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社員との対談

第55回 ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ×良品計画 差別、偏見、孤独のない社会へ。 第55回 ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ×良品計画 差別、偏見、孤独のない社会へ。

社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第55回は、人と人との「対話」の場の提供を通じて、信じ合い、助け合える社会の復興をめざす、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティさんにお話をお聞きしました。

多様性が求められる現代でこそ必要とされる「対話」

年齢、国籍、性別・・・グローバル化が進み、さまざまな違いを持った人が暮らしている日本では、人それぞれの違いや個性を尊重することが、近年、より一層求められています。一方で、孤独を感じる子どもの増大や、希薄な人間関係による孤立など、つらい思いをしている人が多く存在しており、大きな社会問題となっています。社会に「対話」という場を提供することにより、立場や偏見を越え、互いが持ちうる能力を活かし合う豊かな社会をめざすのがダイアローグ・ジャパン・ソサエティ。孤独のない社会に向けて必要とされる「対話」とは、いったいどんなものなのでしょうか。

プロフィール

ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ

ダイアローグ・ジャパン・ソサエティは、対話の場の普及・啓発を行う一般社団法人です。完全な暗闇の中を視覚障がい者の案内によって体感しさまざまな気づきを得る「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を中心に、視覚障がい者の豊かな感性を活かした商品開発や、親子を対象としたワークショップを行う「こども環境会議」など、多様な切り口により、信じ合い・助け合える社会の復興をめざしています。

ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ

  • 志村 季世恵

    ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ
    代表理事

    バースセラピストとして、人の誕生から臨終までを含めた延べ4万人を超えるカウンセリングを行う。妊婦や子育てに悩む母、心にトラブルを抱える人をメインにカウンセリング。その活動を通し『こども環境会議』を設立。1999年からはダイアログ・イン・ザ・ダーク理事となり、多様性への理解と世の中に対話の必要性を伝えている。また末期がんを患う方へのターミナルケアは独自の手法を以て本人や家族と関わり、その方法は多くの医療者から注目を浴びている。ワークショップ、ファシリテーションの日本での第一人者であるとともに、人を幸せにする商品企画開発を通販会社とタイアップし展開。4児の母。

  • 長坂 悦子

    良品計画
    総務人事担当 人事企画課
    課長代行

    1993年入社、自由が丘店に配属。1996年5月~1997年8月までは出産・育児の為休職。復職後も店舗勤務を継続し、2003年に無印良品船橋西武店長に着任。その後、無印良品有楽町の部門マネージャーを6年間経験し、人材育成に強い興味を持つ。2015年6月より現職。社員の研修立案や人事制度について猛勉強中。趣味は旅行と読書。

  • 白幡 元

    良品計画
    無印良品ラゾーナ川崎
    ブロック店長

    アルバイトとして1999年に無印良品ららぽーとTOKYO-BAYにて勤務を始める。その後契約社員期間を経て、九州店舗在籍時の2005年8月に本社員として入社。千葉、埼玉、北海道にて3店舗の店長を経験後、2013年2月より現職。「人との出会いを成長に繋げる」事をモットーに、80名超のスタッフと共に地域密着型店舗の理想形を目指す。趣味は休日子供達と遊ぶ事。

社会を取り巻く、多様性の欠如

ダイアログ・イン・ザ・ダーク
東京会場

長坂:ダイアローグ・ジャパン・ソサエティさんは「対話」に焦点をあてたご活動をされていらっしゃるとお聞きしました。

志村さん:はい。人と人との繋がりが希薄となり、互いの違いを認め合えないという土壌が形成されつつあるのは、今や社会的な問題です。ダイアローグ・ジャパン・ソサエティでは、対話の促進を通じて、より良いコミュニケーションのかたちを考えたり、多様性を受け入れて個人を尊重できる社会づくりに貢献していきたいと考えています。

白幡:時代の変化が与えている影響も大きいのでしょうか。

志村さん:ありますね。私としては、現代よりも少し昔の方が、日本では多様性というものが認められていたのではないかと思うんです。私が最初の子どもを産んだ32年前は、電車の中で授乳をしていても温かく迎えてもらえましたし、声をかけてくれる方もたくさんいました。ところが、それから十数年経って末の子どもを産んだころには、いつの間にか「電車の中で授乳なんてとんでもない」という空気が電車の中にはつくりあげられていました。

長坂:私も子どもが一人いますがその頃にはもう、電車の中で授乳なんて考えもしないという時代になっていましたね・・・。電車の中はあくまで「静かにさせておくところ」と言いますか。言われてみると、最近では窓を覗き込んで外を眺めているような子どもも、あまり見ない気がします。

志村さん:子どもも、障がい者も、お年寄りも、存在していないはずがないんです。ただ、私たちがよく出歩いているところではあまり見かけなくなってきています。身近なくらしの中から、多様性が少しずつなくなっているように感じています。

白幡:もっと若い方だと、公共の場で人の多様性を感じるような経験をしたことがない方も多いのかもしれませんね。

志村さん:障がい者の方は通っている学校や職場も、健常者の方と分かれていることが多いです。そのため、公共の場における出会いがなくなってしまうと、社会に大きな影響を及ぼします。健常者と障がい者が互いに理解しあえる貴重な出会いを失ってしまいますし、何より関係性が薄れ続けていくと、困った時にも助け合えないとてもさみしい社会ができてしまいます。だからこそ、私たちはさまざまな対話の場を提供していくことで、人それぞれの違いを受け入れられる社会づくりを目指しています。

他者の素直な気持ちを知る「対話」

長坂:良品計画でも「ハートフルプロジェクト」と称して、障がい者の方の雇用を進めています。私自身、最初に障がい者の方を身近に感じたのは、有楽町の店舗で障がい者の方の受け入れを担当したことがきっかけでした。同じ職場に来て初めて、仕事の仲間として色々なことを知るようになりました。

白幡:私も札幌の店舗に店長として在籍していた際に、面接時から立ち会って障がい者の方の雇用を進めてまいりました。一緒に働くことで、私だけではなく他のスタッフにとっても、「なんとなく」で伝えていた手順や作業について、もう一度あらためて言語化する機会になるなど、さまざまな改善の機会につながっています。今在籍している川崎の店舗でも4名ほどの「ハートフルスタッフ」が働いていますが、とても貴重な戦力であり、大事な仲間です。

志村さん:素晴らしいですね。私たちの生活圏に、障がい者の方と出会う機会がなくなりつつある中で、良品計画さんの店舗を訪れたときに、いきいきと働いているハートフルスタッフの方に出会えるというのは、すごく理想的だと思います。

長坂:ハートフルスタッフが増えてきたことで逆に、接し方で悩むところがあります。何をしてあげればいいのか、直接言っていい内容なのか、どこまで仕事を頼んでいいのか・・・と。あまり気を使いすぎてしまうと、対等ではない関係性になってしまいますし、とても難しく感じます。

志村さん:そういうときにこそ、対話が必要になってきます。通常のコミュニケーションでは互いに伝えたいことがあるなど、何かしらの目的を前提として始まることが多いです。ところが対話の場合は、それぞれが感じていることを話し合い、知ることが大切になってきます。対話は、話すこと自体が目的なんです。思っていることを率直に言い合う経験をすることで、相手のことをより深く理解できるようになります。