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社員との対談

第8回 セカンドハーベスト・ジャパン×良品計画 ~10月16日は世界食料デー~
足りない?余ってる?食料の不均衡を考える
第8回 セカンドハーベスト・ジャパン×良品計画 ~10月16日は世界食料デー~ 足りない?余ってる?食料の不均衡を考える。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第8回は、まだ食べられるのに廃棄にまわされる食品を集め、必要としている人たちに届ける「フードバンク」を日本で初めて実現した、セカンドハーベスト・ジャパンさんにお話をおききしました。

世界食料デーについて

10月16日は「世界食料デー」。食糧問題に対する意識を高めることを目的に、国連が制定した日です。世界では、10億もの人が飢餓に苦しんでいると言われています。一方で、日本をはじめとする先進国では、大量の食品が捨てられています。また、栄養不良で不健康な人も、肥満で不健康な人もいます。そんな不均衡は、途上国と先進国の間のみに起きていることではなく、日本の国内でも起きています。

プロフィール

セカンドハーベスト・ジャパン

セカンドハーベスト・ジャパンは、日本初のフードバンクとして、まだ十分に食べられるにもかかわらず廃棄の運命にある食品を引き取り、必要としている人に届けている。食品製造メーカーやスーパーなどの食品小売企業、農家や個人などから提供された食品を、児童養護施設、母子支援施設、障がい者施設のほか、生活困窮者などに無償で届けている。食料を循環させ、無駄な廃棄を減らすことにもつながり、環境の側面からも注目されている。

セカンドハーベスト・ジャパン

  • 菊地 章子さん

    セカンドハーベスト・ジャパン
    事務局・広報担当

    2007年夏、何気なく目を通した雑誌記事よりセカンドハーベスト・ジャパンを知り、興味を抱く。2008年12月にボランティア活動に初参加、多国籍な人たちとの交流がとにかく楽しい!と実感し、2009年3月より事務スタッフとして従事、10月頃より広報も担当。

  • 杉本 紗和子

    良品計画
    販売部 埼玉エリアマネージャー

    2000年に良品計画入社。2003年に新任店長としてジャスコ久御山に着任。以降、4店舗の店長を経験後、2010年より、現職の埼玉エリア・エリアマネージャーとして、埼玉県内23店舗のマネージメントを担当。

  • 原田 薫

    良品計画
    無印良品 丸広上尾店 店長

    2000年に自由が丘店パートナースタッフとして良品計画入社。2003年にSE社員、2006年に本社員となり、同年アトレ川越に新任店長として着任。2011年1月にLS移管店舗として丸広上尾店に着任。

日本初のフードバンクとして

理事長チャールズ・マクジルトン(左から2番目)とスタッフ

杉本: セカンドハーベスト・ジャパンさんは、日本で初めてフードバンク活動を始めたそうですが、代表の方はアメリカ人だとお聞きしました。

菊地さん: まだおいしく食べられるのに廃棄される運命の食品を集めて、必要としている人たちに提供するフードバンクは、欧米ではよく知られています。発祥地アメリカではすでに40年以上の歴史があるので、我々の代表にとっても、なじみの深い活動でした。来日して生活するうち、東京にいる路上生活者への炊き出し活動に参加するようになり、やがて外資系企業などに声をかけて食材を集めるようになったのが始まりです。

原田: 現在はどのくらいの規模で活動されているのでしょう。

菊地さん: 食品のメーカーさんを中心に、小売店など約670社の協力で、年間850トン程の食品を扱っています。農家や個人の方のご協力もあり、2000年にスタートして以来、拡大傾向です。

原田: すごいですね。外国の方が、日本で、日本人や地球環境を考えて始めてくれたことに、素直に感動しました。活動が共感を得て広がっていることもうれしく思います。

菊地さん: 確かにそうなのですが、私たちの代表のチャールズも、実はそれほど気負いはないんですよ。最初に協力してくれた外資系の企業さんも同じでした。それくらい、欧米ではメジャーな活動で、受け入れられやすかったんです。

杉本: 欧米でメジャーな活動が、日本にはそれまでなかったということは、日本ならではの事情があったということなのでしょうか。

菊地さん: 当初は、日本企業に協力を仰ぐのは難しかったですね。私たちが提供いただくのは、中身には何ら問題がないけれど、外箱や缶などの入れ物、またはラベルなどが傷ついている製品や、賞味期限が全体の1/3を切ってしまった製品などです。ですので、基本的に、市販されているものと安全性は変わりません。しかし、日本企業の場合、ブランド管理上もですし、さまざまな点ではるかに慎重で、アメリカ人のチャールズは、びっくりしたようです(笑)。

杉本: 良くも悪くも、わかる気がします(笑)。

原田: わかりますね!(笑)。

菊地さん: とは言え、最近は日本企業の協力もずいぶん増えまして、とても助かっています。最初のうちは、食品の提供先の施設などでも、無料で提供するということを怪しまれることがありましたから(笑)、要は信頼関係ですよね。フードバンクが普及していない日本で、私たちの活動が信頼してもらえるまでには時間がかかるのも仕方がなかったと思います。

世界の食料問題、日本の食料問題

杉本: 提供先にはどのようなところがあるのでしょうか。日本で、食料が足りていないというと、正直言って意外と言いますか・・・。恵まれていてありがたいことだとは思うのですが。

菊地さん: そうですよね。同じ疑問を持たれる方も多いと思います。私もこの活動に関わるまで同様でした。日本の貧困は、実は隠されているんだと、今は感じています。飢餓というと、アフリカやアジアの一部の国々だけの問題と思いがちですが、厚生労働省のデータでは、今や日本人の6人に1人が貧困ラインにあります。ひとり親家庭ではその割合が急増します。路上生活者の問題も深刻で、放っておけるものではありません。しかし、そこに至らないまでも、一日三食の食事や、栄養に事欠いている人が、実はもっと大勢いるのです。

杉本: 子どもの貧困率が上がっているとも聞きます。食べ物が十分にない子どものことを考えると、それだけで辛いですよね。心身の成長はもちろん、学校生活など、いろんなところに影響が出そうです。

菊地さん: 食事は、食べてお腹を満たし、栄養を摂取するだけではなく、人と人とをつなぎ、ぬくもりを伝えるものでもあります。いわゆる出来合いの食品でも、親や身近な大人がキッチンで温めてテーブルに出すだけで、子どもは食欲が出るものなんです。貧困家庭では、親にも余裕がなく、そうした時間を持ちにくい環境であるケースが多いです。もはや単に個々の家庭の問題として語れない社会問題ですよね。

原田: 認識不足でした。 なんと言っていいか・・・。日本の貧困は隠されているとおっしゃいましたが、国民性からして、困っている人も困っていると言いにくいのではないでしょうか。

菊地さん: それもありますね。私自身、この活動に携わるようになり、母子家庭や、母子支援施設、高齢者の福祉施設などをまわって、そうした人たちの存在の多さと、それまで知らなかった自分にショックを受けました。

杉本: セカンドハーベスト・ジャパンさんでは、数百トンもの食品を扱っているとのことですが、逆に言えば、それだけ無駄に廃棄されている食品があるということですよね。一方で余っていて、一方で足りていない・・・。

菊地さん: 日本の食品ロス(食べられるのに捨てられる食べ物)は、500~900万トンと言われています。私たちが扱う800トンは、数字だけ聞くとたくさんに思えますが、そのうちのほんのわずかにすぎません。世界に目を向けると、飢餓に苦しみ命を落とす人たちが絶えないのは、地球上の食料が足りていないのではなく、不均衡のためだと言われています。日本でも、世界でも、一方では余っていて、一方では切実に足りていないのです。