募金券でつくれる未来
社員との対談
第23回 ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン×良品計画 力を合わせて住宅を建て、コミュニティを築く。
東日本大震災の被災地で、現在もボランティアが活躍中
嵩:ハビタットさんのボランティアに興味が沸いてきたのですが、建築に携わるボランティアの人たちは、皆さん「腕に覚えがある」人たちなのでしょうか。
中川さん:いえいえ、専門性をお持ちの方はごく一部です。一番多いのは学生さんですし。もちろん建築作業の指導などはプロにお願いしていますが、一般の方にできる作業もたくさんあるんですよ。
松崎:やりがいがあるでしょうね。
嵩:東日本大震災の被災地でも、活動展開されていますよね。震災のすぐ後、ハビタットさんのではないですが、ボランティアに申し込もうとしました。ところが、定員オーバーだったため実現できていないのです。それもあって、個人的にも関心があります。
中川さん:はい、是非!東北でも活動を継続中です。震災から1年半以上過ぎると、ボランティアを受け入れていない団体も多いのですが、ハビタットは、今もご協力いただいています。
嵩:そうですか!現在はどのようなことをされているのでしょうか。
中川さん:被災住宅の修繕と、仮設住宅支援や公民館の修繕といった、コミュニティ再生支援活動が中心です。私たちは、宮城の石巻、そして岩手の大船渡や陸前高田という、津波被害の大きかった地域に入って、当初、街を埋め尽くしていたがれきの撤去から始め、宮城県の女川や東松島では、仮設住宅やみなし仮設、在宅被災者も対象に物資の提供もしました。あのような大きな災害の後は、しばらく混乱が続きます。すぐに「家を再建したい」というニーズは、なかなか出てきません。しかし、ここへきて徐々に、住んでいた家に戻りたいと希望する住民の方が増えてきたので、専門性をもつ組織として、私たちの本当の出番がきました。ボランティアとして、皆さんにお手伝いいただけることもまだたくさんあります。
プロボノもあり!ボランティアの力を活かす仕組みも
松崎:流出した家の再建もされるのですか?
中川さん:そこについては、組織内で検討を重ねた結果、見送ることにしました。1NGOとして着手したとして、どれだけ多くの方に支援ができるだろうかと考えた末の結論です。
松崎:先ほどのお話と通じる、最も効果的な支援を検討されたということですね。
中川さん:そうです。今回、私たちは、直せば再び住むことのできる家の修繕に注力しようと決めました。そして、希望者を申込制によって募りました。住宅を一軒一軒まわって、チラシをポストに入れたり、スーパーなどに置かせてもらったりして告知。申し込みのあった方の、被災状況、家族構成、仕事の状況などを考慮しながら、海外で行うのとほぼ同じプロセスで、支援対象を決定していきました。
松崎:被災された方も、住まいにはそれぞれに思いがあるでしょうし、支援とはいえ信頼関係がないと難しいですから。
中川さん:安心して、納得してお任せいただくのは最低条件です。修繕の費用の一部を上限50万円まで支援、あとはホームパートナーさんの負担になります。ハビタットは、コンサルティングを行って、どのようなプランで修繕を行うか、ホームパートナーさんといっしょに考えていきます。ローンを組まれたりもするので、建築関係者をはじめ、ファイナンシャルプランナーや弁護士の方にも協力してもらい、各家庭の事情に応じて個別に対応しています。
嵩:そのような専門家もボランティアで?
中川さん:はい。いわゆるプロボノ※です。
嵩:そつなく考えられていてとても感心します。きちんと役割を与えられて、役に立つ実感もある。だからこそ、ボランティアで協力する人たちも絶えないのだと思います。素晴らしいです。
中川さん:ありがとうございます。35年以上、世界中で行ってきた活動で得たノウハウです。どういう形でボランティアの力を発揮してもらうのが良いのかを、専門に考えるスタッフも、現地に常駐しているんです。
※社会人が、職業上持っている専門性を活かし、知識やノウハウ、スキルを提供して社会貢献を行うこと。
被災地の住宅に太陽光発電を設置。家計と防災を応援
松崎:国や地域、時代にも合わせて試行錯誤されてきたようですね。立派です。
中川さん:日本での復興支援の一環としては、住宅修繕の延長線上で、新しく始めたこともあります。被災地の住宅に太陽光発電設備を設置することです。
松崎:太陽光発電!
中川さん:いよいよ復興フェーズに入ってきて、生活を再開したいけれど、収入が・・・という方が少なくありません。会社が流されたり、廃業に追い込まれたりで、仕事を失った方も多いので、恒久的な経済支援の一助になればと考えました。
松崎:そうですよね。光熱費をまかなえますし、再生エネルギーの買取制度を利用して収入にもなりますし。
中川さん:それからもう一点、被災地に、災害時にも電気のある安心感をつくりたかったんです。
嵩:確かに。防災の取り組みとしても、意味がありますね。
中川さん:これはハビタットとしても新しい取り組みで、2013年の春までに、まずは15世帯を目標にしたモデルプランとして実行します。その後は、災害時の避難所になる場所や、公民館などの公共施設にも広げて、より多くの人を支援していきたいと考えています。
松崎:新しい取り組みとはいえ、これまでの経験で作り上げてきたものがあってこそ生まれる発想ですよね。いやぁ、感心しました!
対談を終えて
松崎:私は、良品計画の「商いを通して社会に貢献できることを目指す」という考え方が好きです。今日、ハビタットさんとお話して、ハビタットさんの自立する人を増やすスキームが素晴らしいと思いました。自分自身が自立することによって、商い(仕事)を通して、また、それ以外でもボランティアなどの形で社会に貢献できるのが理想だと考えているからです。仕事でも、ボランティアでも、いろいろな人と関わり、つながりによって成し遂げることには感動も覚えます。それを実現しているハビタットさんとのお話には共感できる点が満載でした。
嵩:国際NGOの活動に興味があるので、今日の対談は楽しみにしていました。経済国に暮らす私たちは、国と国との格差が自分たちの経済活動を支えていることを、事実として認めなければならないと思っています。企業が事業を拡大するとき、自らの利益を上げることだけでなく、地球の裏側にある問題の解決策もまた、テーマとして織り込まなくてはいけないと思っています。少なくとも、自分はそうした意識のある企業で働きたいです。対談中にも触れましたが、これをご縁にハビタットさんのボランティア活動への参加を検討したいです。
※役職等は対談当時のものです
ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパンは、2012年11月26日から2013年2月24日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
324人の方から合計56,050円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。