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社員との対談

第59回 NPO birth×良品計画 人々のライフスタイルを変化させ、身近な自然を次世代に。 第59回 NPO birth×良品計画 人々のライフスタイルを変化させ、身近な自然を次世代に。

社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通じてお届けします。第59回は「緑豊かで人と自然が共生できる社会に」をビジョンに、環境教育プログラムや自然と共生するためのイベントの企画運営、人材育成など幅広い活動を行うNPO birthさんにお話を伺いました。

人と自然と社会の架け橋に!暮らしの中に自然を取り戻す

地球温暖化防止のため世界共通の課題になっているCO2削減。その対策のひとつとして、「緑化」が企業・家庭においても幅広く普及するようになりました。そのなかでもNPO birthは、私たちの身近にある地域の緑、「地みどり」に着目。公園をはじめとした、暮らしの中に当たり前にある緑を「守り育てる」活動を「人」と「社会」に焦点を当てて行うことで、環境保全や地域貢献につなげています。身近な緑を守ることは、人に、社会に、どのような影響と恩恵を授けてくれるのでしょうか。

プロフィール

NPO birth

NPO birthは、人と自然が共生できる社会の実現を目指して、身近な自然をテーマに活動するNPO法人です。環境教育や自然環境調査・分析、地域と連携したイベントの企画運営のほか、市民団体のサポートや企業のCSR支援などの中間支援活動も推進。2006年からは都市公園の指定管理事業も展開するなど、活動の場をますます広げています。

NPO birth

  • 矢島 万理

    NPO birth
    協働事業部長

    中学生の頃から環境問題に興味を持ち、大学時代は市民による里山保全について研究。2006年よりNPO birthのスタッフとして狭山丘陵の都立公園専属コーディネーターを務め、里山保全のボランティア活動、イベントの企画運営、協働型パークマネジメントの構築を担う。2011年から武蔵野地域の都立公園、2016年からは多摩部地域の都立公園の管理運営に携わり、地域の皆さんとともに、身近な緑と関わるきっかけとなるイベントや、ボランティアプログラムの企画運営を行っている。

  • 是枝 敏成

    良品計画
    人事総務部 採用・育成課

    2001年入社。無印良品日吉東急に配属後、2003年にウイングベイ小樽で店長に着任。北は北海道、南は九州まで、新店オープン・改装を含め 11店舗を経験。2014年無印良品自由が丘ブロック店長に就任。2016年9月より現職。新入社員研修や社内登用社員研修、店長研修など、各種研修の立案実行に携わる。店舗での経験を活かし、日々人材育成に奮闘中。

  • 金子 舞菜

    良品計画
    生活雑貨部 グリーン&フラワー担当

    2005年より、当時良品計画の花事業として運営していた花良品で店舗スタッフとして勤務。店長職を約3年間経験し、2011年12月より現職。グリーン&フラワーのMD開発担当として、商品の企画・開発に携わる。趣味は山登り。野草など身近な植物について勉強中。

身近な自然を守る。キーワードは「人」と「社会」

公園でのアウトドアピクニック講座

是枝:NPO birthさんは、身近な自然・まちなかの緑"地みどり"を守る活動を行われているとお聞きしましたが、ご活動のきっかけを教えていただけますでしょうか。

矢島さん:NPO birthは、元々はボランティアで自然保護活動を行っていた、自然と生き物好きな3人のメンバーで設立しました。自然保護というと、世界的な森林減少をくいとめる、といったグローバルなイメージを抱きがちですが、自分たちが暮らしている身近なまちの緑も守る必要があるのではないか、と。たとえば、緑がたくさんある場所に行くとなんとなく癒されたり、リラックスできたりしますよね。そこで、暮らしの中にも緑を取り入れたら、さらに豊かな生活を送ることができるのではないかと考えました。その考えを広く提案したい、身近な自然がこれ以上なくなって欲しくない、というのが活動のきっかけです。

金子:確かに現代社会は、時間と手間をかけて「緑に触れに行く」という感覚があります。特に都市部だと、緑は探さなければない、というイメージですよね。オフィス街の公園に、お昼休みにサラリーマンやOLさんが集うのも納得できる気がします。皆さん、体が自然を求めているのですね。

矢島さん:特に、今では子どもが自然の中で遊ぶことってなかなか難しいですよね。昔は当たり前に身近に自然があって、川遊びや木登りなどの遊びが普通だったのですが、自然が身近でなくなった現代はそれが失われつつあります。だから現代の子どもは、自然との付き合い方が分からない。生き物が怖い、土が汚いもの、と思い込んだり、緑に触れるよりも家でゲームすることに楽しみを感じてしまう。自然は友達なんだよということを伝えるためにも、私たちは「自然体験プログラム」などの、自然と触れ合えるきっかけを提供する活動も行っています。

是枝:コミュニティガーデンづくりや自然あそび教室など、市民参加型の活動である「自然体験プログラム」は、子どもも含めたさまざまな世代が自然と触れ合える活動ですよね。他にNPO birthさんはどのようなご活動をされているのでしょうか。

矢島さん:私たちの活動には3本の柱があります。まず1つめは、先ほど申し上げた「自然体験プログラム」を含む、『人と自然をつなぐ』活動。この活動では、自然体験プログラムのほか、公園緑地を巡回して安全管理・自然環境や危険個所の点検・自然解説などを行う「レンジャー」、自然環境を調査・保全する「自然環境マネジメント」などを行っています。2つめに、『人と人をつなぐ』活動です。イベントの企画・運営や、ボランティアコーディネートなどを通じて、人と人の出会いと交流を促進します。3つめが、『人と社会をつなぐ』活動。これは、人材育成やコンサルティングを行うことで自然や緑への理解を促し、一人ひとりの想いを社会的な力に変えるサポートをしています。

金子:NPO birthさんは、自然だけではなく「人」と「社会」に焦点を当てて活動されている点が特徴的だと思います。特にボランティアというとなんとなく敷居が高くて1人では参加を尻込みしがちなので、出会いやコミュニケーションの場を提供してくれるのはありがたいですよね。ポンと背中を押してくれるというか。でも、なぜ「人」と「社会」に着目したのでしょうか。

矢島さん:自然を壊すのも、守るのも、人の行動や意識次第だと考えたためです。一人ひとりが自然を理解してそれを意識した小さなアクションを起こすようになると、社会も変わる。まずは人にアプローチをすることが大切です。たとえば、小さなお子さんが自然体験をして、それをご家庭でお父さんに伝えますよね、そしてお父さんがその体験を職場で共有すれば、職場にも広まることになります。その結果、草の根的ではありますが、着実に社会を変えることにもつながると考えています。NPO birthのミッションは、自然について考えるきっかけを提供することで、人と社会の自然に対する意識、ライフスタイルに変革を促すこと。それによって、人と自然のより良い関係をつくることです。人と社会が変われば、おのずと自然は守られるはずだと考えています。

Face to Face。信頼関係を築くことが、活動のベースに

金子:人と社会を変えるといっても、大人になってからライフスタイルを変えることってなかなか難しいことですよね・・・。人や社会の意識やライフスタイルを変革する過程には大変なご苦労や努力もあったかと察します。

矢島さん:私たちの活動に参加していただければ、皆さんの意識やライフスタイルを変革できる、という確信はありました。狭山丘陵の都立公園では、私たちが管理運営に携わる前、ボランティアは自然が好きな方や年齢層の高い方がほとんど。若い世代にいかに来てもらうかがいつも悩みの種でした。そこで、新たなイベントを企画したり、学ぶ機会を段階的に設けたことで、当初60名ほどだったボランティアも今では500名ほどになりました。世代も多様化し、親子や働き盛りの30、40代も増え、年間を通して約1万人が活動しています。

是枝:まさに人へのアプローチですね。ボランティアといっても世代はバラバラですし、どの世代にも理解を得ることは並大抵の努力では不可能だと思います。それにも関わらず、NPO birthさんが活動を拡大し続けている背景というか、秘策は何だったのでしょうか。

矢島さん:たとえば、一口にボランティアといっても、一人ひとりが様々な経験や考え方をお持ちです。お互いに「自然を守ろう」というベクトルは共通していてもそのアプローチ法はさまざま。お互いの価値観をすり合わせて信頼関係を築くために、必ず"Face to Face"で話し合うようにしています。今はメールや電話など顔の見えないツールで用件を済ますことができる時代なので、ある意味アナログな手段かもしれません。それでもお互いに顔を合わせて話し合うことは、表情や感情が表に出るため、微妙なニュアンスも感じ取ることができます。それが結果的にお互いの意思疎通や理解につながり、活動を拡大できているのだと思います。時には口論になったこともありますが、それでもお互いが納得できるまで話し合います。

金子:スマートフォンのアプリなどを使えば簡単に会話が成り立ってしまう時代に、あえて時間と手間を惜しまず直接話し合い、人や自然との良い関係を構築するために時間と手間をかける。そういう努力は報われるということですね。人と人、人と自然との関係が希薄になりつつある今、改めて考えさせられました。先ほど、「ボランティアが年間1万人」というお話を伺いましたが、ボランティアやイベントに参加される方々が活動を継続できるために、どのような取り組みを行なっているのでしょうか。

矢島さん:活動を「強制しない」ことかもしれません。活動が「義務」になって、苦痛にならないよう、あくまでも自由意志で参加していただいています。また、老若男女さまざまな方が参加されるので、日常で生活しているだけでは接触することの少ない方々と交流を持つことができる、というのも継続していただける要因のひとつだと思います。やはり、自然を愛する気持ちは性別や世代を超えて共通するものですから、ともに活動することで親交が深まって、「次回の活動で同じ想いを持った仲間にまた会える」と思っていただけることも参加のモチベーションにつながっていると思います。また、若い世代も興味を持ちやすく、気軽に参加できる体験プログラムなども用意しました。自然や緑について考えるきっかけとなる間口を広げたことが、活動の広がり・継続の一助となっていると考えています。