募金券でつくれる未来

社員との対談

第47回 日本ホスピタル・クラウン協会×良品計画 病気と闘う子どもたちの心に寄り添う。 第47回 日本ホスピタル・クラウン協会×良品計画 病気と闘う子どもたちの心に寄り添う。

病院での「クラウン」という役割を果たす

樋口:実際にはどんなパフォーマンスを行うんですか。

種山さん:主に子どものベッドサイドまで訪問し、直接的に関わります。比較的元気な子どもや辛い治療をしている子、コミュニケーションのとれない子、障がいを持った子など、様々な子どもがいますが、五感をフルに働かせて目の前の子どもに合わせた関わり方を探します。マジックはよく使うアイテムですが、主役は子どもなので、必ず子どもの力を借りて成功させます。また、付き添いのご家族がいたら、必ず巻き込んでみんなが笑顔になるような遊びをします。

小塚:みんなに見える形でショーをやるだけではなく、ベッドの側で一人ひとりに対しても見せるんですか。

種山さん:はい。一緒に遊びます。マジックだったり、ジャグリングだったり、言葉遊びだったり。寝たきりの子を交えてクラウンと3人で会話を楽しむこともあります。遊び終えて帰る時に、心が通じたような不思議な感覚を憶えたこともあります。あと、帰り際に必ずバルーンをプレゼントして帰ります。余韻を残すというか、クラウンが帰ったあとでも楽しかった事を思い出してもらって、暖かい空気が持続するようにという願いを込めて。

樋口:風船で犬とかをつくったりするパフォーマンスですか。つくる過程も楽しいし、プレゼントにもなる。子どもは喜びますよね。

種山さん:喜んでくれますね。新潟のがんセンターに通っていたときに出会った子どもで、すごく印象に残っている男の子がいまして。5、6歳くらいで、感染に気を付けなければいけない子どもで、ベッドの周りがビニールで覆われていました。ピンクが大好きだったので、ピンクのバルーンで作った剣をプレゼントして帰ったんですね。すると、翌月に再訪した時に「この前もらった剣がこんななっちゃった」って、人差し指くらいに小さくしぼんだバルーンをとっておいてくれたんです。

小塚:空気が抜けちゃったのに、取っておいてくれたんですね・・・。

種山さん:そうなんです。しぼんだバルーンを見ながら次のクラウンの訪問を待っていてくれたのかと思うと、胸がいっぱいになってしまって。

樋口:病気のお子さんと接していると、そういう少しぐっと来てしまう場面もありますよね。

種山さん:ありますね。新しいピンクの剣を渡して、クラウンの赤鼻シールを貼ってあげた時の笑顔が、今でも忘れられません。重い病気の子どもと仲良くなると、子どもたちと会うのが辛くなって悩んだこともありましたが、私は子どもたちの家族ではないし、親戚や友達でもない。一緒に悲しむことや辛がることは、私たちクラウンの役割ではありません。

小塚:役割。笑顔を届けるということなのでしょうか。

種山さん:はい。見舞客や友達ではなく、あえて「クラウン」として訪れるのですから、目の前の子どもとどのようにして楽しい時間を過ごすかを考えることが、一番大切なんだと思います。それこそがホスピタル・クラウンの活動の目的であり、使命ではないかと思っています。

簡単ではない、病院側の受け入れ

樋口:病院側との関係というのはどうなんでしょう。ホスピタル・クラウン大歓迎!という状況なのでしょうか。

種山さん:既に訪問しているところとは良好な関係で、気持ちよく受け入れてくださっています。ただ、最初は病院によって温度差があります。病院も、受け入れることでスタッフに負担がかかるのではと思われることがあるようです。

小塚:なるほど。確かに、病院に無関係な外部の方が入っていくというのは、難しそうなイメージがあります。

種山さん:ただ私たちは、全員が衛生管理の知識をしっかりと持っていますし、活動前には周る順番などの打ち合わせも行います。最初は看護師さんや保育士さんが一緒について来てくださったりしますが、徐々に安心してお任せしてくれるようになります。

樋口:現場の方々も、患者さんの笑顔というのを大事に思ってるんでしょうけど、いざ外部の人を歓迎できるかと考えると、ハードルが高いのではないですか。

種山さん:単純に、外から人が入るということは菌を運ぶ人が増えるということでもあるので、衛生面でのリスクもあります。でも、私たちは事故をおこした事はありませんし、実際に入らせていただくと病院側も安心されて、必要性を認めてくださいます。

小塚:確かにホスピス治療などが一般的に知られたこともあって、患者の生活の質を上げていくということについては、少し前よりも視線が向いてきていますよね。

種山さん:最近では、病院さんから「是非来てください!」というお声がかかることもあるんです。病院にボランティアグループが関わることも増えましたし、「闘病中でも笑いが必要」といった考えも、少しずつではありますが広がってきている手ごたえは感じています。もちろん、活動を根付かせていくには、時間と根気が必要ですけれどね。

より身近に感じてもらうことが、活動の広がりに

樋口:患者である子どもたちはもちろん、ご家族の方にとってもすごく助けになる、もっともっと広がってほしい活動だと思います。私たちにはどういったことで協力ができるのでしょうか。

種山さん:ありがとうございます。もちろんクラウンとして活動に参加していただけたら助かりますが、実はうちのメンバーには普通の会社員が少ないんです。というのも活動自体が平日の午後が中心なんです。

小塚:土日は避けているんですね。それはどういった理由からなのですか。

種山さん:土日は少人数体制を取っている病院が多く、お見舞客も多く来ます。子どもたちが退屈していることが多い、平日の午後が活動に適しているのです。そのため看護師や介護士、自営業者、あるいは主婦など、休みが土日に集中しないような人が自然とメンバーの多くを占めています。

樋口:それだと確かに、普通の会社員ではなかなか参加が難しいですね。

種山さん:ただ、クラウンとしてご協力いただけなくとも、まずは知っていただくことがとてもありがたいご協力のひとつだと思います。なかなか周知が難しいんですよ。

小塚:確かに、病室という見えないところでの活動だから、一般の方に知られる機会が少ないかもしれませんね。

種山さん:そうなんです。やはり、今後より多くの病院にクラウンが訪れ、闘病生活を送る子どもたちに笑顔を届けていくには、資金や人材の部分も含めて、すごくたくさんのものを巻き込んで動いていく必要があります。そのためにはまず、多くの人にホスピタル・クラウンという存在を知っていただく必要があると考えているんです。

樋口:「遠くのどこかで誰かがやっている活動」ではなく、身近な活動として捉えてもらうことが大事ですよね。そうなると、色々と動きも変わってくるでしょうし。

種山さん:はい。私たちの活動を身近なものとして捉えていただけるというのは、病院で生活している子どもたちのことを、身近なものとして考えるのが当たり前になっているということですよね。そういった状態こそが、ホスピタル・クラウンという活動が真の意味で「根付く」ということですし、子どもたちのことを考えるきっかけを色々な人に与えていくこともまた、私たちの役割なのだと思っています。

対談を終えて

樋口:私も入院している友達や親の方と、深く接することが昔ありました。子どもはもちろん、周りの親族の方も、言葉では言い表せないくらいに大変ですよね。そういった方々にとって、大きな手助けになっている活動だと感じました。辛い状況においては、笑える時間や、あるいはただ普通に接してもらえることが、救いになるときがあります。人との関わりにおいて、どういう態度が相手の助けになるのか。これからは考えて動いていきたいです。

小塚:今日こういう機会をいただいて、活動内容を知ることができ、とても勉強になりました。同時に、病院内の見えないところでやっていらっしゃる活動なので、色々な人に周知していくことがとても難しいようにも感じました。私も広報に関わっているため、まずは活動を皆さんに知っていただかないと理解していただけないという難しさはよく理解ります。今後の活動が様々な方向に広がるきっかけづくりを含め、自分にできる協力のかたちを考えていきます。

※役職等は対談当時のものです

日本ホスピタル・クラウン協会は、2015年8月25日から2016年2月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
96人の方から合計61,990円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。

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