食品部 商品開発担当部長 神宮 隆行さん 

昔は水道の蛇口をひねって、水を飲んでいたはずなのに私たちはいつから水を買うようになったのでしょうか。この小さな疑問が307店舗(6/29時点)に及ぶ給水機の設置拡大に繋がっています。今回は、水プロジェクトを担当した神宮さんに無印良品の食品におけるサステナブルな取り組みについてお話を聞きました。

■小さな気づきが社会の大きな取り組みに
 プラスチックごみ問題は現代社会が持つ重大課題の一つです。この課題に対して、無印良品として何かできないかと考えたときに店舗で売っている水に着目しました。日本では水道水を飲んでいた時代が長く、いつしか海外からミネラルウォーターが輸入され、水が販売されるようになりました。私たちもいつの間にか水道水の水を飲まなくなっていたと思います。しかし、もともと日本の水は安全性が高いので買う必要はありません。水道水を飲む習慣がまた広まればペットボトルのごみを減らすことが出来ると考え、給水サービスの提案を行いました。
 2021年4月からは「みずから、はじめよう」をキーワードに取り組みの拡大を進め、プロジェクトに賛同してくださる地方自治体や企業とともに取り組みを進めています。例えば、熊本市とは、連携協定を締結し、熊本市内への給水機設置を進めています。
 これからも、無印良品の店舗のみならず多くの地方自治体や企業に興味を持っていただき、給水機の設置箇所を増やすことはもちろん、一般家庭にも給水機を設置してもらえるような取り組みにつなげていきたいと考えています。

■考えるきっかけづくり
 商品のプラスチックパッケージの見直しを検討していた時に、ペットボトル飲料の素材を循環型原料にすることができないかと考えました。アルミ缶は、回収ルートが整備されていて、回収されたアルミ缶のリサイクル率は97.9%、さらに水平リサイクル率も66.9%と高く、繰り返しリサイクルできる素材だと知りました。自分達で新しい活用ルートを考えなくとも、水平リサイクルの仕組みが成り立っていることも決め手の一つとなりました。
 他にも、アルミ缶は遮光性の高さや透過性の低さからお茶の賞味期限を40日延ばすことができ、フードロスの削減を可能にしています。もちろん、ペットボトルのメリットもたくさんありますが、こういった理由から私たちはアルミ缶に環境面でのメリットを感じたためアルミ缶を選びました。
 無印良品がこういった取り組みを進める事で、環境問題に関心がなかった人も、何か考えるきっかけになればいいと思っています。

■無印良品のものづくり
 無印良品のものづくりの基本である「3つのわけ」は、地球環境や生産者に配慮した素材を選び、すべての工程において無駄を省く。そして、お客さまが本当に必要なものを必要なかたちで提供することだと思っています。流行に乗った商品開発ではなく、いつでもお客さま目線に立つ事でお客さまにとって本当に必要なものを提供できるように商品開発を進めています。
 また、「価値と価格のバランス」も大切にしています。「無印良品らしさ」というのは商品を作る上で当たり前であり、どんなに安くてもお客様が私たちに期待する商品価値でないと購入していただけません。なぜなら、お客様は無印良品に安さだけを求めていないからです。よって、無印良品の商品価値を保ちながら、それに応じた価格設定を行い、お客様の期待に応えられる商品開発が必要だと考えています。

■店舗でお客様とコミュニケーションをとる皆様へ
 基本的なことではありますが、POPや販促物に頼りすぎず、お客様とのコミュニケーションを楽しみながら、商品のわけや特長を伝えていただきたいです。お客様と会話すると新しい“気づき”が必ずあります。店舗で働く皆さんが無印良品の取り組みを広める伝達者となることで、必ずそれが社会に浸透していきます。小さな取り組みもいつか大きな取組に。無印良品の小さな一歩が社会のどこかで大きな一歩になります。
 一緒に自ら始めてみましょう。