募金券でつくれる未来
社員との対談
第21回 Coffret Project×良品計画 女性への支援を通じて知る、途上国のこと、日本のこと。
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第21回は、お化粧を通じて途上国の女性の尊厳を取り戻す取り組みを展開する、Coffret Projectさんにお話をおききしました。
- 途上国の女性の生きる力を応援する。
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途上国では、貧困や差別を背景に、想像を絶する過酷な人生を強いられる女性がいます。自力で環境を変えることが困難な彼女たちに、先進国の私たちが、何もかも「支援」することはできません。けれど、何かの形で、力をつけるきっかけをつくることができるかもしれません。そして私たちの側も、その中で学び、成長し、相互に尊敬のある関係を築くことができるのではないでしょうか。支援する側、される側の関係を超えてつながろうと取り組むCoffret Projectさんの経験に、そのヒントを探してみたいと思います。
プロフィール
Coffret Project(コフレプロジェクト)
途上国の女性の生きる力を、お化粧という手段を通じて応援するCoffret Project。ネパールを舞台に、貧困や女性差別の慣習などにより、つらい状況を生きてきた女性たちに対して、尊厳を取り戻し、自立につなげる取り組みを展開しています。
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向田 麻衣さん
Coffret Project代表
高校在学中(当時17歳)にネパールを訪問し、女性の識字教育を行うNGOに参加。2009年にCoffret Projectの活動を開始。現在までに約5000点の化粧品をネパール、トルコ、インドネシア、フィリピンに届け、延べ1000人の女性達に化粧ワークショップを通じて女性が本来持っている自信や尊厳を取り戻すきっかけ作りを行う。
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片寄 美恵
良品計画
宣伝販促室 宣伝課大学卒業後、自動車メーカーや製造小売業の広報・宣伝業務を経て、2000年8月良品計画へ入社し、宣伝販促室へ配属。入社以来、テレビや雑誌からの取材対応や商品貸出しなどの宣伝活動やプレス業務に従事し、現在は雑誌広告業務も担当。6歳の男の子の母。
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田中 いずみ
良品計画
経理財務担当 経理課1992年、良品計画へ入社。販売本部で無印良品のチェーンオペレーションの基本となる店舗運運マニュアル「MUJIGRAM(ムジグラム)」の立ち上げ、更新業務に携わる。現在は経理財務担当として、外為・決算業務を担当。2人の中学生の母。
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貧しくても、「おしゃれをしたい」女性の心にふれて
田中:単身でネパールに渡り、女性のためのプロジェクトを立ち上げて、日本で支援者を募って・・・お会いする前は、実際の向田さんとは違う感じの女性をイメージしてました(笑)。
片寄:私も。こんなふんわりした雰囲気の方だったとは。
向田さん:あれ、そうですか?
片寄:こうしたご活動を始められたきっかけはなんだったのでしょう。
向田さん:大学4年のとき、トルコでのフィールドワークを行う機会があったんです。貧しい地域の女性の雇用をつくることがテーマでした。その際は、独特の手法で手づくりされたアクセサリーをプロデュースして販売しようとしました。結果的には、品質にムラがあるなどの理由でうまく商品化できず、失敗だったのですが、そこの女性の、「おしゃれをしたい」「きれいになりたい」という声をきいたことが、今していることにつながっています。経済的に貧しく、特に女性は、男性優位の社会の中で自由にならないことが多い。私から見ると、ほかに優先順位の高いことがありそうなものだったのに、彼女たちが望んだことがお化粧とか、おしゃれだったんですよ。
田中:支援しよう、という立場からは出てこないかもしれませんが、大切なことですよね。
向田さん:はい。最初は、「それじゃあ雇用の役には立たないじゃないか」と思ったんですけど(笑)、彼女たちの声にヒントを得て、その後、トルコや、アジアのいくつかの国に化粧品を届ける活動を始めました。
片寄:それがコフレプロジェクトの始まりだったんですね。化粧品会社さんなど、有名企業もサポーターとなられていて、すごいですよね。
向田さん:プロジェクトを立ち上げた当初は、スポンサー探しで企業200件くらいに電話して、全部断られたんですよ。のっけから、「もうダメかな」と思いました(笑)。自分としても、お化粧に特化するのが本当に良いやり方なのか迷いがありましたし、前例がない分、自信だってありませんでした。ただ、大学の先輩をはじめとして、周囲の人がすごく応援したり協力してくれて、やめずにすみました。
生意気だった17歳が出会った初めての途上国
田中:今はネパールを拠点に活動されていますね。ネパールを選んだ理由はなんだったのでしょう。
向田さん:ネパールには17歳のときに初めて行きました。初めて訪れた、いわゆる「途上国」で、いろいろなことを学びましたし、アジアの中でも最貧国と言われる国でしたから、私にとってはそこでスタートする理由のある土地でした。
片寄:17歳のころから途上国支援に関心があったんですか。
向田さん:いえいえ、それが、ぜんぜんありませんでした!その前年に1年間アメリカに留学して、生意気になっていたんです。「グローバル化した」なんて、どこか思っていました。あぁ、恥ずかしい・・・。それが、たまたま高校のカリキュラムの中で、講師にいらしていた方にネパールの写真を見せてもらって、衝撃を受けたんです。栄養失調でお腹が膨らんだ子どもたちとかが写っていました。
片寄:年齢的にも、きっとすごく感受性が強かったんでしょうね。
向田さん:母がよく口にする、「世の中には満足に食べられない人もいるんだから、ご飯を残しちゃダメ!」という言葉が、急にリアルに感じられるようになって、自分のまったく知らない世界があることを突きつけられた思いがしました。「なんてかわいそうなんだ」と胸がいっぱいになり、次第に、ネパールに行ってみたくてたまらなくなって・・・。
田中:それで17歳にして、ネパールに行かれた・・・?
向田さん:そうなんです。その講師の方に自分で相談して、女性の識字教育を行うNGOに参加させてもらいました。
片寄:すごい行動力・・・。
田中:本当に・・・。
貧しい中にも、幸せな日常があることを知る
向田さん:もともとすぐに行動に移したい性格だということもあって、実際に行って、自分の目で見てみたい一心でした。親を心配させてしまいましたが、結局渡航して、それが良かったんです。「かわいそうな人たちのために、何かできることはないか」と思っていた傲慢さを打ち砕かれて、また自分を恥じました。
田中:実際に行ってみないとわからないものですね。
向田さん:そこには笑顔があったんです。訪れる前は、悲惨な光景や、悲しい顔の人たちばかりを想像していて。けれど実際には、たとえ貧しくても、家族いっしょのご飯の時間があったり、友だち同士ではしゃぐ子どもたちがいたり、豊かとも感じられる日常がありました。当たり前ですよね。「かわいそう」だなんて考えてたけど、単に先進国だから幸せだなんてことはないんだなぁと。多くの人が毎朝ぎゅうぎゅうの電車に揺られ、夜遅くまで働いて、「日本の私たちはこの人たちより絶対に幸せ」なんて、本当に言えるの?と思ったんです。その思いは今も変わりません。
片寄:本当にそうですよね。ほかの国の人からすれば、休みなく働いて、家族と食卓を囲む時間もない日本人の姿が、「かわいそう」と映ることだってありますから。
田中:向田さんは、「支援」とか「途上国」という言葉や、そこから連想されるステレオタイプ的なイメージに違和感を感じているそうですが、このような経験からきているんですね。
向田さん:言葉は、ほかに言い換えづらいので便宜的な意味でも使っていますが、寄付を募るNGOの、かわいそうな赤ちゃんが涙を流しているような広告、ありますよね、そうした表現は避けています。現実であるのは間違いないけれど、切り取られた現実だと思うからです。悲しみで人の心をつかむのは、寄付を集める上で効果的だと私も理解しています。でも同時に、自分が寄付をする側に立った時、悲しみに共感し続けるのは苦しいと感じるんです。だから自分自身が活動をするにあたっては、「悲しみのマーケティング」ではなく、別のやり方を実践してみたかった。楽しいことで共感を得ていくことに挑戦したかったんです。