募金券でつくれる未来

社員との対談

第53回 ハナラボ×良品計画 女子学生を、未来の社会変革の担い手に。 第53回 ハナラボ×良品計画 女子学生を、未来の社会変革の担い手に。

ゼロから始め、成果につなげていく

川村:学生の皆さんがゼロベースで、色々な企業の方へのアプローチから企画実施まで進めていくというのは、すごく大変ですよね。何をどうしたらいいか、最初のうちはわからないと思いますし。

角さん:参加した学生に「ゼロから始まるとは聞いていたけど、本当に何もない状態から始まるとは思わなかった!」とも言われます(笑)。逆に言うと、授業やワークショップでは、与えられた枠に沿って考えていくものがほとんどなんですよね。ゼロから自分たちで企画立案をして、その企画を形にしていくための道筋を具体的に計画し、骨子が固まってきたら企業や自治体との交渉をして・・・本当に学生たちは大変だと思いますし、あらためて彼女たちの底力に驚かされることが多いです。

鈴木:プロジェクトのゴールや目標というのは、どう設定されているのですか。たとえば「ヨコハマハコいりムスメプロジェクト」だと、入館者数などになるのでしょうか。

角さん:「ヨコハマハコいりムスメプロジェクト」の場合は、地域とのコラボレーションを行うという点を目標にしました。入館者数を目標にしてしまうと、極端な話、大きな広告をひとつ出せばいいという話になってしまうんですね。そうではなく、長期的に地域との関係性を構築し、活性化していくという、数値では測れない、長い目で見たときにプラスになることをやっていくことが大切なんです。

川村:なるほど・・・。確かに、地域とのつながりができていくと、記念館そのものの長期的な価値向上につながっていきますね。

角さん:目標設定は、プロジェクトによってかなり試行錯誤しながら決めています。プロジェクトの目的に沿ったゴールを定めて動いていくことが、「社会課題の解決」と「女子学生の成長」という目的を果たすためには、とても重要です。

鈴木:NPOさんと学生さんのコラボレーションならでは、という部分を感じますね。本来仕事では、事業としてクリアしなければいけない目標が多く出てきますけれど、そういった制約を感じずに、学生ならではの斬新な発想を生かしたアイデアを実現し、長期的な成果を出していくことに専念できる。

角さん:ただ、具体的な数値ではなくとも、一定の成果を必ず出さなければいけないとは考えています。「チャレンジするだけでOK」「アイデアを発表するだけでOK」ではなく、やはり地域の方、関わった企業の方に納得してもらえる成果を出すことがとても大切です。関わった人への印象も大きく変わりますし、何より目標としていた成果に辿りつけたということは、大きな自信にもつながりますからね。

自分を知ることが、道筋を考えるきっかけに

鈴木:プロジェクトに参加された学生さんは、やはり見違えるほどに成長されるものなのですか。

角さん:やりきった学生は、別人のように変わります。最初アイデアを出した段階では、「こんなの自分でできるんだろうか」というようなことを思っている学生が多いんです。けれどもいざプロジェクトが動き出すと、多くの学生がその期待値を超えた力を、プロジェクト達成に向けて発揮します。「私はこんなことができるんだ」という驚きを体験することは、とても大きな成長につながります。

川村:自信に満ち溢れたような感じになるのでしょうか。

角さん:そういった面もありますし、逆に、自分ができないことがわかることで、色々な人による助力の大切さや、自分の欠けている面に気づいたりするんですね。視野がとても広がっていきます。

鈴木:プロジェクトの達成はかなり難しい面もあると思いますが、途中で脱落してしまう子などはいないのでしょうか。

角さん:もちろん、中にはいます。「ヨコハマハコいりムスメプロジェクト」で言うと、1~2年目は有無を言わさずアイデアを実行してもらいました。けれども、実行するのが義務になると、どうしても「やらされている」という感覚ができてしまうんですね。そこで、3年目は計画段階で判断をして、検討が不十分なチームについてはすぐに実行に移らず、再度計画を練り直してもらうことにしました。結果、アイデアを実現できない学生たちもいましたが、「自分たちがなぜできなかったのか」という疑問に自分たちの手で辿りつくのも、次につながるとても大切な体験だと考えています。

川村:やりきることで得られるものもあれば、失敗したことで得られるものもありますし・・・そこはとても難しいですね。

角さん:最近では参加している学生たちに、経済産業省が推進している「社会人基礎力」に沿った自己分析をしてもらったりもしています。自分のやる気や能力のレベルを正確に把握してもらうことが、能力を発揮するためにはとても大切です。自分自身を知るという体験ができれば、結果にかかわらず、学生自身のこれからの道筋には必ずつながっていきます。

女性が一歩を踏み出し、力を発揮できる社会へ

鈴木:「こういうことをやりたい」と宣言することは、すごく勇気が必要なことだと思います。そういう第一歩を踏み出してもらうための活動というのもされているのでしょうか。

角さん:おっしゃるとおり、自分の悩みをなんとかしたいという意思がある子たちは、周りが背中を押してあげるだけで大きく成長できるのですが、そこになかなか至ることができない女子学生が大多数だと思います。以前から大学を対象に、出前授業や社会人と話す機会を設ける活動などを行っていたのですが、最近ではこれを高校でも開催しています。色々な考え方を知る機会を、考え方が柔軟な若い世代に向けて、できるだけ広く普及していきたいですね。

川村:若い頃から色々な考え方を知ることができると、将来の選択肢もたくさん見えてきますよね。逆に、ある程度やりたいことがはっきりしてきた学生の方については、どのようなアプローチを行っているのでしょうか。

角さん:やりたいことを自らの力で実現していくための道筋を知るためのプログラムとして最近始めたのが「起業体験プログラム」です。今動いているプロジェクトとしては、カンボジアの読み書きができない女性たちがつくったシルクを通して、カンボジアの雇用を生み出すと同時に、若い世代が消費を見直す機会につながるサービスや商品を女子学生たちに考えてもらっています。まだ始まったばかりなのですが、今後の展開がとても楽しみです。

鈴木:起業の疑似体験。それも、高いレベルでの発想力や実行力が必要になる内容の、実践的なプログラムですね。

角さん:はい。今までのプログラムでは、アイデアを出すことや、実際に行動に移してみることを優先していました。しかし一方で、現実的にビジネスにするためには具体的にどうすればいいかということについては、あまり提示ができていなかったように感じたんです。起業体験プログラムを始めることで、そういう次のステップに進もうとしている女子学生たちに、より実践的な学びの場を提供していければ良いな、と。

川村:今後は悩み始めた人から、やりたいことがはっきりした女子学生まで、総合的にフォローアップしていくんですね。その場限りで終わるのではなく、長期的に良い影響を及ぼしていくのが、とても素晴らしいことだと感じます。

角さん:ありがとうございます。最終的には活動を通じて、会社で勤めたり、あるいは自分で何かを立ち上げたりする際に、自らの力で社会課題に向き合える学生たちを増やしていきたいんです。第一歩を踏み出して主体的に動いていくことの大切さを学生たちに向けて発信していき、女子学生を社会変革の担い手として育むことが、ひいては女性が力を発揮できる社会づくりへとつながっていくと信じています。

対談を終えて

川村:女子学生のためだけに留まらず、社会の課題解決を通じて地域や企業の方にも影響を与えていく活動をされていることをとても素晴らしく思いました。課題解決力や想像力は、学生も社会人も、継続して育んでいかなければいけない力です。私自身も仕事のうえで、そういった力をより一層育んでいきたいですし、何より人事として、色々なアプローチで学生さんの力を育むお手伝いができるよう、これからもっともっと頑張っていきたいと強く思いました。

鈴木:店舗の店長として、店で働くことを選んでくれた学生アルバイトさんには、お金を稼ぐだけではない職務経験や、自分で考えて行動することの大切さを学んでもらえるととても嬉しいと常日頃から思っています。そのため、角さんの考え方にとても共感できるところや、学ぶところを多く感じました。また、数字では測れない、長い目で見たときの成果を大切にするという視点も、大切に持ち続けなければいけないとあらためて気付き、初心に帰ることができました。貴重なお話を、ありがとうございました。

※役職等は対談当時のものです

ハナラボは、2016年2月24日から8月23日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
75人の方から合計21,640円の寄付を集めることができました。

実施中の募金券はこちら