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社員との対談

第56回 環境リレーションズ研究所×良品計画 記念樹とともに、森と地域の元気を育てる 第56回 環境リレーションズ研究所×良品計画 記念樹とともに、森と地域の元気を育てる

社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第56回は、「人生の記念日に樹を植えよう」をスローガンに掲げる「Present Tree」プロジェクトを通じて、森林再生と地域振興に尽力している、環境リレーションズ研究所さんにお話をお聞きしました。

森との関わりが希薄になった日本、そして都市と地域

日本は国土の約7割が森林で占められている「森の国」です。しかし、自然災害、開拓後の放置、そして経済的・人材的な要因による手入れ不足や植栽放棄など様々な理由から、多くの森林において荒廃が進行しています。人々が自然との共生のもと、積極的に森を手入れし利用してきたからこそ、日本の森の生物多様性は守られてきたといわれます。森林と地域を元気にするプロジェクトを運営するNPOのお話から、環境のために「何とかしたい」「何かしたい」という気持ちの届け方を、一緒に考えてみましょう。

プロフィール

環境リレーションズ研究所

環境リレーションズ研究所は、生活者が環境活動に気軽に参加できる入口を提供することをミッションに掲げたNPO法人です。活動の中心となっている「Present Tree」は、森づくりを介して都市と地域の交流人口を増やすことで、森だけでなく地域もを元気にするプロジェクトです。2016年3月現在、累計で約12万5千本の植栽と、約379万人の方からの支援を実現しています。

環境リレーションズ研究所

  • 平沢 真実子

    環境リレーションズ研究所
    事務局長

    大学卒業後、銀行勤務を経てイタリア留学。帰国後欧州系ファッションブランド企業に入社、以降同業界数社で約20年間マーチャンダイジング部門に携わる。自身のライフスタイルを見直すことがきっかけで環境問題に興味をもち、2010年環境リレーションズ研究所に参画、2013年から現職。現在は、前職で培ったマーケティング手法を活かし、一般市民や企業の共感を呼び、より多くの人びとが無理なく環境活動に参加できるプログラムの企画・提案・運営に取り組んでいる。

  • 小林 厚

    良品計画
    生活雑貨部 ファニチャー担当 MD

    2002年入社。無印良品有楽町に配属後、都内の店舗にてスタッフとして勤務。2006年より店長として、関東の店舗を4店舗経験後、2012年にブロック店長となり、約9年間店長を経験。2016年2月より現職。現在、ファニチャー担当のMD(マーチャンダイザー)として、新商品の開発や、営業展開の計画などを行う。店舗経験を積んだ強みを生かして、お客様に支持される商品の開発に取り組んでいる。

  • 林 高平

    良品計画
    販売部/有楽町 インテリアアドバイザーマネージャー 法人担当

    2011年入社。オフィス・モデルルーム等の内装設計を行う。無印良品初のオフィス家具「日本の木でできた家具」の開発からプロモーションに携わる。商品やサービスづくりにおいて、現場の生の声を聞いた上で、利用者へ「商品のわけ」を伝えていくことの大切さを再認識する。このプロジェクトがきっかけで、国産材活用推進をライフワークとして行うと決心。家族で近所の映画館に行った後、温泉に行く事が休日の楽しみ。

人の手が入らないことで広がる、森林の荒廃

人工林の植栽放棄地

小林:森林の荒廃という言葉を耳にしたことはありますが、具体的な状況について詳しくは知りません。日本の森林には今、どのようなことが起きているのでしょうか。

平沢さん:森林には自然の力で生まれ育った「天然林」と、木材生産などの目的で植栽を行い人の手で保育管理をする「人工林」があります。現在、日本の森が荒廃していると言われているのは、この人工林に関する管理放棄の問題を指すことが多いと思います。人工林は、植栽した後間伐などの手入れをし、伐採後はその跡地に再植栽して育成し循環利用することを前提としているため、人が管理しないと荒廃してしまいます。そうすると、土砂災害を防ぐなど森林のもつ様々な公益的機能を果たすことができなくなります。

林:先日、木材の調達で宮崎に行くことがあり、その際に現場の方から森の荒廃についてはお聞きしていたのですが、天然林と人工林の問題では原因が違うということは初めて知りました。

平沢さん:森林が置かれている環境や地域の状況によっても荒廃の原因は異なります。天然林のうち、約6割がいわゆる「里山林」といわれています。これらは、戦後日本人の生活様式が急激に変化したことで利用されなくなり、手入れがされず荒廃しているところが多いのが現状です。そのため、里山由来の植物や生き物の多くが絶滅の危機にさらされ大きな問題となっています。いずれにしても、一度人が手を入れた森林は、その後もきちんと管理しないと荒れてしまうということです。

小林:荒廃が進行してしまう背景としては、林業者や自治体など、管理を行う方々の手が回りきっていないということがあるのでしょうか。

平沢さん:そうですね。人工林の場合は、伐採後にまた植栽を行うという循環利用のサイクルが回っていれば、健全な状態が続きます。しかし、経営的な問題などから、そういった保育管理ができない植栽放棄地が、各地で増えてきています。

林:そういった森林は、放っておけばすぐ元の自然に還っていくといった類のものではないということですよね・・・。

平沢さん:はい。日本は温暖な気候ですので、時を経れば自然の力で元々の森の姿に遷移していく可能性は高いのです。しかし、それには気が遠くなるほど長い時間がかかってしまいます。また、その土地の置かれている地理的気候的条件によっては、森として再生することが難しい場合もあります。人が樹を植えて保育管理を行うことで、森の再生速度を少し速め、生物多様性が豊かな自然環境を回復することができます。

一人ひとりが樹の里親になる「Present Tree」

林:ご活動の中心となっている「Present Tree」について教えてください。

平沢さん:「Present Tree」は「人生の記念日に樹を植えよう」というスローガンを掲げているプロジェクトです。出産や結婚などの人生の節目に、相手にモノを贈るのではなく「記念樹を植えてその里親になっていただく」というプレゼントを贈る、という取り組みです。環境のために「何かしてみたい」という気持ちを抱えた方々が、気軽に森林再生と地域振興に貢献するような企画の枠組みをつくりたいという想いから動き始めました。

小林:プレゼントを贈る感覚で気軽に環境活動に参加できる。素敵ですね。「Present Tree」を贈られた人が、自分が里親になった樹を直接見に行くことはできるのでしょうか。

平沢さん:はい、植えた苗木にシリアルナンバーを付けて管理しているので、里親になっていただいた樹を1本1本識別することができます。私有林でプロジェクトが行われていることもありますし、一般の方にはアクセスしづらい植栽地もありますので、そういった場合は事前に私どもに連絡をしていただく必要はありますが、現地で苗木の成長を直接ご確認いただけます。

林:私も小学校のころにもらった記念樹を実家の敷地に植えています。実家に帰るとその樹が今も成長を続けていて、見るたびに懐かしいような、嬉しい気持ちになります。樹が育っている姿を現地で実際に見たら、絶対嬉しいですよね。

平沢さん:成長を見守るというのは、記念樹の醍醐味ですよね。「Present Tree」ではプロジェクトを開始するにあたって、その土地の持ち主と地元行政、さらに地元の森林整備機関、そして私どもの4者で10年間の森林整備協定を締結しています。これにより、苗木を植えた後も下草刈りや獣害対策など10年間、現地のプロの施業者による保育管理を担保しています。

小林:私の実家では、孫が生まれた時など、節目の時に記念として両親が庭に樹を植えています。育っていく樹を見ていると、時間の流れや成長をあらためて体感することができて、その度に代えがたい感動を得ています。

平沢さん:樹に記念と成長を重ねあわせられるのって、とても素敵ですよね。「Present Tree」では、不特定多数の方々の様々な想いが詰まった森を、一緒につくっていくことができます。多くの方々の想いの輪に参加することができるというのも、「Present Tree」の大きな魅力のひとつです。