募金券でつくれる未来
社員との対談
第24回 TABLE FOR TWO×良品計画 飢餓と肥満。世界の抱える2つの大問題を考える。
生まれた時から、空腹が当たり前
日向:1日1食がやっとということでしたが、食料にかかわる状況についてもう少し教えてください。
安東さん:日本人の感覚では、なかなか想像が及ばない世界です。私たちのプログラムの支援対象になっているのが、特に貧しい地域という事情もありますが、前述したように、食事は給食のみ、というケースもあります。学校がある週に5日は給食を食べて、休みの日は何も食べていない。かろうじて、庭に植えてあるマンゴーやアボカドが実をつけたら食べられる、といった状況です。
日向:そうですか。それだと、多くの時間は空腹の状態にあるということですね・・・。
安東さん:私たちが提供する給食を、コンスタントにお腹に入れることができるようになったことで、逆に空腹の辛さを知る子もいるんです。
田中:どういうことですか?
安東さん:生まれた時から、お腹いっぱいに食べ物を食べたことがほとんどなくて、空腹な状態でいることは比較的当たり前という環境で育つからです。
田中:そうか・・・。給食でお腹を満たすという満足感を味わって、初めて空腹の時の辛さを知るということですね。
安東さん:ええ。だから、国際支援で一度始まった給食を、支援する側の財政的事情などで打ち切ってしまうと、地域全体が動揺するんです。彼らには死活問題ですからね。私たちも、「まだ続けてくれますか?大丈夫ですか?」と、これまで何度も繰り返し尋ねられています。
日向:こうしたお話をお聞きすると、TFTさんのプログラムの良さがわかります。継続的な支援は必要ですが、企業や個人の良心に訴えて寄付を募るだけだと、不況になると集まりにくくなったりしますから。
安東さん:まさにそうなんです。慈善で、一方的に提供し続けるのは難しいんです。だからこそ、TFTのプログラムを考えるに至ったわけです。
好きな食べ物は「ポショ」
日向:だんだんと活動内容の理解ができてきました。
田中:そうですね。先ほど安東さんが、給食は私たちが思っている以上に、途上国の人にとっては大事、と言われた意味がわかってきました。給食は、その日の空腹を満たすということに加えて、ご飯が食べられないから学校に行かない、学校に行かないから大人になっても食べられるようにならない、というような悪いスパイラルを解消するひとつのきっかけにもなるかもしれないですよね。
安東さん:スパイラル・・・そうなんです。貧しい地域の大人たちの多くが教育を受けていなくて、だから子どもにも必要ないと考えてしまうんですよね。でも彼らは、農作物なり家畜なりを、効率よく育てることも、より高く売ることも、なかなかできません。基礎的な教育がないためです。市場に持って行っても、計算ができなくて足元を見られますし、文字が読めないことで、頻繁に騙されたりもします。
日向:食べることもですが、教育についてもとても切実なのですね。
安東さん:本当に切実です。ただ、一食を食べることについては、もちろんさらに切実です。私たちとっては、食べることは「楽しみ」ですが、彼らにそんな感覚はありません。
日向:生きるために食べる・・・。
安東さん:はい。だから子どもたちも、ものすごく真剣な顔で、がつがつ食べますよ。「好きな食べ物は何?」という日本ではよくある質問も、あちらではほとんど意味を成しません。子どもたちにその質問をすると、ほとんどが「ポショ」と答えます。トウモロコシの粉を練って作った主食で、給食にも用いられます。それしか知らない子が多い。
田中:子どもたちが空腹の辛さを知らなかったとか、食べることを楽しむという感覚を持てる状況ではないとか、今回の話を聞くまでは正直知りませんでした。食料不足に対しての漠然とした画一的なイメージしかなくて、実際の中身のところまではあまり知りませんでした。
日向:考えてみればそうですね。お聞きするまで、わかりませんでした。
「食べることが好き」が、NGOの仕事に導いた
日向:世界各国に活動を広げて、いろんな人に知られるようになってきているTFTさんですが、安東さんご自身は、どのようなきっかけでこの仕事に就くようになったのですか。
安東さん:前職では一般企業で働いていました。もともと食べることが大好きで、好きなあまりに(笑)、ものが食べられないのってどんなに辛いだろう、と感じたんです。それで個人的に寄付をしたりしているうちに、こうした活動への興味が、だんだん強くなってきまして。
田中:そうですか。なんか自然体でいいですね。急激に親しみが(笑)。
日向:そういう入り方もいいのかもしれませんね。立派なことをされているけれど、「私たちとは違う人」ではなく、同じような感覚をお持ちだと、世の中に広くコミュニケーションをとっていく上でズレが生じにくいと言いますか。
安東さん:そうですか(笑)。ありがとうございます。今でも食べることが大好きで、変わっていませんけれど。
日向:なんでも義務感とか責任感だけだと苦しくなりますし、どんなに意義のあることでも、上からお説教されているみたいだと、やはり長続きしなくなってしまいますから。
安東さん:その点はTFTとしても気をつけています。でないと、忙しい現代人の日常に取り込んでもらうのは大変です。
田中:そうですよね。だからこそ、ハードルを低くして、ちょっとした気づきを提供し続けるということが、大事だとも言えますよね。
どこでも毎日参加できるよう、スマホアプリを開発※ 2017年7月12日をもってサービスを終了しました。
安東さん:ハードルを低く、という意味では、お陰さまで年間100団体ペースでプログラムを導入してくれるところを増やし、参加してもらいやすくなっています。また、さらに手軽に、楽しみながら、と考えてiphoneアプリをつくりました。食事の写真をアップすると、1円が協賛企業から寄付される上に、写真画像から栄養の過不足を自動解析されるので、自分のためにもなるんです。毎日の食事の記録にもなって、ダイエットにも弾みがつきます。
田中:おー、面白い!気軽に記録できるのは、健康管理にも良いですね。昨日食べたものも忘れてしまいますから。
日向:昨日食べたものは覚えててくださいよ(笑)。でも、食べたいものだけを何気に食べていることも多いので、撮影して保存するというアクションが意識づけにもなりますよね。「もっと野菜食べなくちゃ」と思うみたいに。
安東さん:私もこのアプリを利用していますが、やっぱり時々反省しますよ。振り返って見ると、偏った食事をしていることに気づいたりして。居酒屋での飲み会なんかでは、後から写真を見ると、たいがい注文しすぎなんですよね。
田中:TFTさんが、今後目標にされることはどんなことですか?
安東さん:どんどん活動が広がって、海外でも、ニューヨークには支部がありますし、現在10か国でプログラムが活用されているんですね。それは嬉しいことです。でも、本当の目標は、TFTの解散です。世界に飢餓も肥満もなくなること。解散が、私たちの究極の夢なんです。
対談を終えて
田中:TFTさんのことは、この対談のお話をいただいて初めて知りました。ホームページを見て、ご活動に感心したので、対談の予習も兼ねてプログラムを導入しているレストランに行こうかとも思いました(笑)。結局まだ行けてはいませんが、ちょくちょく立ち寄るコンビニでも、時期によってはTFTさんとのコラボ商品を出しているみたいですし、ぜひ購入してみようと思いました。今回の対談で、このような活動を知ることができて本当に良かったです。そして、もうひとつ良かったことは、妻と改めて食について話ができたことです。今までさほど気に留めていなかった子どもの給食のことも、いっしょに考える機会になって感謝しています。
日向:飢餓問題に対する意識はそれなりに持っていましたが、先進国の問題をつなげて考える視点が持てていなかったので、とても勉強になりました。私がこの部署(カフェ・ミール事業部)で仕事をしているというのも何かの縁だと思うので、Cafe & Meal MUJI などでもTFTさんとコラボしたヘルシーメニューを検討できないかと、対談中も少し考えていました。無印良品のカフェには女性のお客さまが多いこともあり、日常的にカロリーに関するお問い合わせも少なくないんですよ。きっとTFTさんとは相性が良さそうですし、少し具体的に考えてみたいです!
※役職等は対談当時のものです
TABLE FOR TWOは、2012年11月26日から2013年2月24日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
1,253人の方から合計197,960円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。