募金券でつくれる未来
社員との対談
第23回 ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン×良品計画 力を合わせて住宅を建て、コミュニティを築く。
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第23回は、被災地や貧困国をはじめ世界中で、住宅を建てることにフォーカスした活動を展開するハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパンさんに、お話をおききしました。
- ボランティアが支える、コミュニティづくり
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1月17日は「防災とボランティアの日」、前後の15日~21日が「防災とボランティア週間」です。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を機に制定され、災害への備えを強化するとともに、ボランティアへの認識を深める機会にもなっています。ボランティアが生み出すことができるのは、単に労働力だけではありません。たくさんのボランティアが活躍するNGOのエピソードを通して、そのパワーに触れてみましょう。
プロフィール
ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン
ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン(以下ハビタット)は、住宅を建てることでコミュニティを築く自立支援型NGOとして、世界中で活動する団体です。活動に多くのボランティアが参加するのもハビタットの特徴です。東日本大震災の被災地でも、専門性を生かした活動を継続中です。
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中川 ミミさん
ハビタット・ジャパン
コミュニケーション事業部 マネージャーエチオピア生まれ。カリフォルニア州立大学卒業後、ハビタット・ジャパンに就職。ボランティア事業に従事するほか、アジア太平洋地域本部駐在などを経て、現在はハビタットの活動を広め、支援者を募る業務に注力している。
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松崎 寛士
良品計画
WEB事業部 オペレーション担当課長コンサルティング会社を経て、立教大学大学院にてMBA取得。2005年に良品計画へ入社後、ムジ・ネット(株)への出向を経て、2009年良品計画のe-マーケティング担当から、2010年より現職。ペイドメディア担当としてWEBプロモーションなどを企画。
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嵩 一成
良品計画
流通推進担当 業務管理課長小売企業での衣服販売、物流、環境CSRの業務を経て、2007年に良品計画へ入社。現在は流通推進担当に所属。店舗への商品供給、お客様への商品配送、物流改善が主な業務内容。個人的に環境NGOの活動にも参画。息子と娘、2児の父親。
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住宅を建てることでコミュニティを築く
松崎:ハビタットさんが住宅を建てる活動をしていると知った時、最初は、いわゆる箱物支援かな、と思いました。それを否定はしないのですが、個人的に少し疑問な部分もありました。けれど、実は少し違うようですね。
中川さん:そこが皆さんに私たちの活動をお伝えする上で、難しい点なんですよね。ハビタットは、住む場所に困っている人たちに、箱物としての住宅を提供する活動をしているわけではありません。人間らしい生活ができる場所を必要としている人が、地域住民や、世界中から集まってきたボランティアといっしょに、自ら汗を流して家を建てていくんです。この、住宅建築にフォーカスした活動には、コミュニティを築き、自立支援を後押しするためのエッセンスがつまっています。
嵩:そもそも、コストだけを考えると、おそらく、住宅をみんなで建てるより無償提供したほうが安いような気がします。でも、あえてそうしないのは、何か大切な理由があるのだろうと思いました。
中川さん:そうなんです。重要なポイントに気づいていただきました!おっしゃる通り、無償提供したほうが安上がりです。ではなぜ、そのような形をとるのかと言いますと・・・35年前の、ハビタットの活動のきっかけとなったエピソードを紹介させてください。アメリカの南部に住むある貧しい家族が、今にも崩れ落ちそうな家に暮らしていました。様子をずっと気にかけていた、後にハビタットを創立するフラー夫妻が、あるとき修繕を申し出て、自分たちの手で作業を始めたそうです。その一生懸命さを見た近所の人たちが、次第に一人、二人と集まってきて手伝い始めた。家の修繕が終わったころには、関わった人すべての間できずなが生まれていたんですね。家を直してもらった家族にとって感動的であったのは言うまでもないですし、地域にもやさしい空気が生まれて、共に誰かのために汗した地域の人たちにとってもまた、かけがえのない体験になったんです。
松崎:なるほど。そのような経緯があれば、住む人にとっても、特別な家になりますね。地域の人たちにしても、「協力し合えばできる」という一種の成功体験になりそうですし、地域への愛着にもつながりそうです。だから自立支援、コミュニティづくり、となるわけですね。
中川さん:まさにそうで、それがハビタットが家に着目する理由であり、目的です。
どこをターゲットにすれば、最大の効果が出せるかを考える
嵩:住宅を建築する際に、そこへ住むことになる"ホームパートナー"もいっしょに建築作業にかかわるところがいいですね。
中川さん:はい。パートナーとなる人には、いっしょにたくさんの時間を費やしてもらいます。費用負担もありますが、その地域で通常家を建てた場合の3分の1ほどです。また、返済可能なローンの計画を、経験豊富なスタッフと立てていきます。
嵩:支援を受けたい人はたくさんいると思うのですが、どのように選定していくのですか?
中川さん:少しのサポートで自立できる可能性のある人を見極めていきます。ですから、低所得であっても無利子無担保のローンが返済できる人たちが多いです。きちんとした住まいを構え、生活が安定すると、例えばその人が何か商売を始めて、それによって地域の経済が動いていく。10年後、20年後の波及力は、無視できない大きさになることもあります。
松崎:すごく納得できます。私は、グラミン銀行※のマイクロクレジットを初めて知った時、強く感銘を受けました。非営利でも、ビジネスの要素や知恵を取り入れて、支援のその先に良い循環を創り出すための戦略がある活動に、より魅力を感じます。誰を支援すれば、最も効果的に、地域に良い影響を波及させることにつながるか、ハビタットさんのその考え方にも非常に共感できます。
中川さん:貧しい国の貧しい地域で、最貧層の人たちが一番支援を必要としているというのはその通りだと思います。しかし、「何もかも」支援できない以上、どこに注目にすれば最大の効果が出せるか、つまりどのようにしたらより多くの人を支援できるかを考える必要があります。国際NGOには、食料支援、医療支援、教育支援など、さまざまな活動を専門に行う団体があり、その中でハビタットは、前述したような方針で、住宅建築を中心とした活動をしていると考えてもらえればと思います。
※1983年にバングラディシュで設立された、貧困層を対象に小口融資を行う銀行。それまで一般の銀行では融資を受けられなかった女性を中心とする人たちが、借りられた資金を元手に商売を行うなどし、子どもの就学率向上にもつながった。実績が世界的に認められ、創始者のムハマド・ユヌス氏とともに2006年にノーベル平和賞を受賞する。
コミュニティが形成され、ひとつの町ができた例も
嵩:これまでのお話で、ハビタットさんが個々の住宅建築を通じてコミュニティづくりを支援していることがわかってきました。コミュニティづくりとなると、国や地域によって異なる事情があって、受け入れる側も一様ではないと思います。どのように計画をデザインしていくのでしょうか。
中川さん:おふたりとも、視点がするどいですね!まさにそうなんです。支援対象地域の文化はそれぞれ異なります。外から来た私たちの、一方的な思い込みでコミュニティづくりを進めることはできません。ですから、基本的には地元のグループと協働します。私たちの描くプランが、地元のニーズや、人々の心情にマッチするかどうかは、現地の人たちに判断してもらっています。
嵩:すごく勉強になります。地域の人たちに参画してもらうのは大事なことですよね。
中川さん:とても大事ですね。住宅そのものが、その地域の文化や気候、景観に馴染むかも考えますよ。コストのこともあり、素材やデザインには細心の注意が必要ですが、住む人にも地域の人にも大切にしてもらえるものを作らないといけません。
松崎:これまでハビタットさんが手がけたプロジェクトで、実際にコミュニティが形成された成功例を教えてもらえますか。
中川さん:規模が大きめのものですと、フィリピンのマニラにある貧困地域での例があります。地方から出てきた人たちが集まっている地域なのですが、埋め立て地で、電気や水道も通っていない場所でした。5世帯が住める、日本でいう長屋のような住宅を建築しました。ほとんどがボランティアの手で、約1週間で1棟完成します。石膏ボードとアルミのフレームを資材に用いたシンプルな住宅ですが、インフラの整備も順次していきました。
松崎:そこにどれくらいの人が住んでいるのですか?
中川さん:2005年に活動を開始して、1,000世帯ほどハビタットで支援をしています。現在その地域には90,000人もの人が暮らしています。道路も公園もあります。ひとつの町ですね。
嵩:それはすごいですね!本当に町ができちゃった・・・。
中川さん:町になると、子どもたちの通う学校も必要になるので、それは教育支援を専門とする、別のNGOに運営してもらいました。
松崎:横の連携までも!素晴らしいです。私は、前職の仕事の関係で、マニラに3年ほど住んでいたことがあるので、その町を是非見に行ってみたいです。