思いがだんだん強くなりました。セーフティネットを何重かに整えて、落ちないようにする仕組みを考えないと。日本の活力にも関わる問題ですし、考えさせられました。あと、これからはビッグイシューを買おうと決めました。

※役職等は対談当時のものです

ビッグイシュー基金は、2011年2月24日から5月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
408人の方から合計112,700円の寄付を集めることができました。
また、2012年5月24日から8月23日の期間、
38人の方から合計10,000円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。

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