募金券でつくれる未来
社員との対談
第6回
アサザ基金×良品計画
~8月1日~7日は水の週間~
自然のめぐみ、大切な資源。「水」を改めて考える
新しいつながりは、ボーダーを取り払うことから生まれます
嶋崎: 結果だけお聞きすると、なんだか楽しそうですが、そう簡単な道のりではなかったですよね。多くの人を巻き込むための秘訣、みたいなものはありますか。
飯島さん: 境界―ボーダーを越えよう、取り払おう、という心意気のようなものでしょうか。ボーダーを、ひとつ、またひとつ、と、取り払う作業は、確かに骨が折れます。けれど、そのたびに、ボーダーなんて実は意味が無かったんだと気づかされます。だって、ボーダーがなくなった場所では必ず、新しいつながりを発見できるんです。
小森谷: ボーダーを取り払わずに、自分たちの領域の中だけで深めていくやり方もあったわけですよね。むしろそういう活動のほうが世の中には多いんじゃないですか。
飯島さん: そうしたやり方もできました。私も、そこでそれなりの評価を得ることもできたかもしれません。いわゆる有識者として、難しい場所に呼ばれて難しい話をしていたでしょう(笑)。けれど今は、子どもたち相手に河童だの龍だのキジムナーだのと話すことも多いんですよ。間違っていなかったと思いますし、自分としても悪くないですね。
スローガンでも、ムーブメントでもなく
小森谷: やっぱり、飯島さんは、従来の環境団体のイメージを変える方ですね。私たちの仕事においても、とても参考になりそうです。
嶋崎: 本当ですね。飯島さんとまったく別の形ではありますが、水に関わる仕事をしてきて思うことがあります。水が大切だということに、異論のある人はいないですよね。でも、その意識をどうやって、日々の暮らしの中に落とし込むことができるか、これは、商品開発をする私たちにも必要な視点だと思うんです。私たちとしては、スローガン的な「水を大切にしましょう」とは、異なるアプローチができれば良いな、と思います。
飯島さん: 私たちも、スローガンのような言葉や、あるいはイベント、従来の"運動"のような活動に留まりたくないですし、そこはブレークスルーしたいと思ってやってきました。嶋崎さんのおっしゃる通りで、水が大切だなんてことには、既に社会的コンセンサスがとれているわけです。ただ、理解することと、理解して受け入れることは違うんですよね。既に皆が理解していることを声高に叫ぶのではなく、どう受け入れてもらい、ライフスタイルに取り入れてもらうかです。ですから、この課題に関して、必要なのはムーブメントではありません。また、がまんとあきらめによって良くしていこうという環境の活動には無理があります。より豊かな価値観によって、それを成すことができるよう、提案なり体験の提供が必要なんだと思います。
嶋崎: なんとなく気になっていたことを明確な言葉にしてもらった感じです。でも、深いですねぇ。
小森谷: 自分としては、"水"って、あまりに大きなテーマなので、どこから考えていったら良いか、戸惑いもあります。
飯島さん: 私は、ビジョンや目標は、壮大で良い、むしろ壮大であるべきだと思っています。例えば、水道をひねると、山の湧き水のような美味しい水が出てくるようにしたい、とか、東京の川を清流にしたいとか。夢のあるほうが、みんなでポジティブにがんばれるでしょ。
小森谷: お人柄もですが、お話をお聞きしていると、全体にポジティブですよね。こちらもワクワクしてくるというか、やる気がわいてきました。
結局、「ふつうの水」が一番大事!
嶋崎: 冒頭、私たちの製品の中での水へのこだわりについてお話しましたね。もちろん、それも大切なので矛盾はしませんが、ずっとお話をお聞きしていてわいてきた思いがあります。私たちが、特別にこだわった水をブランドとして訴求し、付加価値について発信していくことが、結果としてふつうの水道水の否定になっていると残念だな、と。私たちは商品を売る側なので、PRポイントに関心が集中してしまいますが、一番欠かせない、「ふつうの水」が、実は最も大切に考えられなくてはいけないですよね。
小森谷: 震災の後、一時的にペットボトルのミネラルウォーターが不足しましたよね。供給する側も、中身はあるけどキャップがない、みたいなこともありました。嶋崎の言うように、日本でも「特別な水」への価値が見出され、追及されてきましたが、そろそろ「ふつうの水」への価値を改めて見直す時代なのかもしれません。水道から山の湧き水のような美味しい水が出てきたら、それは最高ですもんね。私は富山にいたことがあるのですが、富山の水道水はとても美味しかったんですよね。
嶋崎: あ、思い出しました。フランスって、ペットボトルのミネラルウォーターのメッカじゃないですか。以前、そのフランスで、ディジョンという町に行った時、レストランなどで「ふつうの水を飲みましょう。ディジョンの水は美味しいよ」というメッセージつきのお水が出てきたんです。ペットボトルへのアンチテーゼなんでしょうね。印象的でした。
飯島さん: いいですねぇ。そうなんですよ、こだわりを深めていけば、水道水にたどり着くんだと思います。東京の水道水が富山のようになるといいですよね。大事なポイントは、そこを目標にしていくと、もはや自分の安全安心だけが目的ではなくなるということです。水がきれいになることで、東京の水辺にトンボやホタルがかえってきたり、食べものが美味しくなったら素晴らしいじゃないですか。
小森谷: そうなると、私の担当している、ペットボトルのミネラルウォーターは、確実に売れなくなってしまいますね(笑)!
嶋崎: そうですねぇ(笑)。
小森谷: とは言え、私たちの役割は、ミネラルウォーターを売ることではありませんから。ペットボトルの水が必要なくなれば、別の提案をすればいいんです。
飯島さん: 先ほどからほめていただいていましたが、こちらこそ、企業の方々とこんなお話ができて良かったです。商品や、マーケティングを通してできることは、実はとても大きいので、おふたりのようなマインドの方々が、その中心にいることには、勇気づけられました!
対談を終えて
小森谷: 売れるもの追及することは、本当に必要とされているものをつくる上で、大切な要素ですから、ブレーキをかける必要はないと思います。でも、別の立場できちんと考えている人たちとのつながりがないと、自分の立ち位置がおかしくなってしまいますね。とてもよい機会をもらいました。今日の発見を整理して、活かしていこうと思います!
嶋崎: 新たな視点をもらい、考えを改めさせられる点もありました。特別な水を選ぶことでひとり一人が得られるメリットばかりをクローズアップさせるのは違うな、と。ふつうの水をふつうに大切にする、ふつうの水をいかに良くしていくか考える、今後はここもテーマに組み入れたいと思います。
※役職等は対談当時のものです
アサザ基金は、2011年5月24日から8月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
90人の方から合計15,100円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。