募金券でつくれる未来
社員との対談
第60回 Arrow Arrow×良品計画 仕事も子育ても諦めない、自分の未来を選択できる社会へ。
社会貢献活動を行う団体の活動を、良品計画の社員との対談を通じてお届けします。第60回は「子育てや介護などの理由に左右されない選択肢あふれる社会の創造」をビジョンに、企業と従業員に対して産育休取得に向けたサポートなどを提供するArrow Arrowさんにお話を伺いました。
- 企業と従業員の架け橋に!自分が望む道を進むことができる社会へ
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ダイバーシティー、女性の社会進出・活躍促進など、社会における女性への注目度はますます高まっています。しかし現実では、結婚や育児を機にそれまで培ってきたキャリアを諦めざるを得ずに、退職する女性はまだまだ多くいらっしゃいます。また、企業にとっても、結婚や子育てを機に貴重な"人財"を失ってしまうことは大きな問題です。その溝を埋めるべく、企業と従業員の架け橋になっているNPO団体が、Arrow Arrowです。次世代までも視野に入れて活動に取り組むArrow Arrowとこれからの日本の働き方について考えてみましょう。
プロフィール
Arrow Arrow
Arrow Arrowは、「子育てや介護等の理由に左右されず、仕事が当たり前に続けられる社会の創造」をビジョンに、企業に対して「産育休取得前から復帰前後までの一括サポート」を実施するNPO法人です。企業と従業員の「困った!」に寄り添い、「出産=退職」という日本企業の現状に変革を促進。研修や講演などを通じて、一人ひとりが自分の進みたい道を進めるような社会に導くサポートを行っています。
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堀江 由香里
Arrow Arrow
代表理事特定非営利活動法人プラスエスに所属し、就職支援セミナーやフリーペーパーの発行を実施。人事部の立ち上げ、新卒採用プログラム、研修プログラム立案、社内活性化プロジェクト立案などに携わった後に、人材紹介グループに異動し、キャリアコンサルタントに従事。特定非営利団体法人フローレンスにてワークライフバランスバランスコンサルティング事業部長、広報事業部長、病児保育事業部長として活動。チームマネジメントだけではなく、中小企業に向けてのワークライフバランスコンサルティングや病児保育の法人契約担当として企業窓口も担当する。
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山田 達郎
良品計画
食品部 ローカルMD担当2006年入社。無印良品岡山ロッツに配属後、2008年に無印良品ゆめタウン佐賀で初の店長に就任。新店舗の立ち上げやブロック店長を経て、世界旗艦店の無印良品有楽町で部門マネージャーとして勤務後、2014年に食品部に配属。調味・飲料のDB担当を半年間経験した後に現職。バウムや伝統菓子などお菓子の開発業務に携わる。兵庫県姫路市出身。昨年の11月に長男が誕生。
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河合 晴奈
良品計画
衣服・雑貨部 海外商品担当2009年入社。無印良品天神ソラリアに配属後、九州および山陽地方の店舗で社員、店長として勤務し、2015年2月より現職。現在の業務内容は、海外販社における発注支援、在庫コントロール支援、品質に関する問い合わせ対応など、多岐に渡る。英語力と貿易関連の知識を増やすべく、日々奮闘中。趣味は休日に夫と二人で美味しいローカルフードを求めて海外を旅すること。
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ないならつくる!?企業と社員の理想的な関係
山田:Arrow Arrowさんの活動は、社員の支援だけではなく企業サイドもサポートしている点がユニークだと感じました。双方向に訴えかける支援というのは珍しいと思いますが、活動を始められたきっかけはどういったものだったのでしょうか。
堀江さん:Arrow Arrowを設立したきっかけは、就職活動をしていた大学時代に、友人がせっかく内定した企業を辞退したことです。その理由が、「内定をもらったけど、結婚した後、仕事を続けられなさそうだから、諦める」というもの。当時の私は、「なぜ分からない未来に今からこだわるのか」と憤りを覚え、「いつか男女関係なく働くことができる社会をつくりたい」と思うようになりました。女性の社会進出がクローズアップされる現代でも、妊娠・出産を機に仕事を辞めてしまう女性が、まだ6割も存在しています。この数字は40年前とあまり変わっていません。また、企業にとってもキャリアのある社員を失うことは大きな損失になりかねません。そこで、社員の支援だけではなく、企業と社員が歩み寄ることが、働き方や社会を変えるもっとも現実的・効率的な方法だと考えたのです。企業が抱える「働いて欲しいけど、制度がないから妊娠・出産した社員をどのように扱っていいのか分からない」、社員が抱える「働きたいのに、子育てがあるから働けない」、双方の手助けができれば、どちらの立場もwin-winだという結論に達しました。そのようなサポートをする組織がないのなら、つくってしまえ!というのが大きな背景でしたね。
河合:良品計画はそうした環境に比較的恵まれていて、仕事と子育てを両立している社員も多く、周囲の理解も深いような気がします。私も、子どもができても職場復帰したいと考えていますが、まだまだそれが難しい企業が多いのかもしれませんね。特に日本においては、子育てをする立場なら、仕事を辞めて家庭を守るもの、といった風潮が、一部では未だに根強く残っているように感じます。
堀江さん:良品計画さんのような大きな企業はそうした制度も確立されていますし、だからこそ理解もあるのだと思います。ただし中小企業の場合はまだそこまで制度が整っていないことが多く、理解も浅いのが現状ですね。特に年配の方においては、自分の世代がそうだったからということもあると思いますが、たとえ社員がそれを望んでいなくても「出産=退職」と結びつけがちです。
山田:私の妻は産休を経て4月から職場復帰しているのですが、やはり職場のサポートが大きかったように思います。産休前に、「これまでのポストを空けて待っている」と言っていただいたと聞きました。たとえ職場復帰が可能だとしても、それまでのキャリアをまったく生かせない部署だとしたら居心地が悪いですよね。妻の場合は、制度をつくることのできる立場にいたので、産休前に自分をロールモデルにした、仕事と子育てを両立できる制度をつくったようです。まさに「ないならつくる」ですね。
堀江さん:素敵なパートナーですね!確かに昔と比べて、妊娠・出産を経験した社員が職場復帰することができる企業は確かに増えてきてはいます。ただ中小企業の場合は、そのロールモデルが少ないのですね。だから、働きながら子育てをする社員の扱いが分からない。社員としても、ブランクはもちろん、職場復帰後の社内コミュニケーションの取り方に不安がありますし、キャリアアップできるのかどうかも分からないですよね。「働いてほしいけど・・・」「働きたいけど・・・」企業と社員のそのジレンマを埋めるためにも、双方の架け橋となり、当たり前に仕事と子育てを両立できる社会の実現を目指した取り組みを進めています。
結婚、子育てを仕事を諦める理由にしないために
河合:具体的に、企業や、産休・育休を取られる社員の方々に対する支援としては、どのようなプログラムを実施しているのでしょうか。
堀江さん:企業向けの「産休!Thank you!プログラム」「社員!Shine!」のほか、個人向けの「ママインターン」などのプログラムを整備しています。「産休!Thank you!プログラム」は、妊娠が発覚した時から、産休・育休から復帰までをトータルでサポートするプログラムです。仕事を続けたい!という社員と、働き続けて欲しいと考える企業の双方の間に立ち、コミュニケーションの図り方や、産育休復帰後に企業が取得できる助成金のアドバイスまでトータルでサポートします。「社員!Shine!」では、女性社員向けにキャリアデザインを形成するための研修を行うとともに、2016年からは、マネジメント層に対する研修プログラムも開始しました。次に個人向けのサポートとして「ママインターン」。これは、妊娠・出産・子育てのために一度仕事から離れたけれど社会復帰を目指す方々に、インターンという職場経験を通して一歩踏み出してもらうためのプロジェクトです。いきなりフルで社会復帰では、心細いですよね。
河合:これほど充実しているのなら、企業と社員の不安も払拭できますね。先ほど、中小企業にはそうした体制がまだまだ不十分、とお伺いしました。そんな中、そこで働く社員にとってもArrow Arrowさんのプログラムの存在は心強いと思います。仕事をしながら子育てをする、そんな未来をシミュレーションできるというか。
堀江さん:世の中の企業の9割は中小企業が占めていて、「出産=退職」という現象が起きてしまうのは中小企業に勤務する社員に顕著なのです。そこで、そうした企業に「出産≠退職」という意識変革を起こし、それによって社員の働き方が変われば、日本の女性の働き方も変わるのでは、と考えています。
山田:それでも中には、「小さい頃に仕事で一緒にいてあげられなくて子どもがかわいそう・・・」と思うパパ・ママも多いと思います。実際に、それで仕事を諦めるケースは多いのではないでしょうか。実際に私の妻も、職場復帰のタイミングに関して若干の葛藤があったと言います。「子どもが初めて立つ」などの、人生で一度きりのタイミングに、保育園に預けていて立ち会うことができないのは寂しい、と。
堀江さん:親としては、子育てより仕事を優先させるのではないかと心が揺れてしまうことは当たり前の感情ですよね。小さな子どもと一緒にいたいから、今は仕事より子育てを優先させるというのも、もちろん良いと思います。私たちが提案しているのは、自分が進みたい道を進むことができる社会です。さまざまな選択肢を自由に選べるようにしたいのです。ひとつの考え方として、子どもがまだ小さいうちに、保育園などの家庭以外の世界を経験させることを、成長の場と考えたら、その葛藤も軽減されるかもしれません。本当は仕事を続けたいけれど、子育てを理由に諦める。それだと、子育てをするにもストレスが溜まってしまいがちですよね。
山田:子育てを優先させても、仕事を諦めなくても、どちらでも良いということですね。
堀江さん:はい。気持ちの問題だけでなく、子どもを預ける保育園を探す"保活"が社会現象にもなっていますが、認可保育園でなくても、仕事の合間にお子さんを預けられる施設は増えてきていますので、そういった施設を検討してみることも有効だと思います。
河合:いざ、仕事を諦めない選択をしたとき、今は代替手段があるのですね。勉強になります。
堀江さん:もちろん社員の職場復帰には企業の理解も必要ですので、そこに対しても訴えかけることが私たちのミッションのひとつだと考えています。仕事をしながら子育てをしたい、と考える社員の受け入れ体制について、特に前例の少ない中小企業さんは悩んでいらっしゃいます。そこで、その体制を整えるためにも、「制度がないならつくる」サポートに努めています。
山田:先ほど保活のお話になりましたが、仕事と子育てを両立させることは、住む地域によっても明暗が分かれますよね。幸い私の場合は、希望していた保育園に入れることができましたが・・・。
堀江さん:仕事をしながら子育てをしたいと思うのでしたら、少し強引ですが、そうした環境に移動してしまうのもひとつの手ですよね。たとえば、妊娠が発覚したら、妊娠6カ月以内、まだ体が動けるうちに仕事をしながら子育てをしやすい環境に引っ越してしまう。お腹が大きくなってからの引っ越しでは、産院が遠くなって検診などの通院が不便になってしまいます。ある意味、環境を「ないならつくる」ですね。経済状況や様々な事情もあると思いますが、たとえそれで職場までの通勤時間が長くなっても、自分が進みたい道、子育てがしやすい環境を両立することができるとしたら、仕事や子育てに対するストレスも軽減されると思います。