募金券でつくれる未来

社員との対談

第6回 アサザ基金×良品計画 ~8月1日~7日は水の週間~
自然のめぐみ、大切な資源。「水」を改めて考える
第6回 アサザ基金×良品計画 ~8月1日~7日は水の週間~ 自然のめぐみ、大切な資源。「水」を改めて考える。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第6回は、地域ぐるみの活動で水辺の自然を守る、アサザ基金さんにお話をおききしました。

水の週間について

8月1日は「水の日」。そこからの一週間は「水の週間」です。水の大切さに改めて目を向ける日として政府が「水の日」を設けたのは30年以上前の1977年。欠かすことのできない水。当たり前に手に入らなくてはいけない水。日本では、水道をひねると出てくるし、ペットボトルで買うことも。けれど、そもそも水は自然のめぐみ。安全な水は、自然環境の豊かさなしには得ることができません。

プロフィール

アサザ基金

アサザ基金は、環境悪化で死の湖とも呼ばれた、日本で二番目に大きな湖、霞ヶ浦の自然を再生させようと、市民参加型の取り組みを展開してきた団体。黄色い可憐な花を咲かせる水草「アサザ」をシンボルに、1995年以来、霞ヶ浦北浦流域の多様な組織と連携して活動。現在は、流域の200を越える小学校、企業、一般市民を含む約20万人が、アサザの里親制度や湖岸植生帯の復元事業などに参加している。

アサザ基金

  • 飯島 博さん

    アサザ基金
    代表理事

    1956年長野県生まれ 茨城県在住。国内第2の湖、霞ケ浦の環境再生を目標に1995年から独自のアイデアで様々なビジネスモデルを提案。学校や企業、行政、農林水産業を結ぶネットワーク事業アサザプロジェクトを展開している。

  • 小森谷 大輔

    良品計画
    食品部 調味・飲料担当カテゴリーマネージャー

    外食産業を経て、2000年に良品計画入社。店舗スタッフ、店長を経験後、2007年から食品部調味飲料チームの在庫管理を担当。その後、飲料の商品開発を担当し、2009年6月より同カテゴリーマネージャーに就任。

  • 嶋崎 朝子

    良品計画
    生活雑貨部 H&B担当カテゴリーマネージャー

    株式会社西友を経て、1998年に入社。以来H&B開発担当、comKIOSK担当を経て2004年よりH&Bカテゴリーマネージャー。岩手の天然水を使用したスキンケアや、アロマディフューザーなどを開発。

水へのこだわりと日本人

飯島さん: 私は、霞ヶ浦をきれいにするための活動に始まり、長年、"水"と向き合い続けてきました。今日は、別の立場で水に関わっていらっしゃるおふたりと、お話ができるのを楽しみにして来ました。

小森谷: ありがとうございます。私と嶋崎はともに、無印良品の中でも"水"への関わりが深い仕事をしています。私は食品の担当なので飲料のミネラルウォーターに、嶋崎は生活雑貨の担当として、化粧品に使用する水に、それぞれにこだわりを持っています。飲料用のミネラルウォーターについては、硬度別に3種類用意していた時期を経て、現在は、日本人にとって、一番なじみやすい硬度で、しっかりとトレースできる安心な水を、一種類に絞って販売しています。

飯島さん: なるほど。水は水でもいろんな水があって、奥が深いでしょう。

小森谷: そうなんですよ。例えばお茶にした時。採水地によってお茶の出方が違ったり、お茶の種類によって向き不向きがあったり。いろいろ試すと本当に奥が深くて。「黒豆茶には福井の天然水が一番合うぞ!」とか。

嶋崎: 化粧品に使用する水についても、実は飲料用としても相当に品質の高い水を使用しています。特に取り扱いを始めた2005年頃は、日本では水を購入することが現在ほど一般的ではなく、こだわる方がさほど多くありませんでした。

飯島さん: ありがたいことに、日本人は長年、「水と空気はタダ」みたいな言い方ができるくらい、恵まれてきましたから、2005年頃であれば、確かに、そのあたりの関心は高くはなかったですよね。

嶋崎: 私たちとしては、こだわりの天然水の使用が、大手化粧品メーカーの製品との差別化の切り札のひとつでもあったのですが、化粧品なのにどうしてそこまで?という声もありました。だけど、化粧水などは、ほとんどが水でできているんですよ。ですから、いくら効能のある成分を用いたとしても、水にこだわらないと良い製品にならないと考えてきたんですね。方向性は間違っていなかったと思います。最近は、お客様のほうが、そのあたりに敏感になってきました。

飯島さん: そうですよね。少なくとも、飲み水であるとか、直接肌につけるような、健康や美容に関わるところの水の価値については、ここ十数年で、私たち日本人の認識がずいぶん変わりましたよね。

震災で知った水のありがたさ

小森谷: 別の意味合いでですが、水の価値といえば、東日本大震災の後は、はからずもそれを実感させられました。開発をして販売をする側としても、生活者のひとりとしても。私たちは幸いにも恵まれた環境にあり、常にきれいで安全な水にアクセスできた。そのため、水の大切さ、ありがたさというのを日ごろ改めて考える必要なく過ごしてきたんですよね。

嶋崎: 私たちがこれまで化粧品に使用してきた水は、岩手県釜石のものです。古い地層から出る超軟水で、製品づくりに最適な条件を満たす素晴らしい水なんです。釜石と言えば被災地ですから、震災の影響で供給が止まり、私たちの製品の製造も、しばらく無理だろうと覚悟するしかありませんでした。ふたを開けてみれば、先方の関係者の皆さんの、ものすごい努力によって驚くほど早く復旧して、本当にありがたかったです。水そのものへの感謝とともに、産地とのつながりの大切さが身にしみましたね。

飯島さん: そうですね。先ほど、「水と空気はタダ」の話をしましたが、実は、当たり前のものが当たり前にある、ということに勝るありがたさはないわけです。人間を含め、「生き物には水が必要」というと、飲み水を思い浮かべますけれど、お米を食べられるのも、野菜や、お肉やお魚を食べられるのも、煮炊き、洗濯、お風呂、すべて水のおかげです。化粧品も、ですね。ではその水はどこからくるの?と考えると、答えは、すべての命がつながりあっている世界に続いています。実際に、水はすべてをつなぎながら動いているんです。大地と空、異なる土地と土地、里山と海、そしてそこに命が生まれ、育まれていく。ですから私は、「どこの水にも物語がある」それから、「水のつながりは生き物の通り道」と、いつも言っているんです。自然界においては、全部が循環していますよね。水をたどっていくと、つながりの大切さをも教えられるんです。

20万人を巻き込み、地域ぐるみで湖を再生

霞ヶ浦でアサザの植付

小森谷: 知っていることのはずなのに、忘れていたのでしょうか。改めてそうしたお話をお聞きすると、ちょっと"目からウロコ"の気持ちです。飯島さんは、何がきっかけで、今のような活動をなさるようになったのですか。私の先入観で恐縮ですが、正直言って、環境団体の方に、こんな情緒のあるお話をお聞きできると思っていませんでした(笑)。

飯島さん: あはは、そうですか。私たちの原点である霞ヶ浦は、1970年代から汚染が進み、やがて死の湖とすら言われるほどになっていました。大量に発生したアオコという藻に覆われて、臭いもひどかった。水質汚濁の対策として莫大な予算が割かれ、専門家が入り、あれこれと施策がとられてきましたが、良くはならなかったんですね。この湖を再生したいと思った人は少なくなかったはずですが、少し諦めムードもあり・・・。そこで私は、なんとか活動を流域ぐるみにできないか、と考えたのです。そして、それまでの、「汚れを減らそう」「アオコをなんとかしよう」と頑張ることを改めたんです。そのような問題解決型ではなく、価値創造型に舵を切ろうと思いました。その際のシンボルになったのが、私たちの団体名にもなっているアサザです。アサザは、万葉集にも詠まれた、黄色い可憐な花を咲かせる水草です。アオコでいっぱいの霞ヶ浦に、絶滅寸前だったアサザの花をみつけて、「よし!これを増やしていこうじゃないか」と思ったんです。悪いものを排除するという思考を切り替え、良いものを増やすことに知恵をしぼってみたら、クリエイティブなアイデアが出てくるようになりました。

嶋崎: なんだか素敵なお話ですね。流域ぐるみで、というところは成功したのですか。

飯島さん: はい、行政もですが、地元のスーパーに菓子メーカー、小学生にいたるまで、アサザを増やして湖を蘇らせるというひとつの目的に対して、今は当事者がたくさんいます。現在までに、延べ20万人の市民、200校以上の小中学校が参加する、一大プロジェクトに成長しました。みんながそれぞれの関わり方をしているのですが、目的は共通している。いろんな人同士のつながりが生まれると、環境を良くするという目的だけではない価値も見出されるようになりましたね。