<直江津3周年のイベントのため集まった良品計画の各地域事業部メンバー>

3周年を迎えた無印良品 直江津に聞く 「つながりで地域を変えていく」仕掛けとは?

 良品計画は、「無印良品」の店舗が地域のコミュニティーセンターとなり地域の課題解決に寄与することを目指しています。2023年7月、全国の店舗の中でも早くから地域での活動を積極的に進めてきた「無印良品 直江津」が3周年を迎え、店舗を構える直江津ショッピングセンターで、7月20日から7月23日の4日間にわたり3周年記念イベントを開催しました。
 直江津の土地・食・人の魅力が詰まったさまざまな企画は、地元直江津の人々とのつながりによって実現しました。3年間にわたり地域とのつながりを生み出してきた仕掛け人の一人が、コミュニティマネージャーの古谷さんです。今回、直江津の3年間を振り返り、地域とつながる取り組みをどう重ねてきたかをお伺いしました。

 
地域の人を巻き込み、巻き込まれ、一緒にお店をつくってきた。

――今回の3周年のイベントにこめた想いを教えてください。

 4年前に直江津のプロジェクトが立ち上がったとき、出店先の直江津ショッピングセンターではキーテナントだった大型スーパーが撤退し、売場の約半分にシャッターが下りている状態でした。ここを再び地域の人々が集まる場所にし、店舗周辺の地域を活性化させることが私たちの目指す姿でした。
 最初の1年間、準備期間として毎週上越に通い、地域の方と交流の場を持ち、困りごとや課題を聞きました。ここをどんな店舗にしていきたいのか、どんな未来を作りたいのか。立ち上げメンバーでひたすら頭を絞りました。この時目指した「地域のくらしの真ん中になる」というテーマが、無印良品 直江津の原点であり、今回のイベントで実現したかったお店の風景です。

<3周年では新潟の30市町村が参画するイベントや、全国各地域の良品を集結したイベントを開催>

 
 
――この3年間、どのような取り組みを行ってきましたか?

 直江津の地域の方々と話し、課題を解決する取り組みを少しずつ増やしてきました。たとえばこのショッピングモールのオーナーである頸城(ルビ:くびき)自動車株式会社さんと連携した「移動販売バス」で、無印良品の商品を、店舗の無い中山間地域を中心に移動販売をしています。この取り組みは移動販売をきっかけに、住民の方々と会話し、困りごとを伺うことで、地域の課題解決の一助を担いたいという想いがありました。移動販売は、買い物への課題解決だけでなく、結果的に、移動販売バスを待つ時間が住民の方々同士の貴重な交流の場になり、助け合えるような関係性を改めて創る場にもなるなど、良い効果が生まれています。取り組みの規模や数よりも、地域の課題にいかに耳を傾け寄り添い、そこに紐づいた仕掛けをつくれるかが大切だと、実感しています。

<古谷さんと、店舗の運営や商いをリードする店長の安達信彦さん。二人三脚で直江津をつくっている。>

 
 
――今回のイベントは、米どころ新潟のご飯の美味しさを再発見できる「ごはんのおとも選手権」など、数多くの地域の事業者とのつながりによって成り立っています。ここまで多くの地域の人とのつながりができるまで、苦労されたことは何ですか。

 最初は地域の方々と距離を感じることもありましたが、一緒にイベントに出店したり、休みの日に一緒にタケノコを取りに行ったり、草むしりや清掃活動に参加したりするうちに、自然と人間同士の深い関係を築けるようになっていったように思います。
 いわゆる地域おこしというミッションの性質上、ぶつかる壁は多いですが、自分ひとりでは解決できないと思っているから、社内の方にも地域の方にも、自然と相談するようにしてきました。それが結果的に、巻き込んで・巻き込まれてといういい循環をつくっているのかなと思います。今回のイベントも、店舗のメンバーがすべての企画をプロデュース・運営していますし、店舗の運営を担う店長など、皆の奮闘のおかげで実現しました。地域の方々も多く参画してくれています。社内外のたくさんの人が、「無印良品 直江津」をつくっているという感覚がありますね。
 
 
店舗での体験の記憶がきっかけで、直江津の若者がここに帰ってきてほしい。

――地域とのつながりをつくるために、大切にしていることは何ですか。

 地域の人と、一緒に同じ時間を過ごすことでしょうか。私自身、仕事と私生活の境目はゆるやかで、地域のお店のご主人から朝7時に電話がかかってきて、「今度のイベントでこんなことをやりたいんだけど」と突然相談されることもあります。こういったフラットな関係性が大切だと思っています。私がここで取り組んでいることは、必ずしも社会課題の解決といった壮大なものではなくて、まずは「直江津のより良い未来のために、小さなきっかけをつくる」こと。そんな風に考えて、地域の方々と過ごしています。

<3周年記念イベントの企画・運営の中心を担った美濃口公尋さん(左)と五十嵐めぐみさん(右)。普段から地域に足を運び、住民の方々と交流を重ねている。>

 
 
――3周年という節目をむかえ、これからどんなことを目指していきますか?

 濃いファン・つながりを増やし、課題解決の選択肢をどんどん広げてきたいです。
 また、今回のイベントのメインターゲットでもあった子どもたちの、良い思い出をつくっていきたいですね。無印良品 直江津での景色や体験の記憶が、将来進学などで一度ここを離れても、大人になったときに「あの直江津で暮らしたい」と思ってもらえる理由の一つになればと思います。その上で、直江津から離れた土地で一人暮らしをするときにも、無印良品の商品を手に取ってもらえるきっかけにもなれば嬉しいですね。


■無印良品 直江津 3周年記念イベントの様子は、直江津店舗ブログからご覧になれます。
https://www.muji.com/jp/ja/shop/046607/articles/events-and-areainfo/events/1228486

<家族や友達とともにショッピングモールを訪れた楽しい暮らしの記憶が、未来の直江津の求心力になる>

 
 

古谷信人(ふるたに・のぶと)
営業本部 信越事業部 コミュニティマネージャー
2003年に良品計画入社。複数店舗で勤務した後、札幌、和歌山、広島などで計8店舗の店長を経験。19年6月に直江津プロジェクトに加わり、現在に至る。