募金券でつくれる未来

社員との対談

第33回 ふくしまインドアパーク×良品計画 福島を通して考える、子供の"遊び"の大切さ。 第33回 ふくしまインドアパーク×良品計画 福島を通して考える、子供の

募金券 寄付先団体の皆さんの活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第33回は、東日本大震災の後、外で遊ぶ機会が減った福島の子どもたちに、安心して思いきり遊べる屋内公園を提供する、ふくしまインドアパークさんにお話をお聞きしました。

子育てを取り巻く問題を、福島から考える

子どもたちにとって遊びは、成長に欠かせない、大切な時間です。遊びを通して子どもたちは、好奇心を満たし、想像力を伸ばし、コミュニケーション力を養いながら、自分らしさを知るようになります。東日本大震災の後、福島では、屋外で思いきり遊ぶことが減り、体力の低下や肥満などを心配される子どもも増えました。それは、子育てする親御さんにとっても、大きなストレスとなっています。福島で起きていることを丁寧に見てみると、私たちみんなに関わる問題が浮き彫りになってきます。地域と共に活動するNPOといっしょに考えてみましょう。

プロフィール

ふくしまインドアパーク

ふくしまインドアパークは、東日本大震災の後、福島の、屋外でのびのびと遊ぶ機会が減った子どもたちのために、安心して思いきり遊べる屋内公園です。郡山と南相馬に開設され、さまざまなイベントを用意して、子どもと家族に多様な体験を提供。子育てを取り巻く社会問題の解決に取り組む認定NPO法人フローレンスを運営母体とする民間の施設で、寄付を中心に、多くの人の協力で成り立っています。

ふくしまインドアパーク

  • 今給黎 辰郎さん

    フローレンス
    被災地支援事業部マネージャー

    2010年7月、10年勤務した外資系IT企業からフローレンスに転職。中央区勝どきのマンションの共用スペースを利用した、子育て支援施設「グロースリンクかちどき」の立ち上げに携わる。その後、福島の子どもたちの為の屋内公園「ふくしまインドアパーク」プロジェクトのマネージャーとして現職に至る。9歳と6歳の2児の父。

  • 榊原 一郎

    良品計画
    生活雑貨部
    ステーショナリー担当
    カテゴリマネージャー

    1997年入社。3年目に甲府山交の店長に着任。その後、販売部エリアスタッフを経て、再び2つの大型店での店長を経験。2007年より業務改革部店舗サポート課長として、スタッフ教育、店頭業務の標準化に携わる。生活雑貨部では、MD計画担当課長を経て、2011年より現職。

  • 中田 陽

    良品計画
    流通推進担当 業務管理課

    1996年入社。横浜ランドマーク店に配属後、数店舗を経て、3年目に本厚木店店長に着任。その後、数店舗での店長業務、生活雑貨部、業務改革部を経験後、2012年より現職。主な業務内容は店舗への商品供給、お客様への商品配送、物流改善など。4歳と6ヶ月の2児の父。趣味はサッカー。

従来のミッションの延長線上に、福島での活動が

首都圏で病児保育をはじめとする保育事業をおこなっているフローレンス

中田:フローレンスさんは、震災を機にふくしまインドアパークを開設される以前から、子どもに関わるいろいろな活動をされていたのですね。

今給黎さん:はい。フローレンスは2005年より訪問型の病児保育サービスの提供を始めました。このサービスは現在、都内を中心に約3,000人の会員様にご利用されていて、象徴的な活動になっています。その後、待機児童問題に対応して少人数制の保育園をつくったり、都会の孤独な子育ての問題に対応したコミュニティづくりに関わるなど、複数の事業を通して子育てを取り巻く社会問題の解決に取り組んできました。

榊原:なるほど。では、ふくしまインドアパークも、その、"子育てを取り巻く社会問題の解決"という団体としてのミッションの延長線上で始められたということですか。

今給黎さん:そうなんです。直接的な縁としては、フローレンス代表の駒崎の妻が、福島県の須賀川市の出身だったことです。3.11の地震で実家の家屋に大きな被害があり、首都圏にある駒崎の家に避難することになって、数ヶ月生活を共にしたんです。フローレンスではその何年も前から子育てに関わる活動を行ってきましたから、それを機に、被災地の子どもたちの状況がさらに気になるようになりました。実際に福島の人たちにヒアリングしてみると、原発事故の後の放射線量の問題で、ひたすら家にこもらざるをえない子どもたちがたくさんいました。それは子どもたちのみならず、親御さんにも大変なストレスだし、地域社会にとって大きな問題です。これはなんとかしなくては、ということで、屋内公園をつくろうということになりました。

ハードよりソフトに力を入れる

中田:ひとつめのインドアパークを郡山にオープンされたのが2011年の12月でしたね。

今給黎さん:はい。早かったですね、と言ってくれる人もいるのですが、自分たちとしては、つくると決めてから、ずいぶんかかってしまったという思いです。震災後の混乱もあるのですが、場所探しが一筋縄でいかなくて・・・。行政に掛け合っても、諸々の手続きが複雑で、従っていたらオープンに1年も2年もかかってしまいそうでした。最終的には民間企業の方のご協力を得て、オープンにこぎつけることができました。

榊原:反響はどうでしたか。

今給黎さん:2013年6月までに2万人の利用がありました。やはり求められていたのだと思います。私たちは2012年8月に南相馬にもインドアパークを開設していますが、福島には現在までに、フローレンス以外が運営する屋内公園が複数できていますし、ニーズは今もありますね。

中田:私にも小さな子どもがいるので、ショッピングセンターの中にあるような遊び場は知っているのですが、そのようなイメージでしょうか。

今給黎さん:郡山園は40坪(約132m2)と屋内公園としては小規模です。置いている遊具は、エア遊具やままごとセット、木のおもちゃ、プラレール、絵本といったもので、一つひとつみんなで相談しながら選んできました。周辺には無料で利用できる大規模な屋内公園もあるんですが、ひと月500円の会費を払って長く通って来るご家族がたくさんいます。

中田:何か魅力があるんですよね。

今給黎さん:ふくしまインドアパークには、子どもたちと遊んだり、親御さんも一緒に参加できるイベントを企画したりするパークリーダーが常駐しているんです。遊んでいる子どもたちを見守るだけでなく、話しかけたり、仲間の輪の中に誘ったりします。それが私たちの施設の大きな特徴であり、こだわりです。

中田:そうですよね。どんなにすごいおもちゃや遊具も、繰り返し使うと飽きてきますから。

今給黎さん:私たちもそう考えるからこそ、パークリーダーの存在に重きを置いているんですが、実は支援を募るときも、一番厳しく見られるのが人件費なんですよね・・・。

資金的な課題の一方で、新たな価値も

榊原:継続していくための運営費について伺おうと思っていたところでした。利用料だけでは賄えないですよね。

今給黎さん:賄えません。実はこういう活動の多くに共通しているのですが、立ち上げのときは、ある程度まとまった支援を得やすい。問題は走り出してからです。オープン前と直後は、私もありとあらゆる助成金を片っ端から当たり、仕事の時間の半分をそれに費やすほどでした。ありがたいことに、その頃はいただける確率も高かったのですが、月日の経過とともに、だんだん先細ってきます。それでもご理解いただける個人や企業からのご寄付や、ハタチ基金などの民間財団からのご支援により、なんとか維持できている、というのが現状です。

中田:確かに、なんでも維持していく方が難しいとは聞きます。そうあってはいけないのだとはわかっていても、残念ながら現場と、我々のように離れている人間とでは、切実さへの認識に温度差が出てしまいますから。

今給黎さん:資金集めには苦労がつきものといえばそうなのですが、確かに難しさは否めませんね。でも、悪い話ばかりではありません。続けてきたからこそ生まれた活動もあります。例えば、地域の方がいろんな形で自らこの活動に関わろうとしてくれたり、国内外から著名な方々が子どもたちのための協力を申し出てくれたり。

榊原:なるほど。子どもの集まる施設ができたことで、新たな協力の形が芽生えたんですね。

今給黎さん:そうなんです。著名な方々からのオファーは、必ずしもインドアパークで遊ぶような年齢の子どもさん向きではないこともあるので、近隣の小中学校などにそのお話を持って行って喜ばれたりと、もはやインドアパークの枠を出て広がっています。

榊原:そのように基点となって、地域を巻き込んでいけるのは素晴らしいです。

今給黎さん:特に南相馬は、ほんの数十分車を走らせれば、警戒区域や避難指示区域になる復興の最前線です。だから「自分たちがここで踏ん張って復興させなければ」という意識をとても強く感じます。郡山園のオープンを知った人たちによって、屋内公園を南相馬にもつくってほしいという署名が集められたんですよ。スタッフのことも家族の一員のように迎えてくれています。震災、原発事故と、非常事態の中で人口が流出していますが、自分たちで盛り上げていこうとする力のある地域は強いですよね。