無印良人 無印良品 シエスタハコダテ コミュニティマネージャー 加瀬 紋子さん
■無印良品 シエスタハコダテについて
無印良品 シエスタハコダテは、2017年4月にオープンしました。函館市の中心市街地、函館のシンボルである五稜郭がある地域の大型店です。今回の改装により無印良品は、1階から3階までの3フロアから増床し、地下1階から3階までの4フロアで営業します。青果や惣菜、パンなど地域の協業先とともに北海道初の“食”の専門売場を展開していきます。
これまでに計27回開催した「函館つながる市」を通して、地域の方々とのつながりを深めてきました。今回のリニューアルオープンをきっかけに、地域の生産者や個人商店の商品を販売するコーナーを常設します。店舗の向かいには、地下道でつながる百貨店「丸井今井」があり、市内から買い物客が集まります。シエスタハコダテ4階には函館市の公共コミュニティ施設であるGスクエアがあり、地域の交流スペースとして学生や社会人の多くの方に利用されています。丸井今井やGスクエアとのつながりもより強固にしながら、中心市街地の活性化を図っていきます。
■市場のような賑わいのある売場
地下1階に"食"の専門売場を導入するにあたり、地域社会のコミュニティとしての役割をこれまで以上に発揮することを目指しています。地域の特産物や暮らし、食生活を考えながら、函館に暮らす方々が無印良品に望むものを想像し、品揃えを考えました。今、コロナ禍で外食が減り、より美味しいものを自宅でも楽しみたいと考えている方に新しい発見をしてもらえるよう、売場からの情報発信を毎日行うようにしていきます。 周辺の商店街の方々とも連携しながら、地域の人が、良いものを顔が見える距離感で会話をしながら売っていく、そんな市場のような賑わいとコミュニケ―ションを生む売場を実現できるようにしました。
■経営者として地元の役に立つことの選別
コミュニケーションを生む売場の実現には、地域の協業先との出店交渉や連携が必要不可欠でした。特に無印良品が単なる人助けをするわけではなく、地域の方々と協業していくことを経営者視点で考え、どのようにしたらお互いのメリットを活かしながら地域の役に立つ商いができるのかを考えました。工場や産地に入ること、そして生産者と交流しモノづくりをする姿勢や相手の都合も考えながら、将来のことも見据えて話をすることの難しさを改めて痛感しました。しかし、地元の館のオーナー様や地元で働く経営者の方々と何度も話を重ね、時間はかかりましたが、できることと出来ないことをひとつひとつクリアにし、解決に導くことができました。おいしいものを提供し、お客様に笑顔になってほしい。地元のためになることなら、協力したいという気持ちはみんな同じだと実感しました。
■コミュニティマネージャーになる事で得たもの
コミュニティマネージャーとして、館のオーナーと共に函館市や近隣の市町村、北海道の振興局の方々とつながりを作りながら、地域の活動内容や困りごとなど情報共有をしています。また地域で活動されている方や商店ともつながりながら、コロナ禍でもできるオンラインワークショップや改装後の産直市の催事、商品の仕入れ販売ができるように商談をしています。
無印良品のオリジナル商品の販売だけでなく、地域の産物を見つけるために、自分の足を使って、産地まで出向くことが、ものづくりや自分の知識にもなり、本当の意味での商品知識の勉強になっています。製造過程を理解し、生産者のものづくりへのこだわりを聞くことで、モノを大切にして売ろうと考え直すことができました。こういう仕事をもっとたくさんの店長やスタッフにも経験してほしいと考えています。
■「気づく、考える、やってみる。」の実践
今回の改装で気づいたことは、食品の取り扱いを拡大するにあたり、函館には食に係る仕事をしている方がたくさんいるということです。酪農や農業を始め、漁業も盛んな地域なので、昔ながらのしきたりもあり、土足で入り込むことは難しく、また、いきなり一緒に協業してほしいと言ってもなかなか信用はしてもらえません。そのためには何度も足を運び、話をしながら、その中で無印良品としての“食”をどう伝えていくことができるかを考えることが必要でした。でも諦めず、いろいろな人と話をし続けることで、自分の知りえなかったことも見えてきて、だんだん助けてくれるようになりました。今回の改装では、この函館で実際に使われていた漁具や農具を地元の漁師さんや農家さんからいただき、展示しています。一次産業の方の苦労を知り、その中で“食”ということを正しく考えるきっかけをつくっていきたいです。
そして函館周辺に暮らす方々の生活が豊かになるよう、まずは全館の売上11億円を目標にし、地域に根差した活動をしながら、お客様に喜ばれ、無印良品がなくてはならない存在となることを目指します。
■これから地域を巻き込む皆さんへ
まずはその地域がどんな歴史を辿ってきたのかを改めて勉強し、地域の人たちがどんな生活をして、どんな産業があるのかを知ること。そして、自分がその地で暮らし、今あるコミュニティの中で活動をしている人たちとつながり、地域のイベントやコミュニティに自ら参加してみる。ひとつつながりをつくることで、そこからまた新しいつながりができます。それを続けていくことで、たくさんのつながりをつくることができます。人と人がつながることで地域とつながることができ、そこから創造できることがたくさん見えてくると思います。
市役所や行政のコミュニティセンターに行くとたくさんイベントが計画されています。広報誌などにも目を通すといろんなことが発見できます。難しいことや大きな計画を考えるより、その地域のためになりそうな小さなことを見つけることが大切です。