良品計画の人権尊重

人権デュー・ディリジェンス

良品計画グループは、2022年12月に制定した「良品計画 人権方針」に基づき、良品計画グループのビジネスに関わるバリューチェーン全体の全ステークホルダーの人権尊重に対して責任を果たしていきます。具体的には、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECD(経済協力開発機構)の「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に基づく6つの手順に従って、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、良品計画グループの企業活動及びサプライチェーンが社会に与えうる人権への負の影響の特定と評価を継続的に行い、その防止や軽減を適切な手段を講じて実施しています。

1.負の影響の特定・評価

2023年に、良品計画グループの事業領域である衣服・雑貨、生活雑貨、食品の生産・販売等を対象として、外部専門家の協力の下、国際的なガイドラインや工場監査結果・従業員エンゲージメント調査のモニタリング結果などを参考に、人権リスク発生の防止に取り組むべき人権課題を特定しました。特定された人権課題については優先順位を決定し、関連する部門ごとにロードマップを策定し、人権リスクの発生の防止・軽減に向けた取り組みをステークホルダーと共に実施していきます。今後は取り組みの有効性に対して継続的にモニタリングを行い、人権課題の特定・評価を適宜見直していきます。

人権課題の評価方法

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECD(経済協力開発機構)の「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を参考に、外部専門家の協力の下、深刻度と発生可能性を評価し、優先度の高い人権課題を特定しました。評価は、自社とサプライチェーンそれぞれに対して実施しました。

優先的に対応する主な人権課題

自社:

ハラスメント(カスタマーハラスメント等を含む)、差別、ジェンダーに関する人権、労働時間、救済へアクセスする権利

サプライチェーン:

労働安全衛生、強制労働、児童労働、差別、環境、労働時間、ジェンダーに関する人権、消費者の安全と知る権利、ハラスメント

2.負の影響の防止・軽減

サプライチェーンにおける人権

良品計画グループは、生産拠点や生産設備を所有しておらず、商品の生産も行っていません。商品の生産は日本をはじめとする世界各国・地域の生産パートナーに委託しています。一部の生産パートナーの工場は、ガバナンスの不備と法の支配の弱さから、国際機関やNGOのレポートで現代奴隷のリスクが高いとされる国・地域に所在しています。そのため良品計画は「生産パートナー行動規範」を通じて生産パートナーとともに人権尊重に取り組んでいくことがきわめて重要なことと考えています。

生産パートナーとの協働

良品計画グループは、相互信頼に基づく良好なパートナーシップを構築し、サプライチェーン全体にわたる公平で安全かつ健全な職場環境および自然環境に配慮する責任を果たすために、「生産パートナー行動規範」を制定しています。
「生産パートナー行動規範」に基づき、サプライチェーン全体の労働環境、人権尊重、環境配慮の方針を生産パートナーと共有し、遵守をお願いするとともに、人権尊重に向けた取り組みを進めています。本行動規範は、世界中の全ての生産委託工場に、日本語、英語、中国語で配布・説明を行っています。本行動規範を遵守し、誓約への署名を要請し、誓約いただける生産パートナーとのみ取引を行っています。また、「生産パートナー行動規範」において、良品計画グループの事前承認を得ていない工場への再委託を禁止し、良品計画グループから承認を得るよう義務づけています。

生産パートナーリスト

良品計画グループは、サプライチェーン全体において透明性を高めることは、全てのステークホルダーに対する責務だと考えています。生産パートナーとのエンゲージメントを強化するとともに適切な労働環境を実現するために、生産パートナーのリストを公開しています。

適切な発注

良品計画グループは、適切な手順による発注を行うことで、工場の労働環境や労働者の人権を守っています。例えば、過度な長時間労働につながる生産リードタイムを無視した納期設定や発注内容の頻繁な変更などを行わないよう、適切なスケジュールと数量を守った発注を行っています。

原料調達

主な一次原料(綿、ウール、ダウン、リネン、木材)は、可能な限り生産地がトレースできるものを使用しています。
また、オーガニックコットンの綿は、第三者機関が認定する有機認証を取得しています。この認証は、国際労働機関(ILO)が定めた労働条件を遵守していることを認証の条件とするものです。

外部団体との連携による労働環境の改善促進

良品計画グループは、2016年より、労働環境改善をめざす国際労働機関(ILO)と国際金融公社(IFC)の共同プログラムである「ベターワークプログラム(Better Work programme)」に参画しています。工場が所在する各国の労働基準の遵守状況を評価し、遵守が足りていない部分はその問題解決に向けた専門家による助言や訓練を行うサービスを活用することで、労働環境の改善を図っています。

良品計画は、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency、以下 JICA)が発展途上国で支援している一村一品運動に賛同し、JICAとの共同企画商品を展開しています。コミュニティ投資の一環として、地域の特産物を活かした商品を企画し、生産者の方に知識の共有やトレーニングなど技術面でのサポートを通じて、生産者の方々が自立してビジネスが行えるようになることを目指しています。
2010年からキルギスで取り組んでいる商品開発プロジェクトは、アジアの小売業として初めて国連開発計画 (UNDP) が主導する「ビジネス行動要請 (BCtA)」の取り組みとして承認されています。

良品計画グループは、これからもさまざまな外部団体との連携により、生産現場における人権や環境問題などの重要な取り組みを積極的に推進していきます。

従業員への教育・研修の実施

従業員に対する人権教育

良品計画は、「ビジネスと人権」「企業に求められる人権尊重」をテーマに、2023年に役員・従業員に向けたオンライン研修を実施しました。今後も、人権に関する研修等を定期的に行っていく予定です。また、日本国内では、管理職を対象としたハラスメント研修を行っています。研修では、ハラスメントの定義や事例、未然防止策、事案が発生したときの対応などについて教育を行っています。

サプライチェーンに関わる従業員を対象とした研修

良品計画は、サプライチェーンに関わる調達担当、生産管理担当、商品企画担当、品質担当の管理職とスタッフに対して、2019年度から研修を実施しています。研修の内容は、優先的に対応する人権課題や「生産パートナー行動規範」、当社の工場モニタリング結果に関するものです。特に、工場担当者とやり取りを行う従業員に対しては、研修への参加を義務付けています。

生産パートナーに対するトレーニング

良品計画グループは、生産パートナーに「生産パートナー行動規範」や人権尊重を正しく理解してもらうため、定期的にトレーニングを実施しています。

3.負の影響のモニタリング

工場のモニタリング

良品計画グループは、第三者機関による定期的な訪問監査を通じて、工場の「生産パートナー行動規範」遵守状況を確認しています。さらに、監査結果を工場にフィードバックし、指摘事項に関しては、工場のマネジメントに改善を求めるとともに、改善のための支援を行っています。良品計画は、工場が作成した改善レポートを元に、指摘事項を是正するだけでなく、原因となった特定の活動/手順、または活動/手順の欠如など根本原因を突き止め、再発防止につなげるために仕組みを変更する必要があるかどうかを工場とともに確認しています。万一、強制労働等の深刻な人権侵害が特定され、かつ良品計画が影響力を行使しても是正が期待できない場合には、当社グループの判断により、「生産パートナー行動規範」に基づいて、当該工場との取引関係の解消も選択肢として検討します。

従業員エンゲージメント調査

良品計画グループは、良品計画グループの従業員(正社員・嘱託社員・パートナー・アルバイトを含む)を対象としてエンゲージメント調査を実施しています。従業員の人権にも配慮し、多様性や平等性、心理的安全性等に関する調査項目を設定することで、職場環境における従業員の満足度および人権に対する課題把握を進めています。年1回調査を行い、結果をもとに改善に向けたアクションを実施しています。

4.情報開示

良品計画グループは、人権尊重の取り組みについて、良品計画のウェブサイトや「MUJI REPORT(統合レポート)」などのコミュニケーションを通じて、定期的に開示します。

各国の人権尊重に関する法規制への対応

良品計画グループは、グローバルに事業を展開していくうえで、各国で定められている労働環境や人権に関する法令を遵守しています。

英国現代奴隷法への対応

英国で施行されたModern Slavery Act 2015に基づき、「奴隷労働および人身取引」に対する良品計画グループの声明を公表しています。

カナダ「サプライチェーンの強制労働・児童労働との闘いに関する法律」への対応

カナダで施行されたFighting Against Forced Labour and Child Labour in Supply Chains Actに基づき、強制労働や児童労働を防止することを目的として、良品計画グループの事業及びそのサプライチェーンにおいて当該年度に行った取り組みに関するレポートを公表しています。