募金券でつくれる未来

社員との対談

第31回 シビックフォース×良品計画 災害時、ひとりでも多く救うために。 第31回 シビックフォース×良品計画 災害時、ひとりでも多く救うために。

普段の生活に防災目線を取り入れる

川添:私は商品開発に携わってきましたが、防災目線は欠かすことができません。日本では、大きな地震の可能性を無視することはできないので、特に照明を担当していたときはいろいろシミュレーションしました。

新海さん:頭上に掛かる割れ物なので、危険物になりやすいですもんね。

川添:はい。東日本大震災の後はさらに仕様を意識するようになりました。これは照明に限りませんが、国の基準を満たせばそれでいいという考えではなく、いざというときに「役立つ」仕様にできるよう工夫したいと思うようになりましたね。たとえ普段はその工夫が活きることがなくても、万一の際に、あって良かった!となればすごくいいと思うんです。普段の生活に馴染まない、大げさなものでは困りますけれど。

新海さん:そうそう。特別なものだけで備えるには限界がありますからね。防災は、国によって起こりやすい災害の対策に重点が置かれるので、防災グッズもそれによるのですが、日本のものは総じて水準が高いです。細部にまで気遣いがあるというか。災害が多いということもありますが、日本のものづくりの特徴なのでしょうね。そして、普段の生活に取り入れるという視点はさらに先進的ですよね。非常用リュックを背負って生活できないですもん(笑)。

長屋:いつ起こるかわからないからなおさらですよね。

新海さん:私も、個人としての食料の備えには、ローリングストック法※を取り入れていて、無印良品のレトルトの食品類を活用してますよ。

長屋:無印良品でもローリングストック法を提案しているんですよ!非常時には思いがけないことがたくさん起こりますし、どうしたって動揺しないわけにはいかない。ただでさえ、強烈なストレスがかかる中で、非常食だけを何日間も食べ続けるのは想像以上につらいと聞きます。それに、乾パンだって賞味期限がありますから、その日が来たら食べなくてはいけない。

新海さん:乾パンの出番がそれまでになかったことは喜ばしいですけど、消費期限がきてしまうからという理由で、大量に食べるのはあまり嬉しくないですもんね。捨てるのももったいないし。ローリングストックはいい方法だと思います。

※数年間の長期保存が効く従来の非常食を、消費期限が来るまで食べずに保管するのではなく、日常食に取り入れ、食べたら買い足すことで常備する保存のしかた。乾パンのような非常時専用の食品ではなく、レトルト食品やカップ麺など、普段から取り入れやすいもので回していく。

東日本大震災での経験を、アジアの国々に

川添:災害の多い日本の必然なのかもしれませんが、いろいろなノウハウが蓄積されてきますよね。

新海さん:そうですね。東日本大震災を経て、シビックフォースは、2012年10月に「アジアパシフィック アライアンス」という組織を立ち上げて、やはり地震や災害の多い、インドネシア、韓国、フィリピン、スリランカとともに、緊急時に連携するための体制づくりに着手しました。シビックフォースのような災害時の連携機能をアジアでも取り入れ、より効果・効率的な支援につなげるためのものですが、日本が得てきたノウハウを共有することにも大きな意義があると思っています。

長屋:緊急支援のノウハウはもちろんですが、今後、復興のためのノウハウも、日本が世界に誇れるものを持てるようになれば嬉しいですね。

新海さん:本当にそう思います。私たちも、宮城県の気仙沼市で、復興のための中長期のプロジェクトを実施中です。災害時の緊急支援を専門にする私たちが復興にかかわるのはどうなのか、次の災害に備えることにリソースを割くべきではないかと、組織内でも議論がありました。ですが、現場に鑑みると、「まだまだ緊急事態だ」という結論になったのです。そして、元に戻す復興よりも、一歩進んだ町づくりを見据えて活動しようということになりました。

川添:東日本大震災の被災地の多くが、もともと高齢化・過疎化の課題を抱えていましたからね。

新海さん:はい。ですから、魅力的な町づくりを目指して、観光を活性化させるための戦略を組んだり、再生可能エネルギーの原料に、活用されてこなかった地域の森林資源を使ったり、災害に強くなるための仕組みづくりを考えるなど、5つのプロジェクトを地域の皆さんをサポートする形で進めています。東北事務所を気仙沼に構えており、住民票を移して腰を据えて活動するスタッフもいます。

長屋:地元の人との信頼関係がないとできないことですね。

新海さん:はい。そこが前提にないと、何を行うにも機能しなくなってしまいますね。中長期的な復興への取り組みも、私たちにとって前例のないチャレンジです。やるからには、やはりプロとして結果を出さないといけないと思っています。

日本のNGOの価値向上のためにも、プロとして

長屋:プロという言葉が出ましたが、実際にお話ししてみて、シビックフォースさんは、プロ意識が高い団体さんだという印象が強くなりました。

新海さん:代表がいつも言うんです。企業と同等のプロフェッショナリズムが必要だって。非営利だとか、「いいことしている」ということに、甘んじてはいけないと。私は以前、出版社で仕事をしていたのですが、そうした経歴の人間を広報担当として入れたのも、組織として広報という仕事を重視していたからなんですよね。シビックフォースは、寄付で成り立っている団体として、寄付をしてくれる方々に納得してもらえるような情報公開をして、説明責任を果たすこともまた、重要な仕事のひとつだと考えています。

川添:その考え方にはとても共感できます。災害のとき、現地に支援に走るほどの行動力のない自分ができることは寄付だろうと思うのですが、その際、責任を持って、寄付金がきちんと活かされるような寄付先を選ばなくてはならないと考えるからです。

新海さん:欧米やアジアのNGOはそのあたりのコミュニケーションが進んでいて、だからこそ、社会のなかで大きな影響力を持てる組織が出てきているのだと思うのです。東日本大震災以降、日本の企業の社会貢献活動や寄付に関する関心が高まっていますが、日本のNGOも事業面だけでなくアカウンタビリティーの面でももっと上を目指していきたいです。

対談を終えて

長屋:前例のないことにチャレンジするのは、何にせよ大変なことだと思いますが、命にかかわることとなれば緊張感はいかほどかと思います。シビックフォースさんには、ご活動もですが、そのプロ意識に関心しました。私も総務の立場で海外事業部と連携しながら海外拠点での危機管理を向上させようと取り組んでいるところです。国によって、文化も、起こりうる災害の種類も異なり、また、さまざまな店舗があるため、意見もいろいろです。平時に何をするか、どう備えるか、今一度しっかり考えようと思いました。

川添:NGOのような組織が実際にどのようなことをしているのか、なかなか具体的にイメージできていなかったので、今日はそれに触れる機会になって良かったです。NGOの、そして、シビックフォースさんのような災害時の中間支援組織の存在意義にも納得しました。国内のみならずアジア地域でも連携してバックアップ体制が取れれば、素晴らしく、是非実現していただきたいです。私も、商品開発の一つの考え方として、防災の視点をものづくりに取り入れていくことの必要性を再確認できました。今日のお話を刺激にして、自分にできることへの意識を高めていきたいです。

※役職等は対談当時のものです

シビックフォースは、2013年8月26日から11月24日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
59人の方から合計20,700円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。

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