募金券でつくれる未来
社員との対談
第28回 しんぐるまざあず・ふぉーらむ×良品計画 ひとり親を独りにしない。つながって、乗り越える。
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第28回は、シングルマザーが子どもといっしょにいきいきと生きられるよう、情報提供や交流の場づくりを行う、しんぐるまざあず・ふぉーらむさんにお話をおききしました。
- 世帯年収半分以下、半数以上が貧困
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この数年、子どもの貧困問題がクローズアップされるようになりました。その中で特に挙げられるのが、ひとり親家庭、とりわけ母子家庭の世帯収入の低さです。母子世帯の平均年間収入は223万円で、児童のいるすべての世帯の平均所得の半分に満たない額です。預貯金額も、半数近くが「50万円未満」と答えています。(厚生労働省発表「2011年度全国母子世帯等調査」)以前より女性の社会進出が進んだはずの今、母子家庭の生活は改善してきているといえるのでしょうか。シングルマザーの課題を考えることで、子育て環境全般の、課題も見えてきます。
プロフィール
しんぐるまざあず・ふぉーらむ
しんぐるまざあず・ふぉーらむは、1980年に、当事者を中心にして活動をスタートさせた団体です。2002年にNPO法人として認可を受けて以降、関東を中心に、約350人の会員を有し、全国に広がっています。シングルマザーが子どもと共にいきいきと生きるため、生活を乗り切るための情報提供や、交流の場づくりをするほか、政策提言のための調査や働きかけを行っています。
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赤石 千衣子さん
しんぐるまざあず・ふぉーらむ
理事長非婚のシングルマザー。児童扶養手当が削減されそうになり母子家庭のグループに出会う。現在しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。反貧困ネット副代表。2012年秋のドラマ「シングルマザーズ」に取材協力。編著に『シングルマザーのあなたに 暮らしを乗り切る53の方法』ほかがある。
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佐藤 みゆき
良品計画
衣服雑貨部 海外商品担当短大、デザインスクール卒業後、アパレル業界に就職。欧州での生活を経て、1997年に入社。VMD担当の立ち上げに携わり、より魅力的な売場作りの提案業務を担当後、現職。海外子会社等の商品供給サポート業務を担当。12歳と10歳の息子の母。
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馬場 由利子
良品計画
宣伝販促室 宣伝課2006年、入社。宣伝販促室へ配属。生活雑貨カタログの制作アシスタントなどを経験し、現在はテレビや雑誌からの取材や商品の貸出し依頼等の応対とニュースリリースの配信など、主にプレス業務を担当。乗り物に夢中な1人息子の母。
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母子家庭をとりまく環境は今
佐藤:しんぐるまざあず・ふぉーらむさんには、会員の方が何名くらいいらっしゃるのでしょう。
赤石さん:350名くらいです。もともと30年ほど前に、当事者たちの居場所づくりや、情報交換の場として立ち上げられ、ときどきイベントも開催しています。
馬場:離婚率が上がって、また、多様な生き方を選択する人も増えている現在、シングルマザーの存在は、さほど珍しくないと思います。以前と比べてとりまく環境も改善していそうな気がするのですが、どうでしょうか。
赤石さん:そうですね。シングルマザー世帯124万のうち、ほとんどが離婚を原因としています。世の中が離婚に対して寛容になったことで、楽になった部分もあります。一方で、就労環境では、以前より正社員になるのが難しくなったとも言われ、生活水準はなかなか上がりません。
佐藤:離婚が原因であれば、別れた父親も養育費を負担する責任がありますよね?
赤石さん:そうなんですけどね。養育費については4割くらいの人が取り決めていて、うち2割弱が実際に受け取っている。というのが現状です。取り決めをしないケースでは、相手に支払う意思や能力がないという理由が最も多いのですが、離婚の原因がDVだとやり取り自体を避けますし、取り決めをしたとしても、男性のほうに新しい家庭ができるとそれっきりになることも珍しくありません。
子どもの気遣いがつらいときも
佐藤:ほかの家庭の半分以下の世帯収入では、子どももいろいろと我慢しなくてはいけないかもしれませんね・・・。
赤石さん:進学に伴う費用など、教育費の捻出にかなり苦労しますね。あと、今の子どもは豊かな社会で育っているだけに、お母さんは精一杯やっていても、他と比べて「足りない」と、子どもに感じられることが多いみたいです。だけど、子どもにも何となく「うちは貧しい」という認識があるのであまり言い出さなかったり。
馬場:あれが欲しい、これがしたい、というのも口にしないんでしょうかね。
赤石さん:そういう話もよく聞きますね。子どもなりにお母さんの苦労を理解して、気を遣うんですよね。「お金はないけど、あなたを誰より大切に思っている」と伝えることが大事なんですよ、といつも言ってはいますが、特に、「進学せずに働く」と言われると、やはり親としてはつらいですよね。
佐藤:胸が痛みます。
だから、シングルマザー同士で知り合いたい
馬場:私も母親ですが、シングルマザーでなくても、仕事をしながらの子育ては本当に大変だと感じています。もしも経済的にぎりぎりで、周囲の支えもなかったら・・・考えるだけで気持ちが折れてしまいそうです。
佐藤:本当に。経済的な苦労こそ少なくても、夫の帰りが毎日遅くて「シングルマザー状態」だという人も周りにいます。誰でもそうだと思うのですが、孤独な子育てってきつい。ですから、しんぐるまざあず・ふぉーらむさんのような、居場所があるのは、とても心強いですよね。
赤石さん:そうなんですよね。シングルマザー同士で知り合いたいという人が多いのは、例えば、子どもが成長した時、離婚で別々に暮らしてきたお父さんのことをどう話すか、といった悩みを、同じ経験を持つ人に相談したいんですよ。子どもとのことですごく悩んでいたけど、先輩ママに、「あぁ、それ、うちも同じだったよ。そのうち変わるから大丈夫」と言われるだけで救われたりしますしね。
馬場:すごくわかります。