募金券でつくれる未来

社員との対談

第1回 かものはしプロジェクト×良品計画 ~3月8日は国際女性の日~
途上国に、女の子として生まれ、生きることの現実。
第1回 かものはしプロジェクト×良品計画 ~3月8日は国際女性の日~ 途上国に、女の子として生まれ、生きることの現実。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第1回はカンボジアで児童買春問題に取り組む、かものはしプロジェクトさんにお話をおききしました。

国際女性の日について

国際女性の日(国際女性デー)は、1975年に国連が、女性に対する差別撤廃と、社会開発への完全かつ平等な参加に向けた環境整備に貢献することを各国に期待して定めた日です。
女性の地位向上は、2015年までに国際社会がその実現に取り組むべき目標として、ミレニアム開発目標(MDGs)※にもうたわれています。しかし、特に途上国では、女性として生まれてきたことで、より困難な人生を生きなくてはならない状況が続いています。

※ミレニアム開発目標(MDGs):2009年の国連ミレニアム・サミットにおいて合意され、貧困や飢餓の撲滅、HIV/エイズ等疾病の蔓延防止、初等教育の普及など、2015年までに国際社会が達成すべき8つの目標を掲げている。

プロフィール

かものはしプロジェクト

現共同代表の村田早耶香氏が学生時代に訪れたタイとカンボジアで児童買春に衝撃を受け、賛同する仲間を募って2002年に立ち上げる。以来、精力的に活動を続け、注目の国際NGOに成長。「強制的な商業的性的搾取を防止する活動を、持続的かつ発展的に行うことにより、全ての子どもたちが未来への希望を持って生きられる世界を実現させる」をミッションに、カンボジアで活動。

かものはしプロジェクト

  • 岩澤 美保さん

    かものはしプロジェクト
    サポーター事業部

    2006年、国際協力の中でも、女性のエンパワーメントに関する仕事がしたいと、インターネットで探していたところ、かものはしを発見し、入社。広報・企業協同キャンペーン等に従事する。

  • 武内 健治

    良品計画
    企画室長

    1996年良品計画入社。各地の店長やエリアマネージャー、売場開発担当、卸売担当などを経て、現職。2児の父親。

  • 永澤 芽ぶき

    良品計画
    品揃開発担当

    1995年良品計画入社。下北沢店勤務。その後、品質管理担当に配属。ISO事務局、販売本部、商品部を経て、現職。2児の母親。

児童買春の背景には、深刻な貧困問題があります

武内: 子ども、特に娘を持つ親の一人としては、児童買春と聞くだけでとても恐ろしく、尻込みしがちな内容です。

岩澤さん: はい、おっしゃるように、非常に深刻な問題です。児童買春は、国際労働機関(ILO)により「最悪の形態」の児童労働とされているもののひとつです。子どもたちは、時にドラッグ漬けにされて働かされ、さらにはHIV/AIDSに感染するなど、精神的・肉体的に深刻な被害を受けます。残念ながら今も世界では、数十万を超える子どもたちが、買春をさせられていると言われています。

永澤: やはり背景には貧しさがあるのだと思うのですが、子どもを売春させなくてはならないほど追い詰められるというのは、どのような状況なのでしょうか。

岩澤さん: 私たちの活動するカンボジアの、農村部では、収入が3,000円ほどあれば、なんとか一家が生活していけます。ただし、農作業をして自給していることが前提です。多くの家庭が、少しの現金収入と、農作物に頼ってぎりぎりの生活をしているので、農作物が不作だと、ただちに困窮してしまいます。あるいは、家族の誰かが病気になってしまうと、働き手を失ったり、治療費もありませんので、ほとんどの場合、牛などの家畜がいれば、まずはそれを売ります。それでお金が尽きれば、子どもを売る、ということになってしまうんです。

弱い立場の女性や子どもが、より多くの負担を強いられる現実・・・

武内: 現金収入を得る仕事をみつけるのは難しいのでしょうか。

岩澤さん: カンボジアの場合、ポルポト政権時に社会的インフラが壊滅状態になったため、一般の農民が外に安定的な仕事を得ることは、今も難しいです。貧しさゆえに学校にいけないため、スキルがつけられず、仕事につけない、貧しいまま・・・と悪循環に陥ってしまいます。日雇いはときどきあるのですが、日給が5ドルなら条件が良いといえますね。肉体労働でも、お母さんが働くケースが多いです。

武内: 力仕事でもですか!?お父さんはどうしているんですか?

岩澤さん: そうなんです。家事はもちろん、農作業から、日雇いの肉体労働まで行う女性もいます。私たちのプロジェクトに参加している女性もとても力持ちです。農作業でも、重い鍬(くわ)を担いだり、水や肥料を運んだり、重労働ですが、女性がやっています。そうやって、お母さんが稼いだお金をお父さんが使う・・・。カンボジアの小学校の教科書には、女性が働いて男性は座っているシーンが出てくるそうです。女性は男性に仕える立場なんですね。お母さんは働き手として必死で一家を支えているのに、お父さんはお酒を飲んでばかりとか、浮気をして家にいないなんてこともあるのです。

武内: 同じ男性として、父親として、相当バツの悪い状況になってきました・・・。

永澤: 仕事が得づらいのはわかりましたが、自分は働かずに、子どもに売春させて生活していくというのは、理解を超えています。子どもの売春によって、一家の生活が成り立つんですか。

岩澤さん: ケースバイケースですが、子どもが仲介人に売られる額は、1、2万円だと聞きました。日本では飲み会に2、3回行く額で、罪のない、かげないのない子どもが売られるんですよね。カンボジアではそれなりの額かもしれませんが、これでは生活は安定しません。すぐになくなってしまうお金です。カンボジアでも買春は金額に関わらず犯罪ですが、いかに罰を受けたとしても、犠牲となった子どもたちの人生を考えると、やるせないです。

永澤: 本当にそうですね。子どもたちの人生にとっては取り返しのつかないことです。そんなことを強いられたら、なんとか、エイズなどの病気を免れて、警察や、かものはしプロジェクトさんのようなNGOに保護されたとしても、心の傷だって簡単に癒えるわけがないがないですよね。

武内: 人間不信になりますよね。第一、親を恨むでしょう。

岩澤さん: 確かに人間不信になります。売春宿で、人前で泣くとぶたれたので、外に出ても泣かない子どももいます。子どもなのに、ずっと自分の感情を押し殺しているんです。「泣いてもいいんだよ」と安心して受け入れてもらえるまで、時間がかかります。ただ、私たちも最初は不思議でならなかったのですが、親を恨むことはあまりないようなんです。カンボジアでは、親に尽くす文化が根強く、自分を生んでくれた親のためなら何でもすべきという思想が浸透しているんです。自分が売春をやめたら親が困るからといって、助け出されることを拒む子どもすらいます。

武内: あまりにも辛いですね。自分の娘のことを重ね合わせて考えると、どう受け止めて良いかわかりません。