募金券でつくれる未来

社員との対談

第9回 子供地球基金×良品計画 ~11月20日は世界の子どもの日~
子どものしあわせと可能性を、子ども目線で考える。
第9回 子供地球基金×良品計画 ~11月20日は世界の子どもの日~ 子どものしあわせと可能性を、子ども目線で考える。

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第9回は、絵画を通じて、子どもが自分を表現したり、子どもがほかの子どもの支援の当事者になる活動をサポートしている、子供地球基金さんにお話しをおききしました。

世界の子どもの日について

1954年12月、国連総会がすべての加盟国に、子どもの日を制定するよう勧告しました。日本では5月5日の端午の節句をそれにあて、国民の祝日となっていますが、11月20日は、「子どもの権利宣言」(1959年)、「子どもの権利条約」(1989年)がそれぞれ採択された日であったため、この日が広く「世界の子どもの日」とされています。

プロフィール

子供地球基金

子供地球基金は、「Kids Helping Kids~子どもたちの絵で地球を塗り替えよう」を合言葉に、1988年に創立して以来、病気や戦争、災害などで心に傷を負った子どもたちのための活動を行っている。アートを用いた心のケアに力を入れており、子どもたちが自由に自分を表現する場としてのワークショップを世界中で開催。そこで描かれた絵は企業などにより活用され、生み出された収益がさらに子どもたちのために還元されている。

子供地球基金

  • 鳥居 晴美さん

    子供地球基金
    代表

    1985年息子のために幼稚園を設立。その中で始まった子供達のボランティア活動が1988年子供地球基金へと発展。世界中の子供達と絵を描くワークショップを行い表現する事の大切さを伝えている。世界11カ所にキッズアースホーム設立。

  • 岡田 正

    良品計画
    衣服・雑貨部 雑貨担当 MD開発

    2005年良品計画に入社し、衣服雑貨部雑貨 靴・バッグの商品開発担当に着任。入社後、第一弾の商品開発として、ダブルポケット四輪キャリーを発売し、日本国内ではNo.1の売上実績を記録。

  • 大伴 崇博

    良品計画
    衣服・雑貨 雑貨担当カテゴリーマネージャー

    2000年に良品計画入社し、店舗勤務を経験後、2004年衣服・雑貨部雑貨担当に配属され、2009年に雑貨担当カテゴリーマネジャーに就任し、現在に至る。1児の父親。

子どもにも、社会の一員としての役割を

大伴: 子供地球基金さんとの出会いは2008年に遡りますが、それまで、鳥居さんのような活動をしている方にお会いしたことがなかったので、衝撃的でした(笑)。もともと、息子さんのために幼稚園をつくったことが、現在の活動につながっているんですよね。

鳥居さん: はい。20数年前のことです。息子のために幼稚園を探しましたが、納得できるところがなかったんです。それならば自分でつくろうと決意しまして。

岡田: 「それならばつくってしまおう」というところが既にすごいですが(笑)、鳥居さんの理想とする幼稚園はどんなところだったのでしょうか。

鳥居さん: 子どもしか持ち得ないような発想、創造力を発揮して、伸ばすことのできるようなカリキュラムがあること。それから、こだわったのは、子どもにも社会に貢献する役割を持たせることでした。ですから、私がつくった幼稚園では、子どもたちが地域のゴミ拾いをしたり、老人ホームに歌いに行ったり・・・子どもが絵を描いて、ほかの子どもたちのサポートをする、という現在の活動も、その延長線上で生まれたアイデアでした。子供地球基金は、1988年に発足しましたから、それ以来、気がつけばずいぶん長くやってきました。

岡田: すごいな、と思うのは、病気や戦争、貧困、災害などで心に傷を負った子どもたちが、絵を描くという行為を通じて自己を表現する過程の中で、自分と向き合い、希望を見出していくこと、それと、彼らの描いた絵が、いろんな形で収益を生み、ほかの子どもたちを支える原資になるという、このふたつを同時に実現させる仕組みとして成立しているところです。

鳥居さん: 直接的なきっかけになったのは息子が幼稚園のときに描いた一枚の絵だったんです。環境問題について話をしていたときでした。息子が、「地球にもお誕生日をつくって、ぼくらからプレゼントをしようよ」と言ったんです。そう言って彼が描いた絵には、かわいい顔がついた地球に、やはり顔がついた太陽や月がプレゼントをあげているところが描かれていました。大きな文字で、「Happy Birthday Earth」という文字も書かれていたんですよ。子どもってすごいですよね。子どもの絵の素晴らしさは誰にでも伝わるし、発想力や自由なセンスなど子どもにしかない力は、きっと社会のために役立てることができると思いました。

大人は子どもの感性の妨げにならないように!

大伴: 私にも子どもがいますが、一般に子どもというのは、何かしてあげる対象であっても、誰かに何かをしてほしいと求められることはない存在ですよね。ところが、子供地球基金の活動を見ていると、子どもたちは、役割を与えられたことにやりがいを感じるようになっている。その点は大人と同じですよね。

岡田: 現代の子どもたちは与えられることには慣れているけれど、自らの発想で何かを生み出すようなことが苦手になってきていると聞きます。それって大人がそうしたんでしょうね・・・。

鳥居さん: そうですね。私は、大人が子どもにできるのは、子どもたちがもともと持っている豊かな感性をできるだけ邪魔しないことだと思っています。大人が「子どもはこういうものだ、こうあるべきだ」と考えてきたことが、子どもの感性を潰している側面は多々あると思いますよ。子どもの能力は大人が思っている以上に可能性に満ちています。むしろそれを失ってしまった大人よりも、ずっと宇宙に近いと思うくらいです。

大伴: 宇宙ですか・・・。

鳥居さん: そう、宇宙です。子どもの世界は宇宙とつながっていて、頭で考えるばかりの大人が思い込みで常識を押しつけさえしなければ、無限に広がっていくんだと思っています。純粋で真っ白、どの子もアーティストですよ。

岡田: 先ほどから気になっていたのですが、そんな鳥居さんの息子さんは、どんな風に成長なさっているのか聞いてもいいですか。

鳥居さん: アメリカでグラフィックアーティストをしています。結婚して、子どももいるんですよ。

岡田: 幼稚園のころ地球の絵を描いて鳥居さんを驚かせた息子さんが、グラフィックアーティストになったとは、まるでドラマのようですね。お母様がこうした仕事をなさっていることに対して、息子さんはどのように感じていたんでしょう。

鳥居さん: ひとつエピソードをご紹介しますね。私は息子を10歳からアメリカのボーディングスクール(寄宿制中等教育学校)に通わせていたのですが、私が子供地球基金の活動で内戦末期だったボスニアに赴いた際、呼び寄せて、いっしょに1ヶ月間を過ごしました。そのとき12歳でした。息子の経験のためにとの思いでしたが、到着後、さすがの私も後悔し始めました。大人でも平常心ではいられないような状況下で、まだ12歳の子どもを・・・と。ところがふたを開けてみると、息子は滞在中、現地の子どもたちと仲良くなり、かけがえのない時間を過ごしたんです。クロアチア語も話せるようになったんですよ。その時のことを、息子は「忘れられない思い出」と言って、後々ずっと感謝されました。今も、日本に来ると、子供地球基金の手伝いをしてくれたりしています。

大伴: 実は子どもは、大人が思っているよりずっと自立していて、純粋な生きる力を秘めているのかもしれませんね・・・。

鳥居さん: 本当に、そうだと思いますよ。大人が子どもの能力を決めつけたり、枠にはめたりしているんだと思います。

大伴: 鳥居さんと同じようなことはできないにしても、私も親として、子どもへの接し方を考え直してみようと思わされます。絵のことひとつとっても、つい、「太陽は上でしょ」「魚の顔はここについてないでしょ」なんて口出ししてました。反省です。

岡田: 実は私、小学二年生のときに太陽を黒く描いて先生に呼び出されたことがあるんです。それで、親にもすごく怒られたんですよ。こう見えて優等生だったので、すごくショックで、だから今でも覚えているんです(笑)。あのとき、先生か親が鳥居さんだったら、私も息子さんのようにアーティストになれていたかもしれませんよね。

鳥居さん: そうですよ。いいじゃないですか。太陽が黒くたって。

岡田: そうですよねぇ!