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社員との対談

第58回 green bird×良品計画 人の心に、「きれいな街」づくりを根付かせる。 第58回 green bird×良品計画 人の心に、「きれいな街」づくりを根付かせる。

社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第58回は、「きれいな街は人の心もきれいにする」をコンセプトに、日本全国のみならず世界各地にまでゴミ拾い活動の輪を広げている、green birdさんにお話をお聞きしました。

世界に誇れる日本文化のひとつ、「ゴミ拾い」!

ワールドカップにおいて、ゴミ拾いを行ってから帰った日本人サポーターが、海外メディアから多くの賞賛を受けました。今や、世界に誇れる日本の文化のひとつとなりつつあるのが、日本の「ゴミ拾い」。その文化を広げるために先頭に立っているNPOが、国内外でゴミ拾いを行う場づくりを進めているgreen birdです。「街を汚すことはカッコ悪いこと」という気持ちの広がりは人々に、街に、どのような影響を及ぼすのでしょうか。

プロフィール

green bird

green birdは、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに、国内外のさまざまな地域でゴミ拾いを展開している、原宿発のNPO法人です。80チーム(2016年9月)によるゴミ拾いの他、イベントにおけるそうじなど、さまざまなプロジェクトを通じて、ゴミ拾い活動と、それを生み出す「ゴミのポイ捨てカッコ悪いぜ」という意識を広げ続けています。

green bird

  • 横尾 俊成

    グリーンバード
    代表

    1981年、横浜市生まれ。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を、『日経カレッジカフェ』で「僕ら流・社会の変え方」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。

  • 田中 いずみ

    良品計画
    経理財務担当 経理課 課長代行

    1992年入社。店舗、販売部、2回の育児休暇を経て2006年経理に異動。開示資料作成や外為などを担当。管理部門こそ他部門との円滑なコミュニケーションが必要、と社内行事や部門間会議に積極的に参加している。プライベートでも同様にPTAや町内会、町を盛り上げる有志の集まりに積極的に関わっている。大学生と高校生の母。

  • 小川 恭平

    良品計画
    業務標準化委員会・人材育成委員会 課長

    2004年入社。仙台、埼玉の店舗で経験を積んだあと、宇都宮・渋谷・札幌で複数店舗をまとめるブロック店長を歴任。その後、2013年9月より2年間、公益財団法人日本生産性本部へ出向、日本のサービス産業の生産性向上に従事。2015年9月より、現在の業務標準化委員会・人材育成委員会課長として、全社視点での業務改革、キャリアパス構築に取り組んでいる。

ゴミのポイ捨てかっこ悪いぜ

ごみ拾い活動のようす

田中:green birdさんのゴミ拾い活動は、今や世界にまで広がっているとお聞きしました。そもそものご活動のきっかけというのは、どういったところからだったのでしょうか。

横尾さん:私たちの活動は表参道の「欅(けやき)会」という商店街の青年部のゴミ拾い活動から始まりました。当初は45リットルのゴミ袋20~30袋ほどのゴミが出ていて、それを1時間ほどかけて拾い、そして次の日にはまた同じ量のゴミが出るような状況でした。いくら片づけても毎日ゴミが出てしまうのでは、活動としてあまり合理的ではありませんよね。そこで、ゴミを捨てる人にアプローチして根本的なゴミの量を減らすことができないかと思いつき、今までのゴミ拾い活動と少し角度の違う「green bird」の活動が始まりました。

小川:確かにただ拾うだけでは、いたちごっこになってしまいますね。どういった手段でゴミを捨てる人にアプローチをしているのですか。

横尾さん:私たちが考えたのは2つです。1つは、ゴミ拾いをする人間が街中で目立つことで、ゴミを捨てにくい空気をつくるということ。そして、ゴミ拾いに参加したことのある人口を増やすということです。普段ポイ捨てをしているような人たちがゴミ拾いに参加するようになって、それが街中で目立っていけば、ポイ捨てゼロの街がつくれるのではないかなと考えました。そこで、こういう目立つ服を着た若者たちが各地で活動をするようになったのです。

田中:なるほど。各地のチームというのは、今どのぐらいの数があるのでしょうか。

横尾さん:日本国内では北海道から沖縄まで、海外でもパリやスリランカなどでの活動を合わせて、全部で80チームが活動しています。

小川:すごい広がりですね。各チームのルールというか、決まり事のようなものはあるのでしょうか。

横尾さん:私たちの活動で大切なのは、普段ゴミ拾いをしない人が参加できる活動であるということです。そのため、リーダーの選別やチーム内の雰囲気づくりには非常に力を入れています。逆に言うと、それ以外に固いルールはあまり定めていません。興味を持った人が気軽に参加できる空間を各地に設けることによって「ゴミのポイ捨てカッコ悪いぜ」という意識をできるだけ多くの人に広げていければと考えています。

ゴミ拾い文化を、世界に向けて発信

田中:そもそも「ゴミ拾い」というのは日本特有の文化なのでしょうか。

横尾さん:世界各国の事情すべてに明るいわけではないのですが、恐らくそうなのではないかなと思います。前回のワールドカップの際に、日本人サポーターが負けたにも関わらずスタジアムを掃除して帰ったことは大きな話題になりましたよね。「公共」の概念が日本は少し広いのだと思いますが、海外ですと沿道のゴミ拾いなどは行政などの管轄なんです。だから、街をきれいにするには、たとえばシンガポールのように行政が罰則を設けるなどの対策を取る必要があります。

小川:シンガポールはクリーンな街づくりに力を入れていて、ポイ捨てにもかなり厳しい罰則があると聞きますね。

横尾さん:はい。ガムのポイ捨てにも多額の罰金などが定められています。ところがそんなエコ先進国のシンガポールで「罰金までやってもまだ綺麗にはならない場所もあるのに、日本の街はどうしてあんなに綺麗なんだ」という議論があったりもするんです。 そういう意味では、日本のゴミ拾いは世界に誇れる文化と言ってもいいと思います。

田中:日本では銭湯などに見られるように、地域や仲間で何かを共有し、それを使用した後は次の人のために汚さないというような文化がたくさんあります。そういった意味では日本では「当たり前のモラル」と言っても遜色ないレベルで、公共の場をきれいにする意識が馴染んでいるのかもしれませんね。

横尾さん:私たちの活動は今、海外の各都市に広がり始めています。2020年、東京オリンピックが始まるまでにもっと海外の各地に広がることももちろんですし、競技が行われるスタジアムの周囲をきれいな状態に保つことや、観客や選手がゴミ拾いに参加するような空気感を構築していくことで、きれいな街づくりの一助となり、日本のきれいな街とゴミ拾い文化を世界に向けて発信できればより理想的だと考えています。

小川:海外での活動というのは、どのように広がっていったのですか。

横尾さん:元々は表参道チームで参加していた方がパリに転勤になって、パリの日本人コミュニティで活動できる何かを探していて、それでgreen birdのパリ支部をつくりたいという話になったのがきっかけでした。

田中:日本人の方々から始まったのですね。パリで暮らすフランス人の方々は参加されていないのでしょうか。

横尾さん:最初は「わざわざゴミを拾う」ということがあまり受け入れず、日本人中心の活動となっていました。ただ、活動が多くの人に知られるに従って、ゴミ拾いをボランティアが担うことによってその分ほかのインフラに税金を回すことができるという面などが注目され始めました。今ではほとんど現地のパリジャン・パリジェンヌ達が活動を担っています。メディアにも大きく取り上げられ、ひとつのムーブメントをつくることができたと感じています。