募金券でつくれる未来
社員との対談
第9回
子供地球基金×良品計画
~11月20日は世界の子どもの日~
子どものしあわせと可能性を、子ども目線で考える。
どんな境遇にあっても、希望を見つける力
大伴: 辛い境遇にある子どもたちにもたくさん出会ってきたと思いますが、先ほどからお話ししていただいた、感性や可能性という意味では、そうした子どもたちも同じだと思われますか。
鳥居さん: その通りですね。40か国以上の国で、いろいろな子どもたちに会いました。チェルノブイリの原発事故直後の無表情な子どもたち、アフリカの飢餓に苦しむ子どもたち・・・。カンボジアでは、エイズが原因で我慢のできない痛みを抱え、地面に頭をつけてコマのようにクルクルと回り続ける子どもに出会いました。内戦中のボスニアで、戦闘に巻き込まれて頭部の一部を失う重傷を負った子が、私に向かって一生懸命微笑み返そうとしたのも忘れられません。大人の作り出した不条理の、一番の犠牲になるのは子どもたちです。目の当たりにすることは、私たちにとっても胸が張り裂けそうな体験です。けれど、わかったのは、どんな子どもたちも、表現することで、自分に向き合い、理解して受け止めようとするのだということです。子どもたちの持つ力が偉大なのは、国や文化、境遇が異なっても変わりません。
岡田: 鳥居さんご自身の気持ちが折れそうになることはありませんか。
鳥居さん: もちろんあります。私は子どもたちが楽しく伸び伸びと絵を描ける社会を心から願っています。それは皆さんも同じでしょう?それなのにこの世界で戦争が止むことがありません。無念ですよね。ともすればこちらが絶望してしまうような状況の中で、光を与えてくれるのは、やっぱり、子どもたちの底知れぬ力でした。子どもは自らの力で希望を見つけるんですよ。その力に触れて来られたからこそ、ここまで続けて来ることができたのでしょうね。
大伴: 東日本大震災の被災地でも、活動を展開していらっしゃいますね。続けていると、子どもの絵に変化が起きてくると聞きました。
鳥居さん: 子どもたちは、置かれている状況をそのまま絵に表します。東日本大震災に限りませんが、抱えきれないほど辛い思いを体験をした子どもたちは、直後、暗い絵を描きます。しかし私たちは、絵を描くことそのものを含め、「もっとこうしたほうがいい」と押しつけることは決してしません。子どもの心がおもむくままに、表現するに任せます。心理学者のように、描かれた絵を分析することもしません。やがて子どもたちは、少しずつ、自ら描く絵を変化させていきます。絵を描くことで、自分の心に向き合って、理解し、受けとめ、光を手繰り寄せてゆくのです。
岡田: 子どもたちに対し、大人が指南するようなことを、あえてしないところが一貫していますね。
鳥居さん: どんな形であっても、子どもは自分を表現したい、私たちは、その一手段として、絵を描くことを提示して、彼らの前に画材を並べるだけです。
協働によって生まれた価値
岡田: 子供地球基金さんと出会って、共に何ができるかを考えたことは、個人的にも貴重な経験でした。というのも、自分を含めて、多くの社会人が、日々の仕事の忙しさに追われ、売上などのミッションに追われ、手一杯になってしまいます。でも、「人間として生まれたからには、手助けが必要な誰かの役に立ちたい」と考えることは特別なことではないと思うのです。私の場合、たまたま仕事の中で、こうした出会いがあったのは本当にラッキーでした。ちょっと心がきれいになったかもしれません(笑)。
鳥居さん: 良品計画さんと協働できたことは、私たちにとっても大きな財産になりました。子供地球基金の活動の支援者には、少なくない数の企業も含まれていますが、当初から外資系の高級ブランドが多かったんです。無印良品のように、ふつうの人が、ふつうに手に取れる商品に子どもたちの絵がプリントされて販売されるようになったときは、本当にうれしかったです。
大伴: 子どもの絵をプリントしたマイバッグの販売を開始したのは2008年のことでした。子供地球基金さんの子どもたちの絵のコレクションは膨大で、その中から5枚ほど選ばせてもらい商品化するわけですが、これがなかなか選べなくて(笑)、だって、どれも甲乙つけがたいんですよ。そうやって悩みながら選ぶので、当然思い入れも強くなります。
鳥居さん: そうですね。一枚一枚、個性があふれていますからね。
岡田: このマイバッグは、売り上げの一部を子供地球基金さんの寄付に充てることで、お客様にもごいっしょに活動のサポートに参加もしてもらうことができる商品ですが、販売を通して、子どもたちの絵をたくさんのお客様に見てもらう機会にもなっているのもうれしいです。
鳥居さん: お陰さまで最近は、子どもたちの絵を用いて商品開発をお考えになる企業がずいぶん増えました。売り上げの一部が寄付になる商品もあります。それは非常に喜ばしいことですが、中には徹底してビジネスライクな企業もあり、戸惑いを感じることがないと言えば嘘になります。その点、良品計画の皆さんには、心を感じるのです。ですから、迷いなく信頼することができます。その意味でも、素晴らしい出会いをいただいたと思っています。
大伴: 子どもの絵をプリントしたマイバッグの商品化を推進したのは前任者でした。私は、言ってみればたまたまその後担当になったとも言えます。でも、私が次の担当者に引き継ぐことになっても、きっちりバトンを渡せるよう努力しますし、その責任も感じています。今年から、布製マイバッグはラオスの工場で委託生産することになりました。現地工場で指導を行い、技術向上にも寄与しつつ、ラオスの雇用創出に貢献できればとの思いです。子供地球基金さんとの取り組みをスタートしてから3年、前任者がつけた道筋をしっかりと引き継ぎ、さらに伸ばしていけるよう、力を注ぎたいと思っています。
対談を終えて
大伴: 実はつい先日まで、うちの5歳の子どもが1週間入院していました。退院したときに絵を描きたがったんですよ。やっぱり、絵を描くということには何かあるんですね。子供地球基金さんのような活動に、仕事の中で出会い、マイバッグを通じての応援ができたり、いろんな気づきを与えられている自分は恵まれていると思います。仕事でも、自分の子どもをちゃんと育てることでも、お返しができるようにがんばります。
岡田: 子どもが生まれながらに持っている力の強さに、改めて驚かされる時間でした。マイバッグにプリントする絵を選ぶのはいつもとても迷うのですが、今日、お話をお聞きしたことで、子どもたちひとり一人のストーリーをより思い浮かべるようになって、これからはもっと迷ってしまうかもしれませんね。それから、小学二年生のときに描いて以来、気になっていた「黒い太陽」にも、ここへきてお墨付きをもらえてうれしかったです(笑)!
※役職等は対談当時のものです
子供地球基金は、2011年8月24日から11月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
92人の方から合計28,000円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。