募金券でつくれる未来
社員との対談
第46回 ウォーターエイドジャパン×良品計画 水と衛生。生きるために不可欠な環境をすべての人へ。
社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第46回は、世界中の人々が安全な水と衛生設備を利用できるよう活動を続けるイギリス発のNGO、ウォーターエイドジャパンさんにお話をお聞きしました。
- 水という、命に直結する資源を考える
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世界の人口の約10%が安全な水にアクセスできず、約35%はトイレのない生活を送っています。命に直結する、必要最低限の設備にさえ手の届かない人がまだまだ少なくありません。安全な水や衛生設備のある生活は、生命や健康の維持だけでなく、収入の機会や、教育・人権の問題にもつながります。先進国の日本に住む私たちにも、決して無関係ではない水・衛生という問題を、世界各地で活動するNPOといっしょに考えてみましょう。
プロフィール
ウォーターエイドジャパン
ウォーターエイドジャパンは安全な水や衛生設備を利用できない人々の生活を改善するため、1981年にイギリスで設立した団体の日本事務局です。世界各地で給水設備や衛生的なトイレの設置を進めており、いままで安全な水を使うことができるようになった人は2100万人、衛生設備を利用できるようになった人は1810万人にものぼります。改善された生活環境を継続させるため、能力や技術が現地に確実に根づくよう、現地のパートナーと協力しながら、活動を行なっています。
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高橋 郁さん
ウォーターエイドジャパン
事務局長一橋大学社会学部卒業後、流通小売業を経て、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院で開発学修士号取得。
帰国後の2004年より2010年まで、緊急支援のNGOにてファンドレイズ、広報、企業連携を担当。2012年より現職。唯一の事務局職員として日本法人を立ち上げた。
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見市 信
良品計画
食品部 MD計画・DB数値担当課長1996年入社。福岡、大阪の店舗配属後、販売部LS担当を経てルミネ新宿店長に着任。その後は流通推進担当、販売部エリアマネージャー、衣服雑貨部で業務。現職では食品部の営業計画立案、数値管理を主に担当。7歳と1歳の息子の二児の父。
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水内 治朗
良品計画
企画室 経営管理担当課長1997年入社。都内店舗にて勤務後、1999年に新所沢店店長に着任。のち、初の大型店プロジェクト、関西地区のエリアスタッフ、販売計画担当、自由が丘店や静岡店の店長を経て、現在は全社の予算策定や実績管理など数値に関する業務全般を担当。休日は団長を務める吹奏楽団でトランペットを吹いたり、愛犬とのキャンプでリフレッシュ。
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伝染病、飢餓、児童労働・・・多くの問題に繋がっている「水」
見市:ホームページを拝見して「そもそも水が使えない」という環境で暮らしている人々の多さに衝撃を受けました。
高橋さん:ウォーターエイドでは「飲料水の確保」「衛生的なトイレ」の2つを、途上国の大きな課題として捉えています。現在、安全な水を利用できない環境で生活している人々の数は約7億4800万人、地球の人口の1割です。トイレがない環境で生活している人々となると、約25億人にものぼります。
水内:凄まじい数ですね。日本で暮らしているとどうしても「水がない」という感覚は実感しづらいですが、それぐらい日本は水資源に恵まれた国ということなのでしょうか。
高橋さん:そうですね。日本は他の国と比較すると、水資源にはとても恵まれています。水道も整備されているので、不衛生な水を使わざるを得ないという状況にも追い込まれにくいです。ちょっとクイズを出したいのですが、日本でよく食べられているチェーン店の牛丼1杯に、どれぐらいの水が使われているかってご存知ですか。
見市:それって、牛が育つのに使われる水の量も含まれますか。
高橋さん:鋭いですね。牛や、牛の食事である飼い葉が育つのに必要な水も含みます。
水内:コップ何杯・・・いや、バケツでも足りない量になってくるのではないでしょうか。
高橋さん:概算ですが、牛丼1杯につき給水車1台分です。
見市:想像以上の量です!
水内:牛肉って、輸入品が今は多いですよね。それだけの水を輸入しているということにもなりますね。
高橋さん:はい。輸入食品に使われている水の量と、今日本で消費されている水の量はだいたい同じくらいと言われています。そのため、輸入食品を日本の生産でまかなおうとすると、私たちの飲む分の水がなくなってしまうという計算になるんです。豊かな水資源をもつ日本ですが、食料品という側面だけで見ても、それぐらい海外の水資源に依存しています。
見市:いかに水が生きるために必要なものなのか、よくわかります。日本よりも水が確保しづらい地域は多くありますし、そもそも水が必要なのはもちろん食事だけじゃないですよね。
高橋:おっしゃるとおり、水は生活のあらゆる場面で必要になります。水がなければ生きていくことさえ困難です。したがって、生活水を汲むために山道を往復しなければいけないような地域では、体力のある「水を汲む人」という役割が各家庭に必要になるんです。結果的に子どもたちが水汲みのために、学校に行って学ぶ機会を奪われてしまっている地域も多くあります。
水内:伝染病や飢餓だけでなく、教育など、さまざまな問題に繋がっているんですね・・・。
高橋さん:水を得るというのは、人間にとって最低限の暮らしの保障なので、人権問題でもあります。けれども現実には、行政や水道設備などの問題から水を得ることができず、それが多くの問題に繋がってしまっている。そんな状況においてもまだ「解決しなければならない問題」と捉えられてすらいない地域がたくさんあるんです。そういった現状を変えていくというのが、我々の活動の根幹となっています。
現地目線の支援で、次世代まで水を届ける
見市:ウォーターエイドは、イギリスで最初に設立されたんですよね。
高橋さん:はい。1981年にイギリスで設立された団体で、今は世界26か国で支援活動をしています。水とトイレ、衛生設備に焦点を当てた活動が中心です。具体的にはまず、きれいな水を得る施設を現地の人達と一緒につくっていくということがありますね。
水内:一緒にというと、現地の人々と協働してつくるんですね。
高橋さん:設備づくりだけではなく、地域によっては行政に働きかけるサポートも行います。たとえばバングラデシュの首都ダッカでは、中心部には水道が通っているのに、貧しい人たちが住むようなスラム地域には設備が整っていませんでした。そういった場合は、住民グループをバックアップし行政への主張をすることで、水道関連のインフラが整っていきます。
見市:とにかく設備をつくっていくという活動をイメージしていたので、目からウロコという感じです。地域によって、設備が整っていない理由は大きく変わってくるんですね。
高橋さん:地域や気候、さらにはその土地で暮らしている人々の性質や文化によって、設備や設置方法だけでなく、あらゆる条件が変わってきます。現地の人々を無視した一方的な支援では、設備としての機能を果たさないどころか管理の方法も伝わらず、結果的に設備が放棄された状態にもなりかねません。
水内:現地の人々が管理できないような設備づくりの手段を取ってしまうと、一時的な問題解決にしかならないですもんね。
高橋さん:その通りです。逆に現地の人々が参加すると、状況は大きく変わります。まず、彼ら自身の口から「おじいちゃんが一生懸命つくったんだぞ」と子どもたちに伝えてくれるんですね。そうすることで次の世代にも、親族のつくった大切なものだからしっかりと維持・管理をしていくという意識が芽生えていきます。孫の代まで大切に使ってもらえる設備づくりには、現地の人々の協力が欠かせないんです。