募金券でつくれる未来

社員との対談

第3回 WWFジャパン×良品計画 ~2011年は国際森林年~
森の資源を守ること、利用することを考える。
第3回 WWFジャパン×良品計画 ~2011年は国際森林年~ 森の資源を守ること、利用することを考える。

植林だけでは森は守れない

成川: 私は、文具の担当経験があり、現在ティッシュなどの家庭紙といわれる製品の開発をしています。無印良品では、使用する紙の基本を再生紙としています。ただし、製品に求められる機能の面から、バージンパルプを必要とする場合があります。その際は植林木を原料にしたものを選び、使っていただいた後のリサイクルを呼びかけるのが合理的な選択肢だと考えています。例えばノートの場合、今ではポピュラーになったゲルインキのボールペンには、目の粗い再生紙が向かないので、バージンパルプを使っています※。ティッシュなど、リサイクルができない製品には、再生紙を用います。

橋本さん: そうですね。再生紙のみでまわすのは無理ですし、用途によって選んでいくのは大切なことです。

高橋: 植林で森を増やす精神を否定するものではありませんが、植林の目的は、自然林を切らないことなのではないかと思います。そして、植林した木は、適切に利用する。

橋本さん: そこが広く社会に理解を促していく必要のある部分です。さすがにおふたりともお詳しいですね。植林は唯一の解決策ではありませんし、第一、単に植えていけば良いというものではありません。育てて、管理して、最終的には林業の"業"の字が示すように、伐採してお金に変えていかない限り循環していかないからです。私たちのような環境NGOは、とにかく木を切ってはいけないと主張しているように誤解されることがありますが、そんなことはありません。切ってはいけない木もあれば、適切な計画に基づき、切ったほうが良い木もあります。最も求められているのは持続可能な利用の仕方をすることだと知ってもらいたいです。

※正確にはバージンパルプのみの場合と、古紙にバージンパルプを混ぜて使用する場合があります。

値段だけではない価値観を共有するために

高橋: 私は家具の開発、製造にかかわっていますが、お客様に対する伝え方も大事だと思っています。無印良品では、一つひとつの家具に対して、「タモ」「ナラ」といったように、使用している木材の材種を明示しており、単に「木製」という表示はしません。材種のみで、良いか悪いか判断できるものではないのは承知していますが、毎日使う家具が、どんな木でできているかを知ってもらうことで、愛着のようなものを感じてもらうこともできるかもしれないと思うのです。また、環境的視点でいうと、無垢材の使用は必ずしも適さないことがありますから、無印良品でも全体では使用が少なくなっています。一方で、無垢材の持つ良さはもちろんあります。そのぬくもりを感じてもらい、「長く、大切に使おう」と思ってくれれば、そこにも価値があると考えます。

橋本さん: 実際に、お客様の受け止め方はどうなのでしょうか。

高橋: 関心は高いと思います。特に木材のトレーサビリティに関わるお問い合わせは、年々多くなっています。

橋本さん: そうですか。それは、私たちとしても明るいニュースです。課題はありますが、工夫することで、人間の経済活動としての林業と、自然の営みとは共存できると考えています。そのためには、適切に管理された森林から伐採された木材による製品を、生活者に選んでもらう必要があります。見た目には同じ木材なので、付加価値がつけにくく、コストというハードルとのせめぎ合いがあるのが辛いところと伺っています。無印良品のようなブランドで、買いたくなるような伝え方をしてもらえるとうれしいですね。

成川: 木材に限ったことではなく、安すぎるものにはそれなりの訳があります。コストを追求するのは大事なことに違いありませんが、ここだけを見ていたら、まっとうな商売はできないですよね。私たちが、自信を持っておすすめし、お客様にも自信を持って使ってもらう、良いサイクルにしたいです。

つくる人、売る人、買う人、それぞれに良い形を探る

橋本さん: 特定の国に限らず、様々な理由で森林の荒廃が進んでいます。近年、その反省や見直しの動きがあるものの、基本的には依然として大きな課題ですよね。繰り返しになりますが、植林の場合は、環境・社会に配慮した適切な場所に植えること、最終的には経済的にも持続可能にしていくことが肝心です。また、消費する立場からも、木材の履歴に関心を持ち、適切に管理されている森林に由来していることを確かめることが重要です。

高橋: その点で、日本はどうも諸外国に遅れをとっているように思います。私も担当として、木材の履歴調査の精度をできる限り高めていきながら、適切な材料を使用し、またそれを、お客様に、ライフスタイルの一環として捉え、取り入れてもらえるようにがんばります。

成川: 企業として出どころがわからない木材を使わないことはもちろんですが、最終製品を売る立場にいる私たちが、お客様に理解をしてもらう工夫、付加価値を感じてもらう工夫をしなくてはいけないですね。

対談を終えて

高橋: WWFさんのようなNGOとの対話は、本当に大事だと思います。今では、商品の開発、製造に環境の視点を入れることは欠かせなくなっています。商品づくりのためにも、また、お客様とコミュニケーションしていく上でも、少なくとも定期的に、専門性を持った人たちから情報を得て、UPデートしていく必要があるな、と改めて思いました。

成川: 今日のお話で、木材のフェアトレードを推進していくことと、あとは国内の森林について、木材をどう利用していくかを、私たちもこれまで以上に考えてみたいと思いました。NGOさんとこうして情報交換できる関係でいることが、企業にとってもメリットであると実感できました。

※役職等は対談当時のものです

WWF ジャパンは、2011年2月24日から5月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
561人の方から合計136,200円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。

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