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社員との対談

第59回 NPO birth×良品計画 人々のライフスタイルを変化させ、身近な自然を次世代に。 第59回 NPO birth×良品計画 人々のライフスタイルを変化させ、身近な自然を次世代に。

誰でもWelcome!懐の深さを感じさせてくれる身近な緑「公園」

是枝:先ほど、NPO birthさんの活動に対する理解促進のアクションの例のひとつとして公園の指定管理事業について触れていらっしゃいましたが、この事業はどのような経緯で展開するに至ったのでしょうか?私自身、公園をよく利用しますが、恥ずかしながらその環境がNPO birthさんたちのような存在に支えられているとは知りませんでした。

矢島さん:なぜ公園に着目したかというと、身近にあるまちの中の緑をフィールドに活動することで、各地の身近なみどりに目を向けてもらいたいという想いがあったからです。そこで平成18年度から指定管理者制度に基づく公園緑地の指定管理者として、都立公園の管理運営業務に携わるようになりました。具体的には、レンジャー、自然環境保全、都民協働の推進などの活動を地域の方々や団体さんと協働で、役割を分担して行っています。

金子:公園で過ごす時間は居心地が良く、さまざまな世代の方に利用されていますよね。そして何より平和で自由なイメージがあります。その空間を皆さん思い思いに満喫しているというか。豊かな時間を過ごしているなあ、というイメージです。

矢島さん:公園の良さはそこにあると思うのです。誰でもWelcomeで、人も用途も選ばない。懐が深いのです。たとえば自然について理解を深めようと思っても、ワークショップだと敷居が高いようなイメージがなんとなくありますよね。そのステージが公園だと、「開かれた場所」だから一歩を踏み出しやすい。また、マンションなどの集合住宅で暮らしていても、隣に住んでいる方の顔も知らない、なども聞いたりします。だけど、公園に行けば地域に密着した方々がいる。なんとなく安心できる。そんな集いたくなる公園づくりをお手伝いすることで、人々の安全・安心はもちろん、人間関係が希薄になりがちなこの現代において、緑、公園をキーワードに人と人、人と自然とのつながりを構築し、持続可能な社会の形成に貢献したいと思っています。

是枝:だけど都心の緑や公園は、減ってきているのが実情ではないでしょうか?冒頭に戻りますけれど、そうした、身近に緑がない場合はどうしたら良いのでしょうか。

矢島さん:身近な緑や自然は、見落としているだけで実はすぐそばにあったりします。近隣の方のガーデニングや、駅の植栽プランターなどもそうですね。まずは身近な自然に目を向けてみること。また、部屋に鉢植えをおいてみるなど、暮らしに緑を取り入れることもおすすめです。

金子:確かにそうですね!身近に自然がないなら、自分で身近な自然をつくる。それも解決策のひとつになりますね。

矢島さん:自然を暮らしの中に取り組むきっかけは何でも良いと思います。前述したように、ガーデニングなどで自ら自然を取り入れるのも良いし、1歩踏み出して、私たちが行っているような活動に参加するのもひとつの手段ですね。

まずは大人にこそ意識の変革を

是枝:先ほど、現代の子どもは自然を知らない、その背景には自然が失われている、というお話を伺いましたが、それ以外の要因があるとしたら何が考えられるでしょうか?

矢島さん:親の価値観もあるのだと思います。親自身の自然に対する理解が不十分だから、子どもにも泥は汚いよ、虫は怖いよ、と言ってしまい、子どももそう思い込んでしまうのですよね。

金子:私も以前「苔玉」をつくる無印良品のワークショップに参加した際、そこにはお子さんも多数参加していたのですけど、中には土を嫌がるお子さんがいました。それでも、他のお子さんが楽しそうに土をこねているのを見て、そのお子さんも恐る恐る土に触れだして、最後にはとても楽しそうに土をこねていたんです。「モノより体験」を目の当たりにした瞬間でした。

矢島さん:そう、まずは体験してみないと分からないですよね。知らないから怖い。でも、知ってみたらおもしろい。そのきっかけづくりのひとつとしてNPO birthでは、親も子どもと一緒になって楽しめる、自然の中でのマルシェなどのイベントを実施しています。はらっぱでのライブやクラフトなどのワークショップに加え、レンジャーのネイチャーガイドも実施することで、自然にあまり興味のなかった人にも気軽に参加してもらえる入口を用意しています。まずは、大人である親の自然に対する意識改革が必要です。自然は怖くない、悪者ではない。親が理解していないと、子どもに伝えることもできませんよね。

是枝:確かに、自然の中でのマルシェのようなイベントなら、親も子どもも楽しみながら自然についての理解を深めることができますね。それでもまず参加しなければその理解を深めることも不可能ですよね。親の世代を取り込む施策としてどんなことをしているのでしょうか。

矢島さん:若い世代の親を取り込むという目的も兼ねて、フリーペーパーやイベントの告知チラシ、フライヤーなどはオシャレでナチュラルなデザインを採用しています。まず親の世代が手にとりたくなるように、ビジュアルでの訴求は重要だと考えています。最初は「ちょっとこのチラシ、オシャレかも。参加してみようかな」で構わないんです。それを親の世代から子どもに引き継ぎ、さらにまたその子どもに引き継いで行くきっかけのひとつになればと思っています。

是枝:NPO birthさんの"地みどり"のビジョンマップもそうですよね。ひとつの「まち」の中に、マンションでガーデニングしている人もいれば、緑あふれる公園でイキイキと遊ぶ子どもたちもいて、畑で農作業をしている方もいて。自然との付き合い方のさまざまな事例がひとつの絵の中にギュッとつまっているように思いました。

矢島さん:NPO birthの法人名の由来は、「birth=いのちを生み出していく」こと。緑を守ることで、ゆくゆくは現代のライフスタイルに適合しながらも自然いっぱいの街を生み出したい、という意味で、このビジョンマップを作成しました。

金子:実際にこのビジョンマップのような街を生み出せたら素敵ですね。そのためには、まずは自分ができることから。大きなアクションでなくてもいい、小さなアクションをコツコツとやっていくことが重要なんだなと思います。

矢島さん:地球温暖化や大気汚染、現代を生きる私たちにはさまざまな解決しなければいけない課題があります。けれどもいきなりそんなグローバルな課題に着手するのは難しいですよね。身近な緑に目を向ける、その積み重ねで自然を次代に継承する、そんな楽しみながらの活動からまず一歩を踏み出してはいかがでしょうか。私達も身近な自然を暮らしに取り入れるための提案を、今後もどんどん発信していきたいと思います。

対談を終えて

是枝:"Face to Face"という言葉が印象的でした。ネットやメール、SNSなど、情報を流すのも、受け取るのも安易なこの時代だからこそ、人同士が顔と顔とを突き合わせてのコミュニケーションが大事なのだと感じました。自然や緑を継承するためには、まず理解してくれる仲間を増やすことなのですね。また、特に公園は地域のコミュニティーを広げることができる重要な役割を担うこと、それを整備する方々がいて成り立っていることに気付かされました。公園という地域密着型のフィールドで、地域協働でコミュニティーを広げることは大きな力につながると思います。失われつつある身近な自然を守るために、良品計画としてもできることをサポートしていけたらいいなと考えています。貴重なお話をありがとうございました。

金子:都市部に住んでいると自然と触れ合う機会が少なく、自然との付き合い方がよく分からない、ということにはとても共感しました。そんな中、たとえば自然と触れ合うための体験型のワークショップの域に留まらず、そこから得る人とのつながり、意識改革などの「次のステップ」も考慮しているNPO birthさんの活動を知ることは、改めて勉強になりました。暮らしの中にあるグリーンがもたらす充実感を得ながら豊かな生活を送るお手伝いができるように、「グリーンのある暮らし」をさらに提案していきたいと思いました。本日は本当にありがとうございました。

※役職等は対談当時のものです

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