企画デザイン室 福缶チーム

 今回は、今年10周年を迎える福缶を開発した企画デザイン室の福缶チームの皆さんに開発エピソードについてお話しを聞きました。

■福缶のはじまり
 2010年冬に「缶を使用した商品を作れないか」と考えたのが福缶販売の始まりです。その当時、Found MUJI企画も立ち上がり、世界各国だけではなく日本の各地にも良いものがないかと探していました。その際、郷土玩具を見つけ、縁起の良い由来のもの(縁起物)を缶にいれることで家庭や店舗に賑わいを出せないかと考えたことが福缶のはじまりです。
 企画を進める中で、東日本大震災が発生したことから、東北を応援できる企画に方向性を変え、最初の年は東北地方の縁起物を販売しました。徐々に関わる地域や協力してくださる作家の方を増やしています。

■福缶のコンセプト
 日本各地にある郷土玩具を、無印良品を通して紹介することで、日本に残る伝統文化の作り手や新しい活動の担い手を絶やさず、継承していくことを応援したいという思いがあります。実際に雑貨店などで郷土玩具を手に取るきっかけは、「可愛い」「面白い」など見た目の印象が多いかもしれません。しかし、その背景には作家の方々いらっしゃり、「こういう人が作ってるんだ!」と知ることでそのモノの見方も変わってきます。

 また、福缶に同封している縁起物について記載された小冊子は、お客様と作家の方が繋がる機会を作ろうと用意しています。これまで作家の方についてインターネットで調べようとしても情報があまりなく、お客様と作家の方が繋がることが出来ませんでした。自分達も郷土玩具を探すときには、昔の書籍やその土地をよく知る町役場から情報をいただくことが多いです。実際に福缶をご購入いただいた国内外のお客様からは、「福缶についた小冊子を持って縁起物旅行をした!」という声もありました。作家の方とお客様の繋がりが生まれ、段々と郷土玩具が身近な存在になっている事を実感し、嬉しいです。

■作家の方とのコミュニケーション
 福缶に入っている人形は、基本的に作家の方が一番入れたいものを、そのデザインのまま採用しています。人形が持つ色合いや形など、全ての要素にその土地ごとの個性が反映されています。口を挟んでせっかくの魅力が半減してしまわないよう気をつけています。私たちはあくまで裏方、黒子の存在です。おすすめの人形を教えてもらい、その中で自分たちが本当に魅力的に感じる、恣意的ではない自然体なものを選ぶようにしています。

 また、なるべく毎年新しい作家の方を発掘するようにしています。ただし、WEB上には情報がなかなかないので、民芸品について詳しく書いている本を頼りに47都道府県を自分の足で探し回る事が多いです。稀に電波の通らない山奥にお住まいの方もいるので、手書きの地図を頼りに未だ見たことがない縁起物を求めて工房を探索したこともあります。
 パソコンをお持ちでない作家の方とは、コミュニケーションをとることも難しいです。FAXではどのような色か伝えられなかったり、メールもできないので、手紙でやりとりをしています。都心のようにポストに投函したら次の日には届くという環境ではないので、やり取りに数日程かかることもあります。

■福缶10周年企画「CREATIVE IMAGINATION展」について
 郷土玩具は、歴史が深い上に、五穀豊穣や子供の成長を祈願するなど、様々な「祈り」が込められています。それはつまり、「流行っているから」「たくさん売れるから」というデータに基づいたマーケティングによるモノづくりではなく、日本の風土や暮らしの中から「想い」を具現化した作為の無いモノづくりと言えます。今回の企画展では、そのようなシンプルでピュアな原動力を、未来のモノづくりへ向けた可能性やヒントを発見する展覧会にしています。
 また、見た目の可愛らしさではなく、郷土玩具が日本の文化として広く長く続くようにつくり手の方の情報発信の場にしていきたいです。

・会期 2021年12月17日(金)-2022年2月20日(日)
・場所 無印良品 銀座 6階 ATELIER MUJI GINZA
・特設ページ https://atelier.muji.com/jp/exhibition/4120/

■福缶の今後の目標
 郷土玩具の販売を福缶だけに留めず、無印良品の店舗がある地域の郷土玩具を各店で販売し、つながる市などをつかって販路を拡大していきたいです。販路が増えることで、これからも日本の伝統文化である郷土玩具の継承に繋がると信じています。そして、作家の方にも同じ目線を持っていただき、文化が途絶えないようにお互いに良い関係を築いていきたいです。そのためにも、今後は企画デザイン室だけでなく、店舗スタッフの方とコミュニケーションを取り、各地の郷土玩具の新しい情報をぜひいただきたいです。