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社員との対談

第54回 JUON(樹恩) NETWORK×良品計画 都市と農山漁村の、循環とつながりを取り戻すために。 第54回 JUON(樹恩) NETWORK×良品計画 都市と農山漁村の、循環とつながりを取り戻すために。

社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第54回は、自然と向き合う知恵と技を学び伝える場を提供し、都市と農山漁村の循環と世代を超えた人々のつながりを取り戻す、JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)さんにお話をお聞きしました。

失われたつながりから生じる、農山漁村と都市の課題

多くの農山漁村が抱える、過疎化問題。都市部には残っていない自然が、守っていく人の不足によって、日を追う毎に失われつつあります。都市は食料や水、生活に必要な品々を生産する農山漁村がないと生きていけません。もちろん農山漁村も、生産物を消費する都市がなければ成り立ちません。互いが互いを支え合っていた昔ながらのくらしには、持続可能な未来に向けたヒントが眠っています。都市と農山漁村の循環を取り戻すべく日々尽力しているNPOのお話から、今一度、くらしの在り方について考えてみましょう。

プロフィール

JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)

JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)は、大学生協の呼びかけで1998年に設立されたNPO法人です。間伐材利用および障がい者の仕事づくりに貢献する「樹恩割り箸」や、森づくり活動を体験できる「森林の楽校(もりのがっこう)」、人手不足の農家と畑仕事をやってみたい人をつなぐ「田畑の楽校(はたけのがっこう)」など、さまざまな場づくりによって都市と農山漁村の循環と、世代をこえた人々のつながりを取り戻す活動を行っています。

JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)

  • 鹿住 貴之

    JUON NETWORK
    理事・事務局長

    1972年生まれ。学生時代に、とうきょう学生ボランティアふぉーらむ、早稲田大学学生ボランティアセンターの設立に参画し、代表を務める。98 年大学生協の呼びかけで設立された、都市と農山漁村を結ぶNPO法人JUON NETWORKに事務局スタッフとして参画。99年3月より事務局長。その他、NPO法人森づくりフォーラム常務理事、認定NPO法人日本NPOセンター 理事、杉並ボランティアセンター運営委員等様々な市民活動に携わっている。著書に「割り箸が地域と地球を救う」(創森社・共著)等。

  • 小松 将司

    良品計画
    カフェミール事業部 店舗運営担当

    1996年入社。無印良品仙台一番町配属後、1999年、無印良品松本パルコに店長として着任。その後、関東の数店舗で店長として勤務した後、本部宣伝販促室へ。2008年にカフェミール事業部へ異動し、飲食店運営に従事。Cafe&MealMUJI日比谷とCafeCafe&MealMUJI有楽町の店長を経て、2015年より現職。カフェミール24店舗を担当。食を通じ、無印良品の世界観を拡げるための取り組みや、各地域の名産品や料理を「素の食」というコンセプトに合わせ提供し、お客様にお伝えしていく事を主な業務としている。

  • 吉原 美保子

    良品計画
    業務改革部 施設設計課

    2002年入社、無印良品日吉東急店に配属。その後無印良品アトレ大井町、丸井吉祥寺店無印良品を経て(旧)無印良品下北沢の店長に就任。2009年店舗開発部施設設計課に配属。2012年産休取得、2014年丸井吉祥寺店無印良品にて復職し、2015年1月より現在の業務改革部施設設計課に配属。チャイルドケアを利用しながら、新店・改装店の店舗レイアウト、図面作成に携わる。北海道札幌市出身。趣味は読書、息子と遊ぶこと。

多方面に影響を与えながら進行し続ける過疎化問題

「熊野の棚田 田畑の楽校」
(和歌山県那智勝浦町)

小松:「限界集落」という言葉を耳にすることも多くなった昨今、過疎化問題も深刻なものになってきたように感じています。

鹿住さん:日本全体で人口減少に入ったと言われていますが、都市化・過疎化が進むことでさまざまな問題が起きています。祭りなどの文化継承の問題もそうですし、日本の森林を守る人も多く減ってきています。耕作放棄地の増加も根深いです。

吉原:人口の減少というのは、大きな問題ですよね。しかも、今なお進行し続けている。

鹿住さん:はい。たとえば2014年の木材自給率は約31%という結果が出ていますが、日本の国土面積の約67%が森林であり、活用されていない森林は数多く存在しています。また、耕作放棄地は日本全体で、埼玉県と同じぐらいの面積があるとも言われています。つまり、「農」や「林」はできても、産業としての「農業」や「林業」までは難しいことが多いんです。

小松:なるほど。産業を新たに発展させる担い手となる若い方々の力が、より一層求められますね。

鹿住さん:JUON NETWORKは大学生協の呼びかけからできた組織なので、学生との対話を頻繁に行いますが、「大学卒業後に地元に戻りたい!」という考えを持っている学生は少なくありません。ただ、実際に地元に戻るという結果に結びついた学生の数は、残念ながらあまり多くないのが現状です。

吉原:若い方が農山漁村で暮らしていくことを阻んでしまうのは、どういった要因が大きいのでしょうか。

鹿住さん:一番大きな要因は、やはり仕事がないという点ですね。産業が整っていない農山漁村では若者を雇用することが難しいため、生活が成り立たなくなってしまいます。地元に戻ることを検討はしたけれど、仕事がないため結果として都市圏に就職するという進路を選ぶ学生は多いです。

小松:働き口がないから生活が成り立たず、結果として過疎化が進んでいき、地域の産業が先細りになり続けていく。順を追って考えると、非常に根深い問題ですね。

鹿住さん:昔は農山漁村でつくった生産物を都市で消費するという、くらしの循環ができあがっていて、それが仕事にも結び付いていました。現代では、都市が海外の生産拠点などとつながっていることにより、農山漁村での雇用が減ってきています。都市と農山漁村のつながりと、そこから生じる循環を取り戻したいという想いが、私たちの活動の根幹になっています。

自然環境と人がつながることの大切さ

吉原:日本の森林では、人が手を入れることがとても大切になってきますよね。

鹿住さん:日本においては絶滅危惧種なども、原生的な自然環境で生息している生物よりも、実は里山環境に由来するもののほうが多いんですね。人が手を入れていくことで守られている自然というのは非常に大切で、人と自然との関わりを保つことはとても重要です。

小松:田舎暮らしに興味を持つ若者が増えるなど、最近では少し風向きが変わってきたようにも思います。

鹿住さん:社会的にも世間的にも、過疎化へ向けての危機感が高まってきましたね。参加される方についても、若い方以外にも退職された方が田舎で暮らすことを視野に入れるということも増えてきました。

吉原:テレビなどのメディアでも、そういった移住のお話は見かけるようになりました。農山漁村で人生を過ごしていくということの魅力は、どんどんさまざまな人に広まってきていますね。

鹿住さん:参加されている若い方と話していると特に強く感じるのですが、人間には本能的に自然を求めている部分があると思うんです。都市化が進み、自然環境と人との距離が広がってから、長い時間が経ちました。若い方の中には「土を見たことがありません」という参加者もいます。自然との触れあいが減ってきたからこそ、機会を求めている人が増えているのではないかな、と。

小松:JUON NETWORKさんの森づくり体験や援農体験などの活動は、土日の開催が中心とお聞きしました。平日は学校や仕事がある方でも、自分の中で「やりたい」と思ったときに参加できる。自然と接する機会を求めている人にとっては、とても丁度いい距離感ですね。

鹿住さん:はい。農山漁村との関わり方はいくつかあるのですが、無理のない自然との関わり方を知ってもらうことはとても大切です。今の生活をすぐに変えるようなことを強いるのではなく、むしろ生活に支障のない範囲で都市の人が農山漁村について「知る」場所をつくっていくことが、都市と農山漁村のつながりを取り戻すための最初のステップとして重要なことだと思います。